映画の大好きな人が集まって映画を作る喜び
池ノ辺 唯さんはこのまま将来も女優さんでやっていくんですか。
鈴木 はい。理想としては、50歳くらいまでは続けたいです。
池ノ辺 50歳?もっと続けてくださいよ(笑)。
鈴木 でも50歳くらいになると、体が辛くなってきて大変だと思うので、その辺りでやめていると思うんです。そのあとは、それまでに貯めたお金で日本一周したり、神社参拝したり楽しい余生を過ごしたいと思っています。あとは、私は猫がすごく好きで、保護猫活動とかもしてみたいんです。石田さんも保護犬活動をしていると聞いたんですけど、私は保護猫活動をして保護猫カフェを開きたいという夢があります。だからそのためにも頑張ってお金を貯金したいなと思っています。

池ノ辺 夢に向かって進んでいくのはいいですよね。今回、監督が小さな頃からあたためていたものがこういう形で作品になって、これから世に出ていきますけど、どういう思いですか。
早川 やっぱり嬉しいです。あの当時、映画を観て、自分が言語化できない私の気持ちをこの映画は描いてくれている、そういう映画に出会った時の嬉しさ。この映画を作った人と自分は繋がっている、自分の気持ちが理解されていると思った時の喜び。そうしたことが重なって自分はどんどん映画にのめり込んでいったんです。ですから、この映画が誰かにとって、特にフキと同じくらいの歳の子どもたちにとって、「この映画は私の気持ちをわかってくれている」と思えるものになったらそれは本当に嬉しいですね。
池ノ辺 小さい子だけでなく大人になった人たちもそう感じると思います。子どもの頃にわからなかったこと、どうしてこうなんだろうと思っていたことを、フキちゃんが確かに表現してくれていました。
早川 ありがとうございます。

池ノ辺 では最後の質問です。唯さんにとって映画ってなんですか。
鈴木 私にとっての映画は、監督が想像して脚本家が脚本を書いて、役者が演技をして、それをカメラマンが撮って完成して、それをいろんな人たちが観て、その人たちの心に思い出として残る映像、そういうものだと思います。
池ノ辺 今回は唯さんが演じて、観る人の心に残るものを作ってくれましたね。
鈴木 映画は、裏では沢山の人たちが関わっていて、そのうちの一人でも欠けると完成しないので、自分だけじゃなくていろんな人たちの協力があって映画というものは存在するんだと思いました。
池ノ辺 では、監督にとって映画ってなんですか。
早川 映画は観るのも作るのも楽しいものです。今回も、とにかく映画が好きという人たちが集まって作りました。
池ノ辺 では、次回の作品も映画が好きな人たちが集まって、さらに素敵な映画ができることを期待しています。
インタビュー / 池ノ辺直子
文・構成 / 佐々木尚絵
撮影 / 岡本英理
監督・脚本
短編『ナイアガラ』が2014年第67回カンヌ国際映画祭シネフォンダシオン部門入選、ぴあフィルムフェスティバル グランプリ受賞。2018年、是枝裕和監督総合監修のオムニバス映画『十年 Ten Years Japan』の一編の監督・脚本を手がける。その短編から物語を再構築した初の長編映画『PLAN 75』(22)で、第75回カンヌ国際映画祭カメラドール(新人監督)特別賞を受賞し、輝かしい才能が世界から注目されている。
俳優
2013年生まれ、埼玉県出身。『ふれる』(24/高田恭輔監督)で映画初出演にして初主演し、期待の演技派俳優として注目されている。主な出演作は、『ここで吸っちゃダメ!』(24・短編/山口景伍監督)、『3月11日』(24/遠藤百華監督)、『少年と犬』(25/瀬々敬久監督)がある。

1980年代後半のある夏。11歳のフキは、両親と3人で郊外の家に暮らしている。ときには大人たちを戸惑わせるほどの豊かな感受性をもつ彼女は、得意の想像力を膨らませながら、自由気ままに過ごしていた。ときどき垣間見る大人の世界は、刺激的だけどなんだか滑稽で、フキは楽しくて仕方ない。だが、闘病中の父と、仕事に追われる母との間にはいつしか大きな溝が生まれていき、フキの日常も否応なしに揺らいでいく。
脚本・監督:早川千絵
出演:鈴木唯、石田ひかり、中島歩、河合優実、坂東龍汰、リリー・フランキー
配給:ハピネットファントム・スタジオ
©2024『RENOIR』製作委員会/Ici et Là Productions/ARTE France Cinema/Akanga Film Asia/ Nathan Studios/KawanKawan Media/Daluyong Studios
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