Oct 14, 2021 interview

“土方歳三がそこに立ってる”――『燃えよ剣』主演の岡田准一が語る、鈴木亮平、山田涼介、柴咲コウとの共闘

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黒澤明監督×三船敏郎を思わせるゴールデンコンビとなった原田眞人監督×岡田准一が、『関ヶ原』に続いて送り出すのは、関ヶ原の戦いから250年以上が経過し、再び動乱の時代を迎えた幕末を舞台に、新選組の興亡を描いた『燃えよ剣』。司馬遼太郎の原作をもとに、壮大なスケールで若き志士たちを描いた本作で岡田は新選組副長・土方歳三を壮烈な演技で魅せてくれる。過酷な撮影現場で知られる原田監督のもと、“座長”として新選組の隊士を率いた岡田は、近藤勇役の鈴木亮平、沖田総司役の山田涼介、初共演となる柴咲コウと、どんな共闘関係を築いたのだろうか? 剣技の指導やキャラクターごとの殺陣の構築にも携わり、役を離れても俳優たちの中で土方を思わせる存在であり続けた岡田准一に、役者と作り手の双方の視点から語ってもらった。

10年以内に土方歳三を演じる予感

――いつかは土方歳三を演じることになるという予感があったそうですが?

NHK BSプレミアムで『ザ・プロファイラー~夢と野望の人生~』という番組をやらせてもらっていて、土方歳三の回(「俺は負けない、負けたくない〜土方歳三・走り続けた純粋戦士~」2013年10月23日放送)があったときに、“この役を演じるかもしれない”と思ったんです。身長もだいたい同じくらいで、いつか土方歳三を演るんだったら、ここから10年以内ぐらいかなと直感で思いました。

――その直感通り、『燃えよ剣』で土方を演じることが決まったときはどう感じましたか?

主演には様々なパターンがあって、この前に原田(眞人)監督とご一緒させていただいた『関ヶ原』のように、その時代を見せることが中心の描き方もあるんですが、『燃えよ剣』は土方を通して時代を見せていくという作りでした。これは原田監督にご褒美としていただいた役だと思って、それに感謝しながら、人間としての危うさと魅力がある人として演じきろうと思いました。

――『関ヶ原』と『燃えよ剣』を通して日本の歴史で大きな転換に立ち会う“敗者”を演じましたね。

『関ヶ原』をやった後で、そこから続いた時代の最後となる幕末の話をやれたのは、歴史好きとしては面白かったです。敗者という意味では、それが美しく見えるような男の生きざまが描かれていたと思います。映画の後半に描かれている土方は、これまでもどういう気持だったんだろうなと思っていたので、演じるにあたって、こうなんじゃないかと自分が感じた形で演じさせてもらいました。

――肖像写真を撮るシーンは、現存する土方の写真とそっくりでした。

写真が残っていて、みんなが知っているので、あの顔にどうやったらなれるか。このシーンを撮っているときに、あとでスタッフさんに“土方っぽくて怖かった”と言われたんですが、確かに誰も近づいて来なかったです(笑)。みんながそういう空気感を感じ取って近づかないようにして集中させようとしてくださったのかもしれません。これはスタッフさんや共演者しか分からないかもしれないですが、現場で “土方がそこに立っている”と感じてもらえたら、僕の中で役作りとして成功だと思っていたので。

鈴木亮平、山田涼介との一体感

――近藤勇役の鈴木亮平さん、沖田総司役の山田涼介さんとの共演はいかがでしたか。

鈴木さんは、大河ドラマ(『西郷どん』)の前と後で人が変わりました(笑)。自信と覚悟と視野の広さを持っていらっしゃいました。撮影中も、新選組の隊士たちの中で、落ち込んでいたり悩んでいる役者さんがいたら、ご飯を食べに誘ったりするんですけど、局長の鈴木さんが「僕やっときます」と、やってくれたんですよね。そういう芝居だけではない現場の雰囲気作りでも鈴木さんには助けていただきました。山田くんも、僕と鈴木さんに囲まれてイジられたりしながら可愛いキャラクターでいましたし、でも真面目に才能と取り組む姿勢も見せていて、3人の関係性がすごく良かったですね。現場でも違和感なく、お互いに役名で呼びあっていました。

――土方と恋に落ちる絵師、お雪を演じる柴咲コウさんとは初共演となりましたが、どんな印象でしたか?

令和でも平成でもなくて、僕が知っている昭和の女優さんを感じさせる方だと思いました。お雪さんが青い着物で土方が来るのを待つシーンがあるんですが、それが遠目から見ても、とても綺麗でした。そのときに往年の女優さんのような力を感じたんですよ。すごくナチュラルで、美しいなと思って見ていました。