超大型台風が連続発生し、国家を揺るがす非常事態の最中、内閣総理大臣・長内洋次郎 (石丸幹二) は、災害対策会議に10分遅れて到着する。さらに、その「空白の10分」を糾弾する暴漢・森下弘道 (佐々木蔵之介) が現れ、総理大臣襲撃事件が発生する。警視庁は、森下の起こしたテロ事件を早急に解決するため、キントリ緊急招集を決定。真壁有希子 (天海祐希) らキントリチームは取調べを開始するが、森下は犯行動機を語らない。取調べが行き詰まる中、長内総理に“ある疑惑”が浮かび上がり、真相解明のため、キントリチームは総理大臣の事情聴取を要求、チームの全てを懸けて前代未聞の取調べ、すなわち内閣総理大臣との最後の闘いに挑むーー。
2014年1月よりスタートした大ヒットドラマ「緊急取調室」。叩き上げの取調官・真壁有希子が、可視化設備の整った特別取調室で取調べを行う専門チーム「緊急事案対応取調班 (通称・キントリ) 」のメンバーとともに、数々の凶悪犯と一進一退の心理戦を繰り広げるこのドラマは大きな話題となり、人気シリーズとして不動の地位を確立してきた。今回の劇場版『緊急取調室 THE FINAL』では、テレビドラマシリーズと同じ常廣丈太による監督、井上由美子の脚本で、キントリチームをはじめとするドラマでお馴染みのメンバーが実力派俳優たちを相手に、フィナーレを迎える。
予告編制作会社バカ・ザ・バッカ代表の池ノ辺直子が映画大好きな業界の人たちと語り合う『映画は愛よ!』、今回は、劇場版『緊急取調室 THE FINAL』の常廣丈太監督に、本作品や映画への思いなどを伺いました。

2年のブランクを経て挑んだ再撮、そして公開へ
池ノ辺 劇場版『緊急取調室 THE FINAL』大ヒットおめでとうございます。今回はいろいろあって、2年間のブランクがありました。監督も大変だったと思いますし、スタッフや出演者の方々も同様だったと思います。その後の展開というのはどうだったんですか。キントリの皆さんたちのように「やってやろうじゃないの」という感じだったんでしょうか。
常廣 最初は、やっぱり心持ちとしてはそっちの風向きじゃなかったですよね。ただ、実際のところ「作って完成体がある限りは」というか、昔、黒澤明さんもおっしゃってましたけど、「資本家は必ず回収を図るはずなのだ」と‥‥。
池ノ辺 そうですね。
常廣 ええ。だから、こんな大企業 (配給) が、よもやこのまま「無しよ」ということにはならないだろうというのは思っていました。でも、じゃあそれがどんな手段で、どんな方法論で表に出すのか、というのは、その時は全然見えていなかったですね。実際、撮り直してということになると、単純に考えても6割は撮り直すことになるだろうと。
池ノ辺 6割は大きいですね。
常廣 総理役の実際のスクリーンタイムと、自身は出ていなくても役のデータが画面に出ているとか、話している部分だとか、写り込んだ写真のある雑誌の寄りだとか、まあその辺も全部撮り直していかなきゃいけないってことになると、これはそれ相応にかなりの分量をやり直さないといけないし、大がかりだったところも当然もう一回やらなきゃいけないっていうことになるので、そこの帳尻を合わせるのが、まず第一段階として大変でした。

池ノ辺 天海祐希さんはじめとするキャストの皆さんはどうだったんですか。
常廣 それこそ天海さんが「このままでは終われない」とおっしゃっていたように、「やるならもう1回ちゃんとやろう」と皆さんから言っていただけたので、幸いでしたね。ただ、結局キャラクターというのは、出ているキャストの方に依拠しているというか、そのキャストを想定して演じる部分、想定して出てくるセリフというものがあります。「じゃあこれを別の方に出ていただいて、同じようにやってください」って言えるわけもないし、そこは一緒にはならないじゃないですか。
池ノ辺 そもそもできないですよね。
常廣 新しくキャストが決まったとして、来ていただくからには、その方に合わせてある程度はリライトしなければ、来てくださる方にも失礼ですし、おそらくうまくいかないだろうと。実際にキャスティングをどうしようかといろいろ相談して、石丸幹二さんから快諾いただいたわけですが、やはり元々の脚本での描かれ方とは違うんですよね。石丸さんが出演されているドラマや映画作品をみても、キャラクターが全く違うベクトルを向いていた。

池ノ辺 確かにそうですね。
常廣 22年の撮影版はその俳優の雰囲気とか持っているもので乗り切っていたところも多分にありましたからね。だからそのままだと同じようにはならない、同じキャラクターにはならないんですよ。それで脚本の井上先生とお話しながら、皆で組み立て直していきました。キャラクターも、“ 最初から「この人は何か企んでるんじゃないの?」という人”よりは、“「めちゃめちゃ頑張っているんだけど、ただ一点黒いシミが」みたいな人” 、で、“ 本人もそのシミを知ってるから消そうとゴシゴシゴシゴシやるんだけど、絶対消えないよね、これ、みたいな人” にするのはどうでしょう、ということで、今のかたちになったんです。
池ノ辺 そうなんですよね。今回は再撮影って聞いていたし、本品を拝見した時は22年版と全く印象がちがったので、「ええっ? 22年版もこんな内容だった?」って思ったくらいです(笑)。
常廣 それくらい変わっていると思います (笑)。もちろん再編集もしているし、尺調整も全部やり直して、前の素材も使っていても色合いや (トーンを整える) グレーディングも変えています。音楽も、半分くらいは林ゆうきさんに新しく書いてもらいました。この際だから、足りていない部分は全部埋め直そうということになったので、結果的には、同じ話なのに違うものになったんじゃないかなと思います。
池ノ辺 何でもそうですけど、途中からやり直すというのは、ゼロから始めるよりどれだけ大変か。ものすごい労力がかかったんじゃないかと思うんですが。
常廣 説明する時も、「ここはやり直して、この後は前のまんまにつながるんで」みたいな説明をしなきゃいけない。「部屋に入る前までは前のですが、部屋入ったら新しいやつです」とかね (笑)。
池ノ辺 そういうところは、全然わからなかったですよ。
常廣 カット単位で22年版の画だけ使っていたり、切り返しだけ22年版だったりとかはあります。
池ノ辺 スタッフさんも大変でしたね。
常廣 みんなで映像を再生しながら、「前こうだったな」と確認しながらの再撮影でした。






