こだわりぬいた「かわいい」が生まれる源泉
池ノ辺 マイメロディは優しい感じ、クロミは意思のはっきりした感じがきちんと表現されていますよね。キャラクターの違いというのはどんなふうに演じ分けていったんですか。
見里 確かにマイメロディとクロミって正反対のキャラクターですよね。マイメロディはのんびりしていて、走ったらすぐ疲れたりしそうな (笑) 。一方のクロミは、ハキハキして動きもテキパキした感じ。感情もはっきりしていて、その分コミカルな動きもしやすいです。ストップモーションでは、意外にゆっくりした動きの方が難しかったりするんです。具体的な段取りとしては、最初は僕が自分で彼女たちを動かしてテスト動画を作り、それをアニメーターたちにも見てもらって共有してもらいました。

池ノ辺 動きがとにかくかわいくて。それにマイメロディとクロミがとにかくかわいい。
見里 素材は主に羊毛フェルトを使っています。
池ノ辺 モフモフですよね (笑) 。
見里 モフモフな感じですね (笑) 。マリーランドにいるキャラクターは、ほとんどが動物をモチーフにしているので、羊毛フェルトという素材がマッチすると思いました。さらに、マイメロディとクロミはずきんをかぶっていて、その動きが喜怒哀楽を表現する場合も多いんです。耳がボヨンボヨンに動いたり、驚いて頭が縦に伸びたりするような描写を入れたかったので、あえてそこは柔らかく動かせるシリコンを使いました。
池ノ辺 しっかりと素材の使い分けがされているんですね。
見里 シリコンという素材は、個人的には今回初めて使ってみたので、その開発には苦労しました。同じシリコンとはいっても、マイメロディのずきんは布でできていると思われるので、表面の質感を布にしました。一方のクロミは、どちらかというとずきんもツルッとしたイメージなのであえてその滑らかな質感を生かして、違いを出しています。あと、クロミのずきんの真ん中についているドクロ、あれはクロミの感情にシンクロしていて、ドクロの表情も変わっているんですよ。
池ノ辺 そこには気がつかなかった (笑) 。
見里 とにかくファンの方に納得していただけるキャラクターアニメーションにしたいという思いで、こだわりを貫きました。

池ノ辺 全体の色味も、色彩豊かで素敵でした。
見里 マリーランドの世界観をつくるにあたっては、サンリオさんの機関紙「いちご新聞」で不定期連載中の「マリーランドストーリー」や、公式のアートブックなども参考にさせていただきました。あのグラフィカルなビジュアル、シンプルな見た目が個人的にはすごく魅力的だったので、その良さを活かしたいと思いました。それと同時に、ストップモーションという技法で撮影する際に、この技法のアナログな魅力を最大限、活かすかたちで、ちゃんと手に取って触れられるような“かわいい”を目指したいと思ったんです。ですから、キャラクターだけじゃなくてマリーランドにある葉っぱとかお花などの小物もマットな質感で表現しました。木の幹なども、よく見ると表面が布でできていたりするんですよ。他にも、例えば噴水の水はビーズでできていたりとか‥‥。
池ノ辺 そう、ものすごい表現力だなと思いました(笑)。
見里 雨の雫や涙、汗などは、レジン液で作ったりしています。とにかく手作りでかわいいという要素にこだわりました。
池ノ辺 ストップモーションアニメだからこその表現ですね。
見里 そうだと思います。
池ノ辺 マリーランドの世界を体現するのに最適な素材を使ってみたら、布製の木の幹だったり、ビーズの噴水だったということですね。
見里 もちろんそこはファンシーな世界ではあるのだけれど、ビーズとか布とか羊毛フェルトとかあえて身近な素材を使うことで、親近感を覚えるのと同時にある種のリアリティも感じてもらえるのではないかと思うんです。それが見てくださる人にとって、また別の“かわいい”につながるんじゃないでしょうか。



