映画は自分の生きた証
池ノ辺 平さんとHIKARI監督はほぼ同じ歳だそうですね。それで同じくらいの時期にアメリカに行ってるんですよね。その頃のアメリカは、すごく面白かったんじゃないですか。
平 確かにそうだったかもしれません。ただ、その頃僕は高校生で英語もできないでアメリカに行きましたから悶々としていました。ただ、異国に来たというのもあったし、面白かったことは面白かったですね。
池ノ辺 平さんは、それでまた日本に戻って会社勤めをされましたよね。
平 そうです。投資関連の会社に行って、最後はインターネットの立ち上げの仕事をしていました。
池ノ辺 そこから、なぜ役者になったんですか?
平 役者をやってみたかったんです。
池ノ辺 やってみたら面白くて、じゃあどうせならアメリカでやろうって思ったわけですか。
平 いや、楽しかったというより、面白かったんです。演技をやってみたら自分が出来なさすぎて、「なんでこんなに出来ないんだ」と思って。このままじゃやめられない、ここでやめるわけにはいかない、そう思ったんです。アメリカに行ったのは、ある映画のオーディションがあったからです。そのオーデションで主演の女優さんとお芝居をした時に、「あ、僕はこれがやりたかったんだ」と思っちゃったんです。

池ノ辺 それまでとは違っていたんですか。
平 全然違った。本当に、自分が言ったセリフが相手の感情を動かし、その動きが見えて、そこからセリフを返されてと、セリフのキャッチボール、感情のキャッチボールがそこで初めて出来た気がしたんです。それは基本的なことなんですけどね。
池ノ辺 そんな経験をしちゃったから、じゃあアメリカでやろうとなったわけですね。
平 そうですね。
池ノ辺 そうやってキャリアを積んで今に至るわけですけど、今や役者としてすごくいい位置にいていい仕事をされてますよね。
平 ありがとうございます。確かに、キャリアという意味では日本よりアメリカで積んでいます。この5年で15本くらいの作品をやっていますから。だから日本でやってた時よりキャリアを積んでいるという実感はあります。それは前に出た作品を観て、次のオファーが来たり、キャスティングされたり、あるいは単純にギャラが上がっていくということもあります。ただ矛盾しているようですけど、キャリアは積み重なってもなんの保証もない。だから仕事と仕事の間は何もなくてヒヤヒヤですよ。
池ノ辺 それはでも日本でも同じでしょう?
平 そうですけどね。でも日本だと、マネージャーさんがいて営業してくれるということがあるじゃないですか。アメリカではそれはなくて、オーディションに行って受かるか、オファーが来るかだけなんです。

池ノ辺 ご本人は不安でしょうけど、そういうキャリアの積み方なんですね。さて、最後になりましたが、平さんにとって映画ってなんですか。
平 映画は‥‥なんだろう。最近思うのは、のちに自分が生きていたことを思い出してもらえる術 (すべ) というか手段、証かな。
池ノ辺 それは観る人の側からということですね。
平 そうですね。それと演じる自分としても、例えば数年前に出演したものを、あらためて観て、あの時、自分はこう生きていた、こう感じていたと思い出すこともできる。そしてその映画が残っていけば、何年後かはわからないですが、誰かがそれを観て何か感じてもらえるものがあれば、嬉しいですね。
池ノ辺 この『レンタル・ファミリー』も、今と5年後10年後に観た時に、違った角度から心に刺さる、そういう作品だと思います。
平 ありがとうございます。
インタビュー / 池ノ辺直子
文・構成 / 佐々木尚絵
撮影 / 立松尚積
俳優
2008年に舞台『ジンギスカン』で主演を務め、同年にNHK大河ドラマ『篤姫』で徳川慶喜役を務めた。直近ではFXシリーズ「SHOGUN将軍」で真田広之、アンナ・サワイと共演し、批評家から高い評価を得た。この演技により、エミー賞®およびクリティクス・チョイス賞のドラマシリーズ優秀助演男優賞にノミネートされた。

東京で暮らす落ちぶれた俳優フィリップは、日本での生活に居心地の良さを感じながらも、本来の自分自身を見失いかけていた。そんな中“レンタル家族”として他人の人生の中で“仮の”役割を演じる仕事に出会い、想像もしなかった人生の一部を体験する。
監督、脚本 (共同):HIKARI
出演:ブレンダン・フレイザー、平岳大、山本真理、柄本明、ゴーマン シャノン 眞陽ほか
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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