キャラクターの二面性
ーー今回、演じた役柄はおふたりとも難しいキャラクターだったと思います。どう解釈して演じていこうと思いましたか?キャラクターの印象と役作りについてお聞かせください。
吉岡:今回、私は鯨井令子と鯨井Bと一人二役演じさせていただいています。アニメ版だと別々の声優さんで演じられているぐらい全然違うキャラクターです。ただ見た目が一緒。池田千尋監督の演出でもあるんですけど、鯨井令子は、レコぽんというあだ名のように、赤ちゃんみたいに記憶がない分、まっさらで全部を新鮮に受け止めるし、ある意味、感情というものをほとんど知らないみたいな状態。一方、鯨井Bの方は達観している。酸いも甘いも経験してきて、いろんな影があるし、いろんなレイヤーを持っている。だからこそ、その弱さを演じ分けられたらいいなと思っていました。
その上で原作漫画をとにかく熟読して、”このシーンのこの表情はめちゃくちゃ鯨井Bっぽい”とか、”これ令子の無垢な感じにすごくいいな”とか、漫画に描かれているキャラクターの表情を確認していました。キャラクターの原作の画の表情とかはすごく参考にさせていただきました。



水上:僕の中で、工藤発は”男のダメな部分を強調”したイメージです。格好はつけるけど、肝心なところで泣く。世間では、弱さを他人に見せずに、自分自身の中で昇華できるのが、本当のいい男だと思うんですけど、工藤のようにダメな部分がある方が、男ってそういうもんだよなって思えるんです。みんながみんないい男ではないし、男のダメな部分をどう表現できるか、痛みが溢れ出してしまうくらいの気持ちを大事にして、工藤と向き合いました。
あと、僕は大切な人を失った経験がないので、その痛み、感情を作るのには、かなりエネルギーを要しました。鯨井に「誰を見てるんですか?」って言われるシーンがあるんです。工藤は、鯨井が何を思って、その言葉を問いかけてきているか、もちろん分かっている。「お前を見ている」と言いたいんだけど、言えないみたいな。いろんな感情がぐちゃぐちゃになっている。工藤の考えていることは全くシンプルじゃなかった。”それが大人なのかな?人間ってそういうもんなのかな?”って思っています。


