Feb 13, 2026 interview

松本優作 監督が語る ミュージカルという“ジャンルの皮”をまとったヒューマンドラマ Netflix映画『This is I』

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ミュージカルの難しさ ミュージカルだから表現できること

池ノ辺 監督はこれまでもいろんな映画を作ってこられましたが、今回は、またちょっと違った形での表現ですね。ミュージカル的というか。こういう華やかなものもお好きなんですね。

松本 そうですね。もともとミュージカル映画は好きで、たくさん観てきました。ただ、まさか自分が作ることになるとは思っていませんでしたけど (笑)。とはいえ、映画で描きたいことの根本は、ずっと変わっていないと思っています。それをどうすれば、より多くの人に届けられるかを考えたとき、今回は表現手法としてミュージカルを選び、音楽を使って少しファンタジックな世界観で描いてみました。その点は、自分にとってもひとつの挑戦でした。

実は以前、LAを訪れた際に、『ディパーテッド』のプロデューサーとお話しする機会があったんです。そのときに、「作品を世界に届けるうえで一番大切なことは何か」を聞いてみました。すると、日本には素晴らしいヒューマンドラマがたくさんあるけれど、ヒューマンドラマは一言で面白さを伝えにくい。だからこそ、ジャンルという“皮”を被せることが大切だ、と。ホラーでもミュージカルでも何でもいい。その皮を剥がした先にヒューマンドラマがある、そういう描き方をしたほうが、観る人の間口は広がるんだ、と教えていただきました。今回の作品では、その言葉を意識して、ジャンルを掛け合わせるということを自分なりに試みています。

池ノ辺 実は私はちょっとミュージカルが苦手で、あの歌って踊るミュージカルシーンと他の芝居のギャップにちょっと引いてしまうところがあったんです。でも、この作品はそういう違和感がなくすんなりと入っていけました。しかもはるなさんが好きだった当時のアイドルの歌なんかもあって、すごく楽しかった。

松本 そこは一番意識して作った部分なので、そう言っていただけてすごく嬉しいです。日本でミュージカル映画がなかなか広がっていかない理由の一つに、お芝居のシーンとミュージカルのシーンが乖離してしまっている、分離して見えてしまう、という印象があると思っています。だからこそ今回は、できるだけシームレスにつながるように意識して作りました。セリフを話している流れの中から自然に歌が始まったり、歌の中でも登場人物の心情の変化がきちんと伝わるような曲や歌詞にしたりと、とにかくミュージカル部分とドラマ部分が分離して見えないことを、強く意識しています。

池ノ辺 全然違和感がなかったです。逆に、大好きな曲がたくさん出てくるので、一緒に歌っちゃったり (笑)。色合いもカラフルで素敵で、ワクワクするような楽しい映画でした。もちろんテーマとしては非常に難しいテーマではあるんだけれど、そこはきちんと描いているし、言葉がちょっと変かもしれないのだけれど、いろんな意味で「いやらしさ」がない。なんというか今どきの小学生みたいに、スコンと突き抜けていて、当たり前のようにいろんな子たちが普通に一緒にいる。そこが楽しく表現されていて、いいなと思いました。

松本 ありがとうございます。一番言ってほしかったことを言っていただきました (笑)。