Jun 16, 2023 news

「愛の多様性や複雑さを描いた」マリヤム・トゥザニ監督が語る作品に込めたテーマ 映画『青いカフタンの仕立て屋』

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前作同様に共同脚本を手がけた夫ナビール・アユーシュについては、「執筆中は旅のようで、彼の視点を得られたのも幸運でした。人生を共有しているだけでなく、情熱も共有している存在です。彼はいつも鋭く知的な眼差しで脚本にコメントしてくれるので、私は自分自身とより深く向き合い、キャラクターやストーリーに厚みを持たせることができたのです。」と、共に同じ情熱を持っているもの同士だからこその存在と語る。

このような映画をモロッコで制作することに勇気が必要だったのでは?という問いには「表現しなくてはいけないこと、語るべきことがあるなら、勇気は関係ありません。欲望や愛は、タブーやスキャンダルの対象ではないのです。他の国々と同じように、モロッコも同性愛を禁ずる法律を廃止するために立ち上がらなくては。 モロッコでの劇場公開(2023/6/7公開)は必ずしも確約されていたわけではなかったのでとても嬉しく思います。本作はアカデミー賞のモロッコ代表であり、国の助成金を得て完成することができました。マラケシュ映画祭では審査員賞を受賞し、観客もポジティブな反応でした。そのこと自体が、アートを通して、もしかして通常は語られなかったタブーとされていることについて、もっと話し合いたいんだという強い欲求があるのだと感じました。アート、シネマを通して、こういった扉を開き、それがこれからの先の一歩に繋がっていくのだと思っています。」と答えた。

さらに、知的で繊細な本作は、特定の性的指向が非難される社会において、人々の見方に影響を与えることができるのでは?という質問に対しては 「そうであってほしいと願っています。ハリムやユーセフの物語を通して異性愛者でない人々の存在を知り、理解を深めることで、人々の視線が変わるかもしれません。人々の視線が変われば、社会も変わり、法律も変わっていくでしょう。ハリムのような人々の声を伝えていくことが重要です。 これは、男女問わずに、ありのままの姿で人を愛する自由についての物語、真の愛についての映画なのです。」と作品に込めたテーマを語った。

監督は、あわせて公開された動画では「本作は愛の持つ多様性、複雑さについて描いた映画です。また、私が深く愛する伝統、手縫いのカフタンについての映画でもある一方、ありのままの自分であることから私たちを阻んでいる伝統に疑問もあるということも描いています。日本の皆さんとまた分かち合えることを嬉しく思っています。ぜひ劇場でご覧ください。」とメッセージを添えた。

映画『青いカフタンの仕立て屋』は現在公開中。

作品情報
映画『青いカフタンの仕立て屋』

モロッコ、海沿いの街、サレ。旧市街の路地裏で、とハリムの夫婦は母から娘へと世代を超えて受け継がれる、カフタンドレスの仕立て屋を営んでいる。伝統を守る仕事を愛しながら、自分自身は伝統からはじかれた存在と苦悩するハリム。そんな夫を誰よりも理解し支えてきたミナは、病に侵され余命わずかである。そこにユーセフという若い職人が現れ、誰にも言えない孤独を抱えていた3人は、青いカフタン作りを通じて絆を深めていく。そして刻一刻とミナの最期の時が迫るなか、夫婦は“ある決断”をする

監督・脚本:マリヤム・トゥザニ

出演:ルブナ・アザバル、サーレフ・バクリ、アイユーブ・ミシウィ

配給:ロングライド

© Les Films du Nouveau Monde – Ali n’ Productions – Velvet Films – Snowglobe

公開中

公式サイト bluecaftan/