Jul 11, 2017 interview

「欲望に素直な女性たちを全肯定したい」官能映画の名手・廣木監督インタビュー

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本作を撮ったのは福島県出身の廣木隆一監督。『ヴァイブレータ』(03年)、『余命一ヶ月の花嫁』(09年)など、複雑な女性心理を巧みに映画化してきた名手だ。映画の完成に先駆けて小説も執筆した廣木監督が本作の誕生の経緯、官能シーン撮影の舞台裏、そして廣木作品のヒロイン像の意外なルーツについて語った。

 

──蓮佛美沙子主演作『RIVER』(12年)はサバイバーズギルドをテーマに描き、『さよなら歌舞伎町』(15年)には被災地から上京して週末だけAV女優になる専門学校生が登場しました。新作『彼女の人生は間違いじゃない』はこれまでの廣木監督作と繋がるものになっていますね。

そうですね。『さよなら歌舞伎町』は荒井晴彦さんの脚本だったんですが、脚本段階ではAVに出演する主人公の妹は被災地出身という設定ではなかったんです。その頃、被災地の女性が風俗やAVに流れているという噂を聞いたり、そういった週刊誌の記事を見かけることがあったので、僕から荒井さんに頼んで東北出身という設定に変えてもらったんです。

 

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──グランドホテル形式の『さよなら歌舞伎町』では被災地から上京してきたAV嬢はエピソードのひとつでしたが、改めて『彼女の人生は間違いじゃない』としてご自身の手で小説を執筆することに。

『さよなら歌舞伎町』のお話をいただいた頃も、漠然とですが被災地で暮らしている女性の物語を考えていたんです。それもあって『さよなら歌舞伎町』に荒井さんに頼んでエピソードを入れてもらいましたし、『さよなら歌舞伎町』を撮り終わって、もっとその問題に向き合いたいという気持ちになったんです。それで被災地で暮らす女の子を主人公にロングシノプス(あらすじ)を書き始めました。でも映画化はどうしても時間が掛かるから、まずは小説にしてみようと。それで映画よりも先に、小説『彼女の人生は間違いじゃない』が出来上がったんです。初めての小説だったこともあり、結局は小説を書くのにも時間が掛かって、出版社と約束していた締め切りを半年も過ぎましたけどね(苦笑)。

 

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女の子たちが風俗で働く理由とは?

 

──『さよなら歌舞伎町』の美優(樋井明日香)は専門学校に通う学費を稼ぐためにAVに出演していましたが、『彼女の人生は間違いじゃない』のみゆき(瀧内公美)は普段は公務員でもあり、被災手当てももらっている。お金目的でデリヘル嬢をしているわけではない?

お金に困っているわけじゃないですね。デリヘルで遊んだ経験のある人が、『彼女の人生は間違いじゃない』を観て、「彼女はよっぽどお客を取らないと赤字になるんじゃないか」と心配していました(笑)。料金2万円のデリヘルで彼女は事務所から1万円もらえるとして、福島から東京までのバス代往復7000円を引くと3000円しか残らないわけです。映画の終わりに彼女は子犬を飼い始めるんですが、犬を飼うぐらいのお金を彼女はデリヘルで稼いでいるということになりますね。

──小説では、みゆきがデリヘルで働き始める動機を「ただ、少し現実を忘れられる所が欲しかった。他人といたかった。私を知らない誰かと。私も知らない私と。誰かを裏切ってみたかった」と独白させていますが……。

そんなふうに書いていましたか。誰を裏切ってみたかったんだろう……って、書いたのは俺か(苦笑)。仮設住宅で暮らしているみゆきとしては世間というか社会に対して、いろんな想いがあるんでしょうね。

 

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──主人公のみゆきは具体的なモデルがいるわけではない?

デリヘルで働いている女の子を取材したことはありますが、そのまま具体的に主人公のモデルにはなっていません。『さよなら歌舞伎町』に韓国の女優イ・ウンウさんにデリヘル嬢役で出演してもらったんですが、彼女の希望でデリヘルの女の子に話を聴き、その場に僕も同席しました。実際にデリヘルに勤めている女の子は、すごく刹那的です。働く目的はお金のためで、何のためにお金がいるのかというと整形手術をするため。「この間はあごを直した」「今度は鼻を直す」とか、そういう感じです。「なんで、そんなに手術するの?」とこちらが尋ねると、そのへんのことはしゃべってくれない。すごく簡単に言うと「違う自分になりたい」ということみたいなんですが、それを言葉にしちゃうとすごく陳腐になってしまう。僕は稼いだお金で自分の身体を整形していくという、その欲望がすげぇなと感心するんです。僕なんて、怖くて自分の顔にメスなんて入れたくないし、そのためにお金を稼ぐなんて思いもしません(笑)。自分にはない発想ができる女の子たちのことが、逆に面白いなぁと思えてくるんです。

──女の子たちの持つ欲望は、生きていく上でのバイタリティーにも繋がっているわけですね。

そうです。決して自分には真似できない。女性ならではの強さだと思いますね。

 

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──本作のみゆきもそうですが、廣木監督作品の『ヴァイブレータ』の寺島しのぶ、『さよなら歌舞伎町』のイ・ウンウといったヒロインたちは、自分の居場所を求めてさまよっているイメージがあります。

男と女とに簡単に分けるわけにはいかないんだけど、女の人って欲望に対して、すごく正直だと思います。そんな欲望に対して正直に生きようとする人を、僕は描きたいんだと思うんです。欲望に忠実に生きようとすれば、リスクも当然のように生じるし、そのリスクもちゃんと受け止めようとする人に惹かれるんです。欲望に素直な人たちを全肯定したいというか……。

──「彼女の人生は間違いじゃない」と。

そういうことですね(笑)。自分自身は優柔不断な性格で、真似はできない。憧れですね。

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