脚本家と監督から渡されたもの
ーーこの映画の公開にあわせて、岡田さんは「この脚本を読んだときに密度が濃すぎて重たい何かを渡されたような感じがした」とコメントされています。これについて具体的に伺ってもいいですか?
それは今回の映画のラストを含めてのコメントだったので、詳しくはあんまり言えないんですけど‥‥野木さんと僕は「掟上今日子の備忘録」(2015) という連続ドラマをご一緒させていただいて、そこからかなり時間が経っている中で、今回またこういった機会を与えてくださったっていうことが、まずひとつあります。
また今回の梨本孔という役は、結構、無味無臭であんまり色がない。普段、役を演じるときは、ちょっとずつ肉付けをしていく感覚はあるんですけど、今回の孔に関しては肉付けをすると、この作品の持っているバランスが、ものすごく悪くなるなと思ってました。
だからこそ、この役を演じるのはとても難しいと感じていました。そして、この役をお願いされるというのも、ある種、渡された感じがして、そういうことが重なって、あの言葉を使いました。
ーー「この役を演じるのはとても難しい」というのはよくわかります。今回、インタビューで、岡田さんの役柄を、深掘りしすぎると物語の全てがバレてしまう‥‥。
そうなんですよね。満島さんが演じる舟渡エレナもそうですけど、全てが繋がっている映画なので、取材を何回か受けたんですけど、答えがすごく慎重になってしまって (笑)。
ーー目まぐるしく展開が変わっていく作品ですしね。
それを把握するのが大変ですよね。今回登場シーンが倉庫の中だけで、いわゆるキャラクターの自宅のシーンとか、私生活っていうのを描くのを全部排除している台本でした。4日間の話の中で、どのくらいの疲れ具合なのか、そこに詰められた時間をどう見せるか。服もそうですし、メイクもそうですし、そういう点をみんなで考えて作っていくストイックな撮影期間でしたね。
ーー監督は「ビールとポップコーンのあう」映画にしたいとおっしゃっていましたが、その点について、岡田さん自身はどうお考えですか?
撮影しているときを思い返すと「嘘だろ?」と思いますけど‥‥(笑) 。でも、やっぱりこの映画はエンターテインメント作品だと思います。そういう点で、そういう映画を目指すというか、そういう映画を作るんだという気概は、塚原監督の持っているものも含めて、なんとなくおっしゃっていることはもうわかる。
エンターテインメント作品の中にも、我々に渡されるもの、メッセージって映画の中にたくさんあると思うんです。それをビールとポップコーンを食べながら、重たく受け取らずに映画を観て、でも、みんなでちゃんと考えていかないといけない問題を渡される感じがします。僕が重たいものと捉えすぎているのかもしれないんですけどね。