Sep 26, 2019 interview

井浦新が語る“全編クライマックス”の『宮本から君へ』舞台裏、作品や役との向き合い方

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今年は映画『こはく』、『嵐電』で主演を務め、NHK連続テレビ小説『なつぞら』ではヒロインが信頼する上司・仲努役を好演するなど幅広い作品で活躍を見せている井浦新。最新出演作『宮本から君へ』では、主人公の宮本浩の恋人・靖子の元恋人で、どうしようもない遊び人の風間裕二を演じている。宮本役の池松壮亮と靖子役の蒼井優との共演を熱望したという井浦が、本作の現場で大事にしたことや作品選びについて、影響を受けたカルチャーについて語った。

池松壮亮&蒼井優の芝居を“全身で感じたい”

──本作は昨年に放送された連続ドラマ『宮本から君へ』の映画版になりますが、ドラマに対してどのような印象をお持ちでしたか?

良い作品だなと、純粋に思っていました。物語の世界観も好きですし、良い匂いがする時代感を持っているというか。それに池松くんが生き生きと宮本として生きている姿は見ていて痛快ですよね。ただ、とんでもない熱量を感じるドラマなので、その中に入ったら大変だろうなとは思っていました(笑)。自分がこの作品の現場にいるという想像ができないぐらいの圧倒的な熱量なので、お声をかけていただいた時は正直戸惑ったりもして…(苦笑)。

──お話を受けられた一番の理由はなんだったのでしょうか?

池松くんが宮本という役に全身全霊をかけている姿を見て、自然と心が突き動かされてしまったことが大きいです。それは蒼井さんのお芝居も同じで、だからこそ、このお二人と一緒に芝居をしたいという気持ちになったのが、お受けした一番の理由です。裕二は宮本、靖子と一対一のシーンも多いですし、対決するシーンもありますから、お二人とガッツリ芝居をすることで“風間裕二”という役をしっかりと作っていけるのではないかと。とにかくお二人と一緒に芝居がしたいという気持ちの一点で、この作品の現場に飛び込んでいくことを決めました。

──いざ現場に入られてみていかがでしたか?

クランクインから4日目あたりから撮影に参加させていただいたのですが、お二人がすでにボロボロの状態になっていたので、「クランクイン初日から数日間でいったい何があったのか?」と驚きました(笑)。普通はクランクインして4日目ぐらいだとギアを1から2へと入れる段階で、そこから少しずつ調整していくはずなのですが、お二人は最初からトップギアに入れて突っ走っているような状態だったので、これはとんでもないところに来てしまったなと(笑)。「1シーン1シーンすべてがクライマックスだね」と現場でもよく言っていたのですが、つねにテンションを保ち続けているような現場でした。

──トップギアで突っ走るお二人とお芝居で対峙するためには、ご自身も同じぐらいの熱量やテンションで挑まなければいけなかったのではありませんか?

お二人のお芝居を全身で感じたい、全身で受けたいという気持ちはありましたが、だからと言ってこちらが同じ熱量で同じものを返す必要はないんです。というのも、裕二の中には宮本のような部分も靖子のような部分もないけれど、二人のことを否定せずに受け止めてあげられる、そんな人物として演じたいと思いましたし、裕二のキャラクターとしてのおもしろさはまさにそこにあるのではないかと。宮本が120で投げてきたら、裕二は全身でそれを受け止めて、ポロっと10で返すぐらいがちょうどいい気がして。靖子に対しても同じような感じでやっていましたが、池松くんや蒼井さんはこちらの意図をちゃんとわかってくれるんです。お二人とのお芝居は本当に楽しかったですし、すごく刺激的でした。

──裕二は宮本のことをどう思っていたのか気になったのですが、井浦さんはどう解釈されましたか?

裕二が10で返しても宮本は120で拾おうとしてくれるので、そんな宮本を「こいつのこと好きだな」と感じていたのかなと思いながら演じていました。