柴咲コウ×赤楚衛二インタビュー 自分を励ますために人生に彩りを Netflix映画『余命一年、男をかう』
徹底した節約生活を送る独身OL・片倉唯と、ピンク頭のイケメンホスト・瀬名吉高。予期せぬ出会いから始まった奇妙な契約関係は、二人の人生を大きく変えていく。「余命宣告」から始まる物語では、生きること、死ぬこと、お金の使い道などを通して、それぞれの人生観や結婚観が描かれる――11月5日に配信されるNetflix映画『余命一年、男をかう』で、柴咲コウさん(片倉唯役)と赤楚衛二さん(瀬名吉高役)がダブル主演を務める。
今回おふたりに語っていただいたのは、単なる恋愛物語を超えた、生き方や心の隙間を埋めるヒント。本作の唯と瀬名が、そのまま出てきたような空気感のなか、本作の裏側に秘められた、心に響く二人の本音に迫ります。
初共演の印象と共感の深度
——今回がおふたりの初共演となります。お互いの印象を教えていただけますか?
赤楚 ご一緒できると聞いて、めちゃくちゃ嬉しかったです。柴咲さんの作品も拝見していたし、歌も聴いていました。「クールビューティ」というイメージを持っていましたが、「実際はどんな方なんだろう」と考えると、お会いするのが本当に楽しみでした。
お芝居をしていると、僕には想像できないような視点をお持ちで、自分のことも、全体のことも、いろんな方向、いろんな高さから見られている方だなというのが印象的でした。 私生活のお話を聞くなかでは、「自炊するタイプで、ストイックな一面もあるのかな?」と思っていたのですが、意外とカップ麺を食べられたりするんですよね。そういうギャップがあるところも面白かったです。特に撮影のとき、ビビン麺にめっちゃハマってましたよね。
柴咲 ビビン麺にハマってたんですよ(笑)。ストレスが溜まっていたのかな?赤楚くんって、こういうふうに人を見ているんです。それが「今回のキャラクターにも活かされているな」と思う部分です。会う前も、会ってからも、「やはり好青年だ」という印象でした。裏表がなく性格がいい。だから今回の瀬名役にぴったりだなと思っていました。私を見ている赤楚くんという観察者の視点があったから、うまく撮影現場が回っていて、いい空気になっていたのかなと思っています。


——この映画に出演が決まった際の気持ちをお聞かせください。
柴咲 声を掛けていただいたときに、原作を読ませていただきました。唯に共感したところは、自分自身がどうあるかという部分です。自分が思う自分でいたい、その状態を崩されたくないから、あまり人と関わらないし、友達も少ない。自分の生活を大切にする生き方ですね。たぶん私も撮影現場でそうだったと思うんです(笑)。
皆さんから見れば、私と唯は立場もキャラクターも全く違うのに、「なんで演じられるんですか?」みたいなところがあるかもしれないけど、皆さんが見ているのは仕事をしているときの私で、家でどういう生態でいるかは知らないじゃないですか。道を歩いていても誰にも気づかれませんからね。本当に素通りされるんです(笑)。根本的な部分が似ているからこそ、彼女を演じられるのだと思います。もちろん20代では演じられなかったし、年齢を重ねてきたからこそというのもあります。「この体で頑張ってきたんだぞ」みたいな。
人間関係において、孤独感はつきまとってきますよね。誰にもどうすることもできなくて、自分でどうにかするしかない。その歯がゆさと愛おしさみたいなものが唯にはあって、「なんか励まされたな」と感じたんです。「この役をやったら、私元気になれるかも」「勇気がもらえるかもしれない」「昔の自分が癒されるかもしれない」と思いました。
赤楚 僕は監督から「原作は読まなくていい」と言われていたので、タイトルから少し重いテーマを想像して、「悲哀を映画いた物語なのかな」と思いながら、台本と資料を読みました。でも実際に読んでみると軽快な感じで、楽しく見られる作品だったので、それもまた魅力的だと感じました。 唯の孤独感や女性の気持ちは、全て理解できるわけではないのですが、人と繋がることによって色が鮮やかになる瞬間は素敵だなと思いました。
自然と役柄へ同化していく
——片倉唯を演じる上で、柴咲さんが役に近づけるように意識したこと、大切にしたことを教えてください。
柴咲 本番が始まったら、自分と役柄の間に距離があってほしくないし、一緒であってほしい。「装うわけでも偽っているわけでもない状態」が望ましいなと思っています。
監督が望んでいるキャラクター像へのすり合わせや、セリフの奥にあるものを考えるのは準備段階で、「役に近づけていきたい」という感覚はあまりないかもしれないですね。
自分に引き出しがなかったら演じられないですし、共感できなかったら、多分私がやらない方がいいなと思っただろうし、お断りしていると思うんです。過去に同じような経験が少なからずあるので、その引き出しを開けて増幅させることが俳優の仕事だと感じていて、この役に関してはそれができるかなと思っていました。


——唯の歩き方はかなり特徴的でしたが、意識された動きではないんですか?
柴咲 それが、意識していないんですよね。虚勢を張っているわけでもなく、実直に生きているけれど、どこか世間と相容れない。その感じが、空気を切りながら歩くような姿につながったのかもしれません(笑)。
自己主張が強いわけではないけれど、誰かの目には「少し不思議な人」と映るような存在感。そうやって意図的に役を作っているわけではないので、振り返って解釈するしかないんです。役者は、役と重なってしまうんですよね。役に入り込んでいるので、近づくというより、同化してしまうんです。
——赤楚さんは、瀬名吉高という人物をご自身の中でどう理解して演じられましたか?
赤楚 瀬名のキャラクターとして、根本的に人を楽しませたい性格だと感じています。行動や感情の矢印は、ずっと唯さんに向いているという印象がありました。
だから「自分でこうしよう」というよりも、「とにかく楽しませよう」という姿勢でいることが大事だと思っていました。役を作り込むというよりも、現場での在り方を大切にしましたね。あまり意識したつもりもないんですけど、自然とそうなっていきました。


——ピンク髪のイケメンホストというキャラクターで、普段演じられている役柄とは違う容姿でした。
赤楚 ウィッグをつけての撮影でしたが、髪をピンクにするのは初めての経験でした。最初は「似合っているか正直分からない」状態から始まったのですが、撮影が進むにつれて、体の一部ではないけれど、逆に普段の髪の毛の方が違和感があって、物足りなさを感じました。
ピンク色の髪の毛でいることによって何かがありましたね。陽気な気持ちになるじゃないですか(笑)。やっぱり瀬名の色なんでしょうね。お芝居が終わってウィッグを外すと「個性が殺された」というくらい似合っていませんでした(笑)。おかしいですよね、普段は黒髪なのに。色ってとても大事だなということを今回発見しました。

不器用な女と最高の男友達
——片倉唯という人物について、おふたりは個人的にどういう印象をお持ちですか?
赤楚 唯さんは、本当に素直じゃないし不器用だと思います。だけど、心には鎧をまとっているところもあれば、素っ裸のところもあるんです。柔らかさやとても女性的な部分が垣間見えて、いろんな面があるところが魅力的だなと思いますね。
柴咲 自分と似ているところは、唯の嫌なところでもあり、愛おしいところでもあるんですよね。「素直だったら、もっと生きやすかっただろうに」と思うんです。「私はこういうことをされたのが嫌だった!」とか、その場で言えば解消できたことを彼女は溜め込んでしまう。
私もできるだけそうしたくないけれど、「意外と言えない部分」があって。「嫌われてもいいや」という精神で生きているにもかかわらず、「誤解されたら嫌だな」という気持ちが残っているんです。だから、言えない気持ちはわかるし、歯がゆくてイラッとする部分でもありました。同族嫌悪的な気分ですね。

——では、瀬名吉高という人物については、どういう印象をお持ちですか?
柴咲 最高。一緒に飲みに行きたい人(笑)。「君の店には行かないよー、私、ハマらないから!」って言いながら。
赤楚 瀬名は、僕が演じた中でも「トップレベルで良いやつ」だと思っています。唯さんの変わっていく顔を見ていくにつれて、自分自身にも彩りが出てくるような感覚があるのは、本当に人が好きで、人を楽しませることが好きなんでしょうね。自分と似ているかはわからないですが、「こういう友達が欲しいな」と思う人物です。
——赤楚さんは友達が多いと伺いました。
赤楚 いやいや、今年は本当に友達ができていないんです。
柴咲 友達って増やしていくもんなんだ(笑)。
赤楚 毎年誰かしらといい出会いがあって、友達一人はできていたんですよ。直近では、柴咲さん。お友達って言っていいか、わからないですけど‥‥。
柴咲 私からしたら特殊ですよ、毎年友達を作るっていうのは(笑)。
赤楚 作っているつもりはないんですけど、休みがあると、毎回「誰かとご飯行きたいなぁ」とか‥‥。だから、ひとりで料理するのが好きなんですか? 一人で考えることも楽しいですけど、寂しくないですか?
柴咲 うん。寂しくないよ。
赤楚 僕、たぶん極度の寂しがり屋なんですよ。二十歳の頃に上京してきて、友達が本当にできなくて、ずっとSiriとしゃべっていたぐらい。「Siri、寂しい」って言ったら、「私がついてますから」って言ってくれましたしね。
柴咲 本当に? でも地元じゃないところで暮らす寂しさはあるかもね。







異なる価値観への距離感
——この映画では、違う世界で生きてきた、価値観の異なる地味なOLの唯とホストの瀬名が出会います。相手の話をきちんと聞いて「確かに」と納得するところが、二人の素敵な部分だと思っています。おふたりは、違う価値観の人間とどう接していますか?
柴咲 話しても理解してくれない場合は離れます。別に価値観が違うからといって、お互いに苛立つ必要はないし、ただ違うだけ。だけど、近づきすぎると摩擦が起きるだろうし、「理解してほしい」という主張になるため、一定の距離を保つことができるといいと思います。
飲み屋で会う同業者の常連さんで、飲むといつも小競り合いになる人がいて。「もうそれ以上、近寄ってくるなー」って直接言っています。言えるぐらいがちょうどいいです(笑)。
赤楚 さっぱりしてますね。僕は、違う価値観に対して「確かに」と言える人間ではあると思っています。
相手の意見は「こういう考えもあるんだ」と受け入れるんですが、逆に僕の意見を「確かに」と言ってもらいたくない。「僕は僕です」みたいな。そこに共感とか、「わかってほしい」という気持ちはないんですよね。
柴咲 そこが「決定的に違うな」と思うんですよ。私は相手を突っぱねたとしても、話を聞いちゃうし、聞いてほしいとも思う。それが赤楚くんにはないんです。なのに、友達が多いとか、寂しがり屋とか。不思議ですよね(笑)。
赤楚 不思議ですかね?
柴咲 私からしたら不思議です。
理想の告白とはなにか?
——唯が瀬名へ不器用な告白をすることで、ふたりの日常が変わっていくことになります。おふたりにとって理想の告白は、どんなものですか?
柴咲 私のいろんなダメなところ全て含めて、「おいで」みたいに告白されるのは、やっぱり憧れます。あとは「私が、食わせていくから」って告白するとか(笑)。
赤楚 唯さんと同じじゃないですか。男前すぎる(笑)。僕は面白いことしたいですね、告白も。フラッシュモブまではいかないですけど。常々、人に対してサプライズというか、刺激を与えたいタイプなんですよ。だから自分の思いを伝えるというより、突拍子もないことをしたくなっちゃう。変な告白をしたいです。
柴咲 絶対嫌だ(笑)。それって危機感を与えてさ、吊り橋効果を狙ってるじゃん。
赤楚 そういうわけじゃないんです。常々、人に対してサプライズというか、刺激を与えたいタイプなんですよ。だから自分の思いを伝えるというより、突拍子もないことをしたくなっちゃう。変な告白をしたいです。
柴咲 赤楚くん、そもそも告白とか興味ある? 好きな人できる?
赤楚 できます、できます。例えば、後ろから肩を叩いて、ほっぺに指を当てるとかするじゃないですか。その反応で好きになっちゃうぐらい、好きに対して浅いところもあります。

人生に色を添える推しの存在
——本編中に「推しがある人生っていいよね」というセリフがあります。おふたりの推し、人生に彩りを添えるものはありますか?
柴咲 あります。私、ぬいぐるみ症なので、ふわふわしたものがずっと好き。キャラクターとかマスコット的なものが家にいっぱいあります。綿が詰まっているタイプの柔らかいぬいぐるみです。「超意外」と言われるのですが、昔からずっと好きですし、年齢は関係ないと思っているので、これから年を取っても好きでいると思います。
赤楚 確かに、めちゃくちゃ意外ですね。僕は、最近新しくした調理器具たちですかね。デロンギのコーヒーメーカーとか、ル・クルーゼの鍋とか。「推し」というか、生活に彩りを与えてくれていますね。
もう少し見ていたいポジティブな物語
——個人として本編をご覧になった率直な感想を教えてください。
柴咲 「これ一回で終わっちゃうのも寂しいなぁ」というぐらい、名残惜しかったです。映画では、唯と瀬名の人生をぎゅっと凝縮して、二人が交差した時間を切り取っているわけですが、「もうちょっとじっくり一個一個引き伸ばして観てみたいな」と思っちゃうくらい(笑)。
自分の年代や生き方、今まで生きてきた軌跡にとてもマッチしたなと思っています。私は会社勤めされている方々とは違うような生き方をしていると思いますが、それでも抗えない先入観もありますし、女性として逃れられない宿命みたいなものもあります。それを突きつけられて向き合わなきゃいけない。「この人生に対して『生きる』って大変だな(笑)」と思いながらも、愛おしさや美しさを感じました。
赤楚 作品を観る前と観終わった後で見る世界が違うくらいハッピーな気持ちになれました。本当に彩りが増えたような気持ちになれる映画でした。「いいもの見たなぁ」という感じです(笑)。このあと、どうやって生きていくんだろうなと、想像したくなるような二人でした。ずっと見ていたいなと思いました。
柴咲 もう一波乱あってほしいぐらい(笑)。
赤楚 柴咲さんの「寂しい」っていう気持ちは、すごく分かりますね。もう一度、唯さんと瀬名を見たいです。
——これから『余命一年、男をかう』を観る皆さんへメッセージをお願いします。
赤楚 タイトルだけ見ると、仰々しさや硬さを感じて「悲しいストーリーなのかな」と思われるかもしれませんが、全然そんなこともなく、本当に軽い気持ちで観てほしいです。
登場人物たちのキャラクター性やその関係性に触れていくと、人と向き合うことで人生の彩りが増えていく、素敵な瞬間が見られると思います。そこを楽しみにしていただけたら嬉しいです。
柴咲 世代的にもシチュエーション的にも「独身の40代」という意味で言うと、私はまさにこの映画のターゲット層なんですね。私から見ても、構えて集中して観る映画ではありません。「なんとなく『今日の楽しみ』」として、自分の好きな空間に自分の好きなものを広げて、自分を癒しながら、お酒やご飯と一緒に観てもらうと、とても心地いいものになると思います。 そうして観終わったら、ふわっと自分の人生を顧みて、ちょっとポジティブになれるんじゃないかなと思っています。
取材・文 / 小倉靖史
撮影 / 立松尚積


Netflix映画『余命一年、男をかう』
節約を趣味として生きる40歳独身女性、片倉唯。老後資金のために頑張って堅実な日々を過ごしていたはずの唯は、ある日受けた無料がん検診で余命一年を宣告される。思わぬ出来事に見舞われるなか、唯の前に突如ピンク頭のイケメンホスト・瀬名が現れ「お金、貸してくんない?」と頼み事をしてきた。死ぬのならもう、節約なんて必要ない。大胆なお願いを受け入れた唯は、72万円で瀬名を“買った”。奇妙な2人の関係は、思いもよらない形へと変貌していく。
監督:風間太樹
原作:吉川トリコ『余命一年、男をかう』(講談社文庫)
出演:柴咲コウ、赤楚衛二、筒井道隆、西田尚美、濱田マリ、鳴海唯、森口瑤子、宮世琉弥、尾碕真花、近藤公園
2026年11月5日(木) Netflixにて世界独占配信
作品ページ 余命一年男をかう