Nov 14, 2025 interview

土井裕泰 監督が語る  “普通の人生”を映画にするという挑戦 大人の恋と静かな感動を描いた『平場の月』

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「映画とは何か」を立ち止まって考える

池ノ辺 監督には、前作『片思い世界』(2025) の時にいろいろお話を伺いました。その後、映画に対する思いに何か変化はありましたか。

土井 前回は半年くらい前のことですから、そんなに変わってはいないです。僕はドラマも映画もやっていますけど、最近は配信というのも一つの主流になってきてます。つまりコンテンツの種類が増えてきているわけですが、そういう中で、映画ってなんだろう、映画ならではの表現ってどんなものだろう、そういったことをもう一度ちょっと立ち止まって考えたいなというふうに今は思っています。劇場で、あの大きなスクリーンと向き合う、そのことの意味を今一度自分の中で確認したいという気持ちになっています。

池ノ辺 答えは見えそうですか。

土井 おそらくそれは、やっていく中で見えてくるものなんでしょうね。『平場の月』はこれから公開されて、劇場でかかって、いろんな人が観てくださって、意見や感想を持ってくれる。自分も自分の映画はなるべくいろんな場所のいろんな劇場で観ようと思っているんですが、そういう中で改めて感じられることかなと思っています。

池ノ辺 劇場だと、お客さんの表情が直に伝わりますよね。

土井 観終わって出てくる時に、皆さんがどんな顔をしているのか、それはちょっと楽しみです。

池ノ辺 前回も伺ったんですが、監督にとって映画って何ですか。

土井 前にも言ったことですが、やはり映画は観た人にとって、体験として残るものだと思っています。誰かの人生の何かのきっかけになるような、そんなものをこの先ひとつでも作れたらという思いはあります。

池ノ辺 ありがとうございました。次の作品も楽しみにしています。

インタビュー / 池ノ辺直子
文・構成 / 佐々木尚絵
撮影 / 岡本英理

プロフィール
土井裕泰(どい のぶひろ)

監督

早稲田大学卒業後、1988年にTBS入社。「愛してると言ってくれ」(1995)、「青い鳥」(1997)、「Beautiful Life」(2000)、「GOOD LUCK」(2003)等、数々のヒットドラマを手掛ける。2004年に『いま、会いにゆきます』で映画監督デビュー。以降、コンスタントにテレビドラマ、映画それぞれで話題作を手掛け、『罪の声』(2020)では第45回報知映画賞作品賞、第44回日本アカデミー賞優秀監督賞、優秀作品賞などを受賞し高く評価を集める。『花束みたいな恋をした』(2021)では、一組の男女の出会いから別れまでの5年間を丁寧に描き、興行収入38億円を突破する社会現象となった。 2025年は『罪の声』で組んだ野木亜紀子のオリジナル脚本による新春スペシャルドラマ「スロウトレイン」、『花束みたいな恋をした』以来となる脚本家・坂元裕二とのタッグ作『片思い世界』と話題作を手掛けている。 

作品情報
映画『平場の月』

妻と別れ、地元に戻って印刷会社に再就職し、慎ましく、平穏に日々を生活する、主人公・青砥健将。その青砥が中学生時代に想いを寄せていた須藤葉子は、夫と死別し今はパートで生計を立てている。お互いに独り身となり、様々な人生経験を積んだ2人は意気投合し、中学生以来、離れていた時を埋めていく。再び、自然に惹かれ合うようになった2人。やがて未来のことも話すようになるのだが‥‥。

監督:土井裕泰

原作:朝倉かすみ「平場の月」(光文社文庫)

出演:堺雅人、井川遥、中村ゆり、でんでん、吉瀬美智子、宇野祥平、吉岡睦雄、
坂元愛登、一色香澄、大森南朋

配給:東宝

©2025映画「平場の月」製作委員会

公開中

公式サイト hirabanotsuki

池ノ辺直子

映像ディレクター。株式会社バカ・ザ・バッカ代表取締役社長
これまでに手がけた予告篇は、『ボディーガード』『フォレスト・ガンプ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー シリーズ』『マディソン郡の橋』『トップガン』『羊たちの沈黙』『博士と彼女のセオリー』『シェイプ・オブ・ウォーター』『ノマドランド』『哀れなるものたち』『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』ほか1100本以上。最新作は『レンタルファミリー』
著書に「映画は予告篇が面白い」(光文社刊)がある。 WOWOWプラス審議委員、 予告編上映カフェ「 Café WASUGAZEN」も運営もしている。
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