Oct 24, 2025 interview

俳優・小田井涼平&映画コメンテーターLiLiCoが語る “崖っぷち”の先に見えるふたりのかたち。『ローズ家〜崖っぷちの夫婦〜』のリアリティ

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映画の中の、怖くてリアルな夫婦の関係

池ノ辺 では、映画本編の話を。試写を観ていかがでした?

LiLiCo まず、こんなに演技派の役者の二人がこういう役をやるっていうのが、ちょっと意外だったんですよ。だから最初、この二人が夫婦であるということを受け止めるのにちょっと時間がかかりました。二人とも素晴らしすぎるくらいの役者ですからね。でも結論から言えば、本当にバカなこと、あり得ないことがいっぱい起こって突拍子もないストーリーなんだけど、ものすごいリアルさがその裏にある。さっき話したような、女性の方が成功すると何かが壊れるというような話とかね。大変な目にあって戻ってきて、「どうだった」と聞かれても、「大丈夫だよ」と言ってしまう、全然大丈夫じゃないのに。ちゃんと言ってくれたら助けたのよって私も思った。これ日本人の脚本家かしらと思ったくらい、日本では “あるある” な話ですよ。素晴らしい役者が出て、あのラストはなかなか斬新。今まで見たことないかもしれない映画でした。

池ノ辺 あのラストにはびっくりしますよね。

LiLiCo びっくりしました。だからあんなことが起きない様に、家では彼を抱きしめてあげたいなと思って、この間「おかえり〜」って抱きしめたら「はいはいはい、汗かいてるから」って避ける。汗かいててもいいのよ。

小田井 だって汗でびちょびちょやって。

LiLiCo 映画の中でも「ハグしなくなっちゃったから」っていうセリフありましたよね。ハグってすごく大事なんですよ。ハグしてくれたらなんとか立て直せるみたいな。だからハグされたら嬉しいよねと思って。

池ノ辺 それは小田井さんを喜ばそうとしてってことですよね。

小田井 僕もそれは気づいてますよ。ただね、本当に汗でびちょびちょだったんで、若干の距離を置いたんです (笑) 。

池ノ辺 小田井さんはこの映画を観てどう感じましたか。

小田井 僕は、逆に旦那さん のテオ (ベネディクト・カンバーバッチ) の仕事がずっとうまくいったままだったらどうなったんだろうと想像したんです。そうすると、この二人の場合、旦那さんが成功し続ける方が、破綻が早かったんじゃないかと思う部分もある。彼って、成功するとどんどん天狗になっちゃうようなキャラクターなんじゃないか、そうしたらもっと悲惨なことになってたんじゃないかって。だから神様がそうなる前に鼻をへし折ってくれたのかなと。子育てとかみてもこだわりの強い人でしたからね。

LiLiCo そういう意味では奥さんのアイヴィ (オリヴィア・コールマン) も同じよね。どっちも鼻をへし折られている。でも今の時代だから、こうやって女性が成功していくというのもありえる話。あのレストランに行きたいと思いましたもん。

池ノ辺 映画の中の二人は売れてない頃に知り合ったから成功への嫉妬が発生しましたけど、お二人はどうなんですか。

小田井 うちの場合は、そもそも出会った時に僕の方はまだ下積み状態でしたけど、LiLiCoは地位が既に確立されていました。それに対して僕が嫉妬しないのは、最初からその状態でスタートして、そこを理解した上で付き合っているから。だからたとえばLiLiCoが何かで成功しても別にLiLiCoに対して嫉妬とか悔しいという気持ちはない。もし悔しいという思いがあるとすれば、それは奥さんに向けてじゃなくて自分自身ですね。自分ももっと頑張らなきゃというのはあるかもしれないけど、あいつばっかり成功しやがってというのはないです (笑) 。

池ノ辺 LiLiCoさんの人柄を好きになったということですよね。

小田井 きっかけがテレビで、芸能人同士が現場で知り合って、いろいろ話すうちに僕が好きになってというパターンですから、大恋愛でという始まりではないです。

池ノ辺 こうおっしゃっていますけど。

LiLiCo それはもちろん私も理解してます。出会いが、テレビ番組で「純烈の中で誰がタイプか教えてください」と言われて、当時私は純烈のことをまったく知らなかったのでスタジオでものすごく困って焦ってたんです。でも、その中で彼の顔を見て、なんとなく縁があるなと思ったのは「わー、かっこいい!」とかじゃなくてフィーリングですよね。この人とは仲良くなれそう、みたいな。そういう中で、彼とは絶対仲良くなりそう、結婚しそうだなというくらいのことを感じたんです。大恋愛というよりそんな感じだったから、そのまま楽しく一緒にいられるのかもしれませんね。もちろん嫌になることもあるけど、基本的にはこの人と結婚してよかったなと思う時がたくさんあります。それってくだらない瞬間だったりするんですけど、そのくだらなさを一緒に笑えるっているのがいいと思っています。