出演作は“選ばない”、影響された二つの時代
──これまでジャンル問わず幅広い作品、そして役柄に挑戦されていますが、出演作を選ぶ際に大切にされていることがあれば教えていただけますか。
20代のころは“自分を守るため”とか、ほかにもいろんな理由をつけて出演作を選んでいたように思いますけど、それってすごくつまらないことなんだと気付いてからは、“選ばない”ことを大事にするようになりました。例えば脚本をいただいて読んだ時に、最初はあまり心が動かないこともあります。だけど、自分が参加することで“何かを生むことができたら”とか“おもしろくできたら”、“観る人の心を動かすことができたら”とチャンレジしてみるのもおもしろいよなと。逆に脚本を読んだ段階でおもしろいと感じた作品は、そこに自分が飛び込んでみたらもっとおもしろくできるかもしれない、そんなふうに自然と考えるようになっていったんです。作品を選べば予期せぬ出会いが減ってしまいますから、最近は物理的に難しい場合を除いて、お話をいただいた順にスケジュールが合うものからお受けするようにしています。
──井浦さんのルーツになった作品や、影響を受けたものを教えてください。
縄文時代と江戸時代からは大きな影響を受けています。この二つの時代で生きる人間の自然な営みや、何かを表現しようとする熱量に圧倒されてしまうというか。技術的な面に関しても、例えば当時は何かを作ろうと思っても道具がそれほど揃ってないので難しかったりしますよね。それでも何かを生み出そうとする想像力や実行力というのはすごく勉強になるんです。僕はそこからいろんなことを学びましたし、現代に生きる自分にはいったい何ができるのかを考えさせられたりもして。この二つの時代がすごく自由でいいなと思うのと同時に、“なぜ当時の人間は無理だと思えることでもやり遂げようとするのか”ということにも興味があるのでもっと探求していきたいと思っています。この話をし始めると止まらなくなってしまうので、もう少し時間をいただきたいです(笑)。
──(笑)。今度井浦さんにお会いする時までに、二つの時代についてしっかりと勉強しておきますね!
いえいえ、勉強しなくてもいいですよ(笑)。というのも、江戸時代であればある程度は誰がどんなことを成し遂げたのかなど調べればわかるのですが、縄文時代に関しては博物館や資料館でしか知る術がなく、細かいところまではわからないので、そこは想像力で補っていたりするんです(笑)。知れば知るほど当時の物作りにかける精神に負けないぐらい、現代に生きる僕はおもしろい作品を生み出していかなければいけないなと思わされます。
取材・文/奥村百恵 撮影/三橋優美子
スタイリスト/上野健太郎
ヘアメイク/堀奈津子
1974年生まれ、東京都出身。『ワンダフルライフ』(98年)で映画初主演。『かぞくのくに』(12年)でブルーリボン賞助演男優賞、『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』(13年)で日本映画プロフェッショナル大賞主演男優賞を受賞。近年の主な映画出演作に『赤い雪 Red Snow』『嵐電』『こはく』『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』(19年)など。10月期ドラマ『ニッポンノワール-刑事Yの反乱-』、映画『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』(2020年2月21日公開)が待機している。
文具メーカーで働く営業マン宮本浩は、笑顔がうまくつくれない、気の利いたお世辞も言えない、なのに人一倍正義感が強い超不器用な人間。会社の先輩の友人である、自立した女・中野靖子と恋に落ちた宮本は、靖子の自宅に呼ばれるが、そこに靖子の元彼・裕二が現れる。裕二を拒むため、宮本と寝たことを伝える靖子。怒りで靖子に手を出した裕二に対して、宮本は裕二に「この女は俺が守る」と言い放つ。この事件をきっかけに、心から結ばれた宮本と靖子には、ひとときの幸福の時間が訪れる。しかし、二人の間に人生最大の試練が立ちはだかるのだった…。究極の愛の試練に立ち向かうべく、宮本が“絶対に勝たなきゃいけないケンカ”に挑む!
原作:新井英樹『宮本から君へ』百万年書房/太田出版刊
監督:真利子哲也
脚本:真利子哲也、港岳彦
出演:池松壮亮 蒼井優 井浦新 一ノ瀬ワタル 柄本時生 星田英利 古舘寛治 ピエール瀧 佐藤二朗 松山ケンイチ
主題歌:宮本浩次『Do you remember?』(ユニバーサルシグマ) レコーディングメンバー Vocal:宮本浩次、Guitar:横山健、Bass:Jun Gray、Drums:Jah-Rah
配給:スターサンズ、KADOKAWA
2019年9月27日(金)公開
©2019「宮本から君へ」製作委員会
公式サイト:https://miyamotomovie.jp/