アマチュアとは プロフェッショナルとは
“アマチュアスパイ”と言われるチャーリーだが、彼はCIAの分析官であり、記録映像・音声、サーバーのログなどの細かな情報をつなぎ合わせて、事件の真相への手がかりを見つけ出すプロフェッショナルである。こういった自分の得意分野を駆使して、彼の復讐に反対するCIA上層部の追手をかわしながら、標的を追い詰める。
彼の戦闘所作は少々鈍臭く、いわゆるスパイアクション的ではないかもしれないが、分析官としての専門的なスキルに、皆が翻弄される。そしてチャーリーを追い詰めるスパイたちは、プロフェッショナルな戦闘技術を持っているが、隠蔽・偽装された情報に辿り着くことができない。
ストーリーが進むにつれ、登場人物それぞれのプロフェッショナルさ、アマチュアさの対比が浮き彫りになり、そのせめぎ合いに、観客はグッと息をのむだろう。

原作の書籍に、こんな言葉が記されている。
【pro・fes・sion・al】
やりがいのあることなら、立派にやってのけるだけの価値があると思っている人。【am・a・teur】
「チャーリー・ヘラーの復讐」ロバート・リテル著 北村太郎訳(新潮文庫)
やりがいのあることなら、失敗してもやるだけの価値があるのではと思っている人。
目的を遂げる。この一点において、果たしてチャーリーはアマチュアなのか? ある職務を遂行する上で、達成目標のために、何が効果的で、どう動くのか。それらを考えて実行する。これはスパイではなくても職業についている人、皆に当てはまること。本作のチャーリーを観ていると、彼は、アマチュアであり、プロフェッショナルなのだと感じる。
それでは、アマチュアとプロフェッショナルの違いとは何なのか? 俳優としてお互いを高め合う存在だと言う、ラミとレイチェルに質問をぶつけてみた。

レイチェル・ブロズナハン
「もちろん人によって意味は違うと思うんですが、私が思うに、アマチュアはすごく情熱があって、自分本来の才能を何かのスキルに変えようと努力している人。
そしてプロフェッショナルは、培ったスキルを常に磨いて、より良いものに更新していく情熱を維持するために戦っている人だと思います」

ラミ・マレック
「ローレンス・フィッシュバーンによると、アマチュアという言葉の語源は愛から来ているらしいんだ。
プロフェッショナルであることは、こういったアクション映画にみられる要素のことかもしれない。例えば、誰かがトレーニングをして、そして主人公が立ち上がる、といったようにね。でも、この映画でいうアマチュアに関しては、チャーリーの最大の武器は愛だと思います。
人間は、相性が良いだけでなく自分を高めてくれる存在を、人生を賭けて探すものだ。チャーリーにとって、サラがそういう相手だった。そして、それを奪われてしまった。だから時々、最愛の人を亡くした彼が、なぜそんなに頑張れるか、不思議に思うことがある。
彼はプロフェッショナルであることを決して望んでいなかったと思う。常にアマチュアの気持ちでいることで、プロフェッショナルを凌駕することができたんだ。とても素晴らしいことだよ。
一応、いまスマホで語源について確認したんだけど合ってたよ。モーフィアスの言うことを疑うなんて、どうかしてたね」
