佐伯泰英の長編ベストセラーシリーズ「居眠り磐音」が初めて映画化された。主人公・坂崎磐音の幼なじみにして親友の小林琴平は、プロローグの最重要パートを担い、その後もずっと磐音の心の拠り所となる大きな存在。そんな琴平を演じるのは『きみの鳥はうたえる』(18年)も高く評価された実力派の柄本佑。大の映画好きとしても知られる彼に、作品のことから多岐にわたる出演作選びのことまで聞いた。
時代劇映画の醍醐味、相手と“呼吸”を合わせる殺陣シーン
――脚本を読まれていかがでしたか?
時代劇に出るのも観るのも好きでして、楽しそうだなと思いながら脚本を読みました。前半30~40分くらいで琴平は死にますけど、そのことが基となって主人公が生きていくので、わりと重めなパートではあるのかなと思いましたね。あと、しっかりと殺陣が出てきますけど、今、時代劇で殺陣ができるのは本当に珍しいんですよ。この作品のような勧善懲悪ものよりも、例えば『引っ越し大名!』(19年)とか『殿、利息でござる!』(16年)とかの引っ越しやお金の事情などちょっと外したテーマのものが増えてきていて、それはそれで時代劇で面白いんですけど、僕は王道の時代劇があってこそのそういうサイドの物語だと思っていて。
――そう言われれば、本作は正統派時代劇と言えるのかもしれませんね。
出会いと別れがあって、その中に殺陣がある。いわゆる時代劇映画の醍醐味みたいなものがこの作品にはあると思いましたから、芝居部分と同じくらい殺陣も頑張らないといけないと思いました。
――壮絶な殺陣がありましたね。
これまでも殺陣は3~4回やっています。最初は高良健吾と一緒にやった映画『武士の献立』(13年)という作品で、健吾との殺陣が難しかったですね。撮影が進むにつれて徐々にうまくなっていくので、撮影が終わった時が一番うまいみたいな、最初から撮り直したいです、みたいな感覚だったことを覚えています(笑)。そんな反省もありつつ、その間に「雲霧仁左衛門」(13年)というドラマでも殺陣をやっているんですけど、その時は刀というより、素手や短刀などで戦う設定で。今回のような長い殺陣のシーンは相手が(松坂)桃李だったので、桃李との呼吸は合っていたように自分としては思っています。
――確かに相手との息を合わせることが重要になってきますよね。
ストーリー上、対峙してこの状態から攻撃するという意志を相手に合図して伝え合いながら作っていくので呼吸を合わせていかないといけない。そういった意味では桃李と俺でやったシーンはスムーズに進んでいったと思います。それは殺陣を覚えるということとは関係なく、桃李と俺の関係性でちゃんとできたのかなと思うので、あとは殺陣を覚えるだけという感じでした(笑)。
――殺陣はやはり振り付けを覚えるという感覚ですか?
そうですね。年がら年中、殺陣ばかりやっているわけではないので、時間はかかります。この作品では3~4日練習しましたけど、桃李は俺よりも殺陣のシーンが多かったですし、それに彼はウナギもさばかないといけないので(笑)、限られた時間の中で俺なんかより大変だったと思います。でも昔の時代劇に出演されていた方は、殺陣をすぐ覚えてしまうらしいですけどね。