Jan 16, 2026 interview

常廣丈太 監督が語る 劇場版『緊急取調室 THE FINAL』――“2年のブランク”を超えた再撮の舞台裏

A A
SHARE

映画からもらった救いや元気を、映画という形で世の中に返す

池ノ辺 こうして長年続いてきた「キントリ」が、今回でファイナルということですが、まだ終わらないですよね (笑)。

常廣 いや、もう終わりましょうよ (笑)。やっぱり一番いいとこで終わったほうがいいと思うんです。これで終わらなかったら詐欺ですよ (笑)。

池ノ辺 そうですか (笑)。

常廣 でも、この映画で終わらせるために、公開に合わせてテレビシリーズのシーズン5を追加で撮ったんです。これはもともと存在しない世界線、あのまま22年版で終わっていれば僕らはこれを知らないで終わっていたかもしれない。でも映画の公開延期でシーズン5ができた。井上先生と相談しながら、そこまでで拾えていない要素や未解決の部分を拾うとかができたので、この世界観の整理はできたと思います。さっきも言いましたけど、結局、いろいろあったけれど、悪いことばかりじゃなくて、お客さんにも新しいものを見てもらえたし、この2年半は決して無駄ではなかったと今は思います。

池ノ辺 そうですよね。ところで、テレビシリーズでは、ラブの要素もチラついていましたよね (笑)。

常廣 確かにテレビシリーズではそういう流れがありましたね。映画はご覧になって確かめて欲しいです (笑)。22年版ではもちろん想定していなかったんですけど、テレビシリーズをシーズン5まで見た上で今回の映画を観ると、モンタージュ論の発動で、有希子と梶山の間ではもうある程度気持ちの整理はついている状態として、2人の立ち位置を捉えてもらえるかなと。

池ノ辺 確かに、2人の間に信頼関係以上の深いものがあるような気がしました。本作も上映後には配信もされると思います。海外の人が観ても、面白いと思ってもらえると本当に思いました。

常廣 それは嬉しいです。

池ノ辺 それと、本作品では総理が登場しますが、上に立つ人の責任ということがうまく表現されていると思ったんです。

常廣 そこはテレビシリーズも含めて、表現したかったところです。でも世の中ってそういうことですよね。単純に、上に立つ人はしっかりしてくれよ、そうしたら俺たちもやる。隷属するわけじゃないけれどついていくからとね。上が腐っていると下も腐るんですよ。

池ノ辺 私はちゃんとやっているだろうかと我が身を振り返ってしまいました (笑)。

常廣 これは警察の話ですけど、学校でも一般企業でもそういうところはある。だから、上に立つ人に対して「いろいろ誘惑も多いだろうけど、まっすぐでいてね」と下は思っているよ、というところを、皆さんがそれぞれ自分たちに置き換えて観てくれると嬉しいです。

池ノ辺 それでは最後になりましたが、監督にとって映画って何ですか。

常廣 一番好きなものですね。そして映画にいろいろ救ってもらっているということもあります。がっくりきていた時に観た映画で元気が出ましたし、特に中学生の頃に観た映画で、今自分はここにいるという感じはあります。

池ノ辺 何の作品を中学の時に観たんですか。

常廣 大林宣彦さんの映画です。僕は大林さんのファンでしたから。それでもうすごく感動して「映画の仕事したい」と思って、今やっと映画にたどり着いたというところでです。

池ノ辺 じゃあ夢が叶っているんですね。



常廣 そうですね。

池ノ辺 監督が若い頃に観た映画で泣いたり笑ったり、そして元気が出たり勇気が出たりした。その監督の夢がこうして形になって、また観る人に勇気や元気を与えてくれる。それは素敵ですね。

常廣 ありがとうございます。そうなってると嬉しいなとは思ってます。

インタビュー / 池ノ辺直子
文・構成 / 佐々木尚絵
撮影 / 岡本英理

プロフィール
常廣丈太(つねひろ じょうた)

監督

愛媛県生まれ。1994年にテレビ朝日に入社。主な担当作品に、「緊急取調室」シリーズ(2014~2025)、「BG〜身辺警護人〜」シリーズ(2018・2020)、「dele」(2018)、「ハヤブサ消防団」(2023)、「Believe」(2024)。また、脚本・井上由美子とのタッグにより「緊急取調室」第4シーズンが、東京ドラマアウォード2022連続ドラマ部門優秀賞を受賞。

作品情報
劇場版『緊急取調室 THE FINAL』

超大型台風が連続発生し、国家を揺るがす非常事態の最中、内閣総理大臣・長内洋次郎は、災害対策会議に10分遅れて到着する。さらに、その「空白の10分」を糾弾する暴漢・森下弘道が現れ、総理大臣襲撃事件が発生する。警視庁は、森下の起こしたテロ事件を早急に解決するため、キントリの緊急招集を決定。真壁有希子らキントリチームは取調べを開始するが、森下は犯行動機を語らないどころか、取調室に総理大臣を連れて来い、と無謀な要求を繰り返す。森下の取調べが行き詰まる中、長内総理に“ある疑惑”が浮かび上がる。 有希子は真相解明のために総理大臣を事情聴取すべく動き出すが‥‥。

脚本:井上由美子

監督:常廣丈太

出演:天海祐希、田中哲司、速水もこみち、鈴木浩介、大倉孝二、塚地武雅、でんでん、小日向文世、佐々木蔵之介、石丸幹二

配給:東宝

©2025劇場版「緊急取調室 THE FINAL」製作委員会

公開中

公式サイト kintori-movie

池ノ辺直子

映像ディレクター。株式会社バカ・ザ・バッカ代表取締役社長
これまでに手がけた予告篇は、『ボディーガード』『フォレスト・ガンプ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー シリーズ』『マディソン郡の橋』『トップガン』『羊たちの沈黙』『博士と彼女のセオリー』『シェイプ・オブ・ウォーター』『ノマドランド』『哀れなるものたち』『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』ほか1100本以上。最新作は『レンタルファミリー』
著書に「映画は予告篇が面白い」(光文社刊)がある。 WOWOWプラス審議委員、 予告編上映カフェ「 Café WASUGAZEN」も運営もしている。
映画が大好きな業界の人たちと語り合う「映画は愛よ!!」記事一覧はこちら