Jun 23, 2025 interview

早川千絵 監督&主演・鈴木唯が語る 感受性という海を、ひとりで泳ぎきった少女の物語『ルノワール』

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「フキ」が世界を魅了する

池ノ辺 この作品を拝見して、役者の方々の演技ももちろん素晴らしいんですが、監督の編集も素晴らしかったですね。観ている側が、「次はこうなるだろう」というところがバサッと切られている感じで、それがあたかも、「その先はあなたが感じて想像して」と言われているような気がしたんです。ギリギリでバランスを保ちながらの奥が深い編集だと思いました。

早川 フランスで編集作業をしたんですが、最初の段階では2時間45分あったので、だいぶ長く時間をかけて削っていきました。

鈴木 中身はほとんど台本通りですよね。

早川 そう。でも順番はだいぶ変わっていて。

池ノ辺 ラストも変わったそうですね。唯さんは出来上がったものを観てどうでしたか。

鈴木 台本通りではなかったけど、台本の結末もよかったし、新しい方の結末もよかった。

池ノ辺 本当、いいラストでしたよね。監督はかなり悩んだんじゃないかなと思ったんですけど。

早川 すごく悩みました。

鈴木 せっかく船で撮ったシーンを全部切るのかな、頑張ったのにな、と思っていたので、残してくれていたのはうれしかったです。

早川 あれはいいシーンだったから。唯ちゃん、あの船では何回も踊ったよね。みんなで踊るのを何度も何度も撮らせてもらって、すごいテイクだったよね。

鈴木 10回くらい?最後の方は、息切れしながらでした(笑)、でも夕陽がすごくきれいでした。

池ノ辺 いい表情でしたよ。

早川 そうなんです。すごくいい表情で、それを見て撮影しながら泣きそうになっていました。あのシーンを撮っている時の感動はすごかったですね。スタッフもキャストもほとんどみんな海外の人たちで、その中に唯ちゃんが一人でポンと入って。誰かに振り付けを教わったわけではないのに、音楽が流れているなかで堂々と踊っていて、本当に素敵でした。

池ノ辺 作品が完成して、カンヌ国際映画祭にも行きましたよね。コンペティション部門に出品されていました。どうでした?

早川 もう、唯ちゃんが輝いていましたね。本当に世界の人を魅了するってこういうことかと実感しました。それはフランスでポスプロをしている時から感じていたんです。その時すでに、観た人が、彼女は素晴らしいと言ってくれていたので、この先もっと多くの観客に出会った時には、この魅力はもっと伝わるだろうなと思っていました。事実、みんな「フキ」を大好きになってくれましたね。

池ノ辺 唯さんはカンヌはどうでしたか。

鈴木 最初はなかなか慣れなかったんですけど、カンヌってすごくきれいな場所で、すごく楽しくて良い思い出になりました。

早川 カンヌの街並みを見て、「『魔女の宅急便』の世界みたい」って言ってたよね。

鈴木 本当にそうで、「あそこに空を飛んでいるキキちゃんが見えるような‥‥」「あ、あそこはあのシーンの場所だ」「あれはあのシーン」と思い浮かんだんです。

早川 すごく純粋に感動しているのを、私も横で感じていて、楽しかったですね。レッドカーペットも楽しかったよね、昼間の天気がいい時だったし。

鈴木 想像以上に人がたくさんいて、慣れなかったけれどとてもいい経験でした。

早川 唯ちゃんはすごくリラックスしているように見えたけど?

鈴木 緊張はしませんでした。とにかく楽しかったです (笑) 。