酔っ払いに台本はない
ーー阪元監督との対話から、この作品の雰囲気を作り上げていかれたんですね。
久保 こういうビジョンでこうしたいです、というより、ポロっと発した言葉を監督が「いいですね。それ言っちゃいましょう」みたいな感じで、その場で生まれたものを汲み取って、作品の中へ入れていく作業が新鮮でした。
平 酔っ払っているシーンは、基本そうだよね。

ーー居酒屋のシーンは長回しで撮ったんですか?
平 そうだよね。なかなかカットかからない。一応、台本上のセリフはあるけど、実際の2割くらい。
久保 段取り確認でメニュー見て「何頼みますか?」から入って‥‥
平 「これ頼みますか?」って、なんでもいいんだって(笑)。自由でしたね。
久保 居酒屋の帰り道とかも台本ないよね。
平 そうだね。予告でも使われていると2人で歩いているバックショットとか、吐いているシーンとか。酔っ払いシーンは、ほぼ台本はないです。

ーー入巣が酔っ払って、先輩への思いを素直に語る重要なシーンですね。ふたりの関係性が滲み出ていました。
久保 本読みの段階で、監督から「酔っ払うシーンはちゃんとやりたいです」って言われていていたんです。すごく不安でしたけど、完成して観たら、呂律も回ってないし、自分が思っていたより酔っていましたね。
平 本当に飲んでるみたいだったね。私は「え、しーちゃんすごい酔うじゃん。」って思って見ていて(笑)。
久保 そう、本当に酔ってたのかな?ってぐらい楽しかったです。
平 ほっぺも赤くなってくるし、その姿が、かわいくてかわいくて。入巣が酔ったらこんな感じなんだろうなってリアルに感じましたね。

2人が関係を育んだ女子寮
ーーおふたりが入巣とルカになれた、ここで仲良くなれたなみたいな瞬間はどこですか?
平 2人シーンのインが女子寮だったから、そこかな。
久保 女子寮のシーンを頭に一気に撮ったんですよ。あの空間に入巣とルカが一緒に生活しているわけで‥‥
平 あの狭い空間にいたら仲良くなる(笑)。セッティング中も、2人でずっとベッドにいてね。
久保 体育座りしてずっと会話してたね。最初の頃は「好きなアーティストとかいるんですか?」みたいな会話だったのに、途中からお互いのヨレヨレの靴下で遊び出して (笑)。
平 そうだったね(笑)。

ーー外で休憩するわけでもなくて、ずっと部屋にいたんですね。
久保 ずっといたよね。出ればよかったのにね。
平 本当にね。しかもめっちゃ暑いんですよ、あの部屋。狭い空間にスタッフさんもみんないるし、照明もあるし、夜のシーンなんて暗幕かけないといけないしで、熱がこもるんです。
久保 本当にサウナみたいだった。
平 でもそこで生まれた空気感があったから、アドリブみたいなものがいっぱいあります。現場で起こったハプニングがそのまま映画本編で使われていたりします。
久保 あれすごかったよね。でも使われると思ってなかった。

ーーハプニングが起きたのはどのシーンですか?
平 2人で雑誌を見ているとき、私がシェイクを飲んでいるんですけど、それを倒しちゃって中身をぶちまけちゃったんです。咄嗟にしーちゃんが「何やってんすか? 先輩」ってうまくフォローしてくれて‥‥。
久保 私がふきんを取り行ってね。今までだったら、”あ、これどうするんだろう”って考えが頭をよぎるんですけど、そのときは焦りがなかったんですよ。もう入巣としていられたので、そのままの感情で続けられましたね。
平 ちゃんと入巣とルカでいられたんだよね。で、終わった後に、「すいません!」って2人で謝って(笑)。
久保 一生懸命シミ取りしてね、楽しかった。