Oct 05, 2017 interview

松本潤、有村架純、坂口健太郎が泥沼愛に『ナラタージュ』行定監督が語る“大人の恋愛”

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不倫映画「浮雲」に魅了されるヒロイン

 

──行定監督がいちばん共感できるキャラクターは誰ですか?

僕が共感できるのは、葉山先生(松本潤)ですね。小野くんに対する泉もそうでしたが、葉山先生も泉に「ごめん」と謝る。謝っているけど、自分のことは変えようとしない人間です。もちろん、自分も傷ついてはいるんだけど、自分の本音をすべて口にすることなく「……」と押し黙ってしまう。演劇部の顧問として舞台を上演することで、一種の現実逃避をしている。舞台の演出をしているときは、現実の問題をちょっとだけ忘れることができるわけです。小さな寒村を舞台にしたケイシー・アフレック主演の「マンチェスター・バイ・ザ・シー」(16年)もそうでしたよね。周囲は変わっていくけど、子どもを亡くした主人公だけはずっと孤独で、変われないまま。『ナラタージュ』の場合は恋愛に逃げ込むわけで、あそこまで孤独ではないのかもしれませんが。

──なるほど、そう考えると葉山先生が文化祭の上演演目にシェークスピアの『真夏の夜の夢』を選んだのも理解できますね。

「真夏の夜の夢」は恋愛をコメディとして描いたファンタジーですよね。恋に悩む台詞もあるし、最後はハッピーエンドで終わる。『ナラタージュ』のストーリーとは対照的で、皮肉っぽくていいかなと。原作では島本さんがちゃんと高校演劇について調べた劇中劇になっていましたが、僕のほうで変えさせてもらったんです。

 

 

──泉と葉山先生の会話に登場するフランソワ・トリュフォー監督の「隣の女」(81年)や映画館で上演される成瀬監督の「浮雲」(55)も大人の恋愛映画ですね。

ちょっと背伸びして、大人の映画を観る女の子って、こういう恋愛をしてしまう資質があるかもしれませんね(笑)。自分自身にはまだ大人の恋愛経験はなくても、何か引っ掛かるものを感じているんでしょう。葉山先生と自分との恋愛はどこへ向かうんだろう、行くところまで行くんだろうとか、そんなことを考えるのかもしれません。泉たちの心情を察する上でのキーワード的なものになればいいなと思って選んだんです。

 

 

女は優しさゆえに、男を追い詰めてしまう

 

──本作の前に、R18指定のロマンポルノ『ジムノペティに乱れる』(16年)を行定監督は撮っていますが、そういった官能映画を撮ったことが本作に与えた影響などはありますか?

どうでしょうね。『ジムノペティに乱れる』は恋愛映画というよりは、ひとりよがりの世界ですから(笑)。

──自分の撮りたい映画が撮れずにいる映画監督(板尾創路)が、次々といろんな女性とベッドを共にしていく1週間の物語でしたね。

そうです。あの作品も男の身勝手さ、どうしようもなさを描いているんだけど、社会と斬り結ぼうという気がまるでない男の話なんです。低予算の短いスケジュールで撮った作品ですし、まぁ社会に共感を求めなくてもいいかな、くらいの感覚で撮った作品です(笑)。その点、『ナラタージュ』は社会で生きているみんなと繋がっている作品かなと思います。さきほども不倫騒ぎがワイドショーや週刊誌を賑わしていることに触れましたが、芸能人に一般的な倫理観を求めるほうがどうなんだろうと思うんです。僕も含めてですけど、こっちの世界にいる人間はみんなどこかしら、おかしいわけですから。それを茶番っぽく取り上げるのもねぇ。むしろ、フツーの人の恋愛事情のほうが興味深いと僕は思いますよ。誰も知らない一般の人のほうが「えっ?」と思うような恋愛体験をしていたりする。『ナラタージュ』って、そういう視点の作品じゃないですか。

 

 

──泉役の有村架純さんは、ごく普通の女の子をリアリティーたっぷりに演じてみせますよね。

有村さんはね、本当に生々しい芝居をする。彼女自身は若い頃から女優として頑張ってきて、人気が出てからは多忙な生活を送っている。泉ほどのディープな恋愛はまだ体験していないかもしれない。でも、自分の中にある女性の部分で、泉というキャラクターに真っすぐに向き合ってくれた。自分の中のまだ未知の感情を絞り出して、役になってみせた。それって周囲にいる人間が手助けできることじゃないんです。でも、彼女は泉のことを正しく理解してみせた。泉はすごく優しく、でもそれゆえに男を追い込んでしまう。その気まずさとかね。男を追い込んでしまったときの目とかね。あの目つきは、女らしいなぁ、エロチックだなぁと思って見ていました。

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