琴平と磐音の想いを投げ合う名シーン、座長・松坂桃李との8年ぶりの共演
――琴平は剣の使い手という設定でしたよね。
殺陣師の諸鍛冶(裕太)さんの殺陣自体が、脚本を踏まえたうえでストーリー仕立てになっている感じなんですよ。だから動きに身を任せていれば自然と使い手のように見えると思ったので、自分から何かをするということはなかったんですけど、ただ、スピードとか具体的に当たってるように見せなくちゃいけないということは自分なりに考えて、ひたすら練習していました。動画を見て家で練習して、どんな状態であっても無心にシンプルに身体が動くようにするということは、ある意味、セリフを覚えることに通じていたりしますね。お芝居は殺陣に身を任せていればストーリーが進んでいくので。
――なるほど。
最後、俺が上段から行ってそれを桃李が受けるというやり取りを顔のカットバックで映してから、いよいよ桃李が俺を斬るというシーンは、どうせ打ち首になるなら磐音に斬られたいという琴平の想いと、親友を斬りたくないけど斬らないといけないという磐音の想いの投げ合いを表現しないといけない。諸鍛冶さんがそこをもう少し複雑な殺陣で表現していたんですけど、最終的には完成作のようにシンプルな形になりました。それだけ一振り一振りがセリフのやり取りみたいになっているんじゃないかなと思います。
――セリフが少ないのにお互いの想いが伝わってくるすごいシーンだったので、もう1回、観直したいです。そういうシーンを一緒に作った松坂さんとは久しぶりの共演でしたよね。
カンボジアに行った作品(2011年の『僕たちは世界を変えることができない。 but we wanna build a school in cambodia.』)以外だと、『ピース オブ ケイク』(15年)という作品で、実は同じシーンに出ていたりするんですけど、その時はセリフのやり取りがなかったので共演したという感じはなくて。だからガッツリ共演という意味では、本当に『僕たちは世界を変えることができない。』以来、8年ぶりくらいでしたね。
――その間、全く会ってなかったんですか?
役者仲間たちと桃李が食事しているところに俺が行ったりとかはありました。でも8年前、カンボジアに1カ月半くらい隔離されて(笑)、向井(理)くんと窪田(正孝)くんと桃李と俺で力を合わせないわけにいかないじゃないですか。異国の地でガッツリ濃密に過ごした1カ月半という時間があったので、久々に会ってもフラットだしそんなに緊張もしないし、この8年間、やっぱりずっと仲間という意識は強かったです。あと勝手にですけど、俺は桃李とはわりと仲が良いと思っているので、磐音と琴平の関係性は入り込みやすかったですね。
――8年ぶりのガッツリ共演で、松坂さんの印象が変化した点などはありましたか?
基本的には変わっていないです。でもこんなことを俺が言うと偉そうで、もちろんそんなつもりは全くないんですけど、変わった点と言えば頼れる主役の人だなと思ったこと。カンボジアに行った作品では、主演は向井くんで、他の3人は向井くんを支える立場だったんです。でも今回は現場での磐音の居方を見ていたら、あ、この背中についていけばいいんだって純粋に思えました。
――現場ではどんなことをお話されていたんですか?
内容のない話ばっかりしていました(笑)。でもこうして同世代の仲間と一緒に仕事をすることはとても楽しいし嬉しい気持ちになりますね。