Sep 26, 2019 interview

井浦新が語る“全編クライマックス”の『宮本から君へ』舞台裏、作品や役との向き合い方

A A
SHARE

“どう演じればいいのか”に集中できた現場

──裕二はヒモ気質で遊び人っぽいキャラクターではありますが、物語が進むうちにどんどん魅力的に思えてきて、映画が終わるころには好きになっていました。

いやいやいや…、好きになっちゃダメなタイプですから気をつけてください(笑)。

──(笑)。原作には裕二のキャラクター像が本作よりも詳しく描かれていますよね。

原作を読んで感じたのが、裕二は独自のリズムをしっかりと持っているということ。彼が登場するだけで何かが起きるんじゃないかとハラハラさせてくれる感じがあるというか(笑)。だから映画でも「この人が出てきたらこの場面はキレイにまとまって終わるわけがない!」みたいな雰囲気が出せたらと思いながら演じていました。はっきり言ってこの作品の登場人物は珍獣野獣だらけですが(笑)、裕二は珍獣でも野獣でもなく野性動物に近いのではないかと。そんな裕二なりのリズムを保ち続けることで、宮本や靖子に引っ張られることなく、風のように現れて風のように消えていく、そんな独特なキャラクターを演じられたように思います。

──話は変わりますが、NHK連続テレビ小説『なつぞら』では登場するだけで安心感を与えるくれる仲さんというキャラクターを演じてらっしゃいました。演じる役柄によって現場での居方や意識というのは違ったりするのでしょうか?

役柄によってというよりは、主演かそうでないかで違ってくることはあります。主演の場合は全体をしっかりと見渡すことや考えること、感じることなどが必然的に増えますし、つねに360度アンテナを張っていなければいけません。ですが、今回の裕二のように、作品のひとつのスパイスとして参加する場合は、“池松くん、蒼井さんと一緒にどんなおもしろいことをするか”、その一点に気持ちを集中させることができるんです。もちろん主演を務めさせていただく時の意識と基本的には変わらないのですが、現場全体のことは今回の作品だったら座長の池松くんに任せていれば間違いないなと(笑)。そういう違いはあります。

──自身の役をどう演じるかだけではなく、“相手の役者さんと一緒にどうおもしろくしていくか”をしっかりと考えながらお芝居することを大事にされているのですね。

やはりそこをちゃんと膨らませながらお芝居しないと、ただ作品に登場しただけになってしまう可能性があると思うんです。とくにこの映画の場合、裕二は宮本と靖子と一緒のシーンがほとんどなので、この二人がよりおもしろいキャラクターに感じてもらえるにはどうしたらいいか、そしてこの二人の新しい側面を見せるには裕二をどう演じればいいのかを考えることに集中していました。そうすることで作品をより良いものにできたらという気持ちが強かったですね。