アイルランド西部の小さな島(トンガリ島)に暮らすパフィン(ニシツノメドリ)の女の子ウーナと弟のババ、仲間の動物たちが繰り広げる冒険と、友情の物語。ある日、大きな嵐によって故郷を失った動物たちがトンガリ島に逃れてくる。パフィンの仲間の鳥であるエトピリカのイザベルもそのひとり。彼女は新しい環境になじめず、なかなか友達を作ることができない。それでもみんなに認めてもらいたくて、イザベルが誰にも相談せずにしたことが、思いもかけない結果を招いてしまう。ウーナたちは、イザベルを、仲間を助けることができるのか。
本作は、アカデミー長編アニメ賞に4度ノミネートされたアイルランドのスタジオ、カートゥーン・サルーンが、幼い子どもたちのために製作した人気テレビシリーズをもとに、長編映画化した作品。監督は、スタジオの設立者であり数々のアニメーション映画を手掛けてきたトム・ムーアにより、スタジオ設立当初から特殊効果スーパーバイザーとして活躍してきたジェレミー・パーセルに委ねられた。
予告編制作会社バカ・ザ・バッカ代表の池ノ辺直子が映画大好きな業界の人たちと語り合う『映画は愛よ!』、今回は、『パフィンの小さな島』のジェレミー・パーセル監督とロレイン・ローダン助監督に、本作品や映画への思いなどを伺いました。

2Dアニメーションがみせる自由で豊かな世界
池ノ辺 世の中のアニメの主流は3Dですが、お二人の作品は2Dで制作されています。それがすごく温かみがあって、日本の折り紙にも通じるような感じがしました。あえて2Dにしたのはなぜですか。
パーセル この映画は、もともとトム・ムーアのアイデアから始まっています。ちょうど彼が監督した『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』(2014) を作っていた頃です。週末に海に行ったらアザラシやパフィンを目にして、そこでこういう世界のアニメを作ったらどうかと思ったそうです。そしてこのルックについては、仲間の一人リリー・バーナードが思いついたものです。1980年代に作られたコンピューターゲーム「スーパーマリオブラザーズ」とか「ゼルダの伝説」などから発想を得たようです。フラッシュを使った映像世界で、カメラがズームインしたりして動くんじゃなくて、フラットな世界です。
池ノ辺 先にテレビシリーズを作られたんですよね。そこからすでに2Dだったと。
パーセル そうです。映画を作る場合も、そういうルックを継承したいと思ったんです。カメラが派手に動き回らないので、キャラクターたちは落ち着いて自分たちの表現したいことを表現している。そういう自由を彼らに与えているのです。
池ノ辺 キャラクターたちの演技はどのように決めていったんですか。
パーセル たとえば私とロレインとの間で実際に掛け合いをして、ここではこういうふうに体を動かしてという演技をして見せて、それをアニメーターたちが形にしていく、そんな感じです。






ローダン 私たちはとにかく一緒に創り上げるということを大事にしています。ですからテレビシリーズの世界観をどのように表現するか、そしてそれを映画でどう実現するか、そうしたこともいろいろ話し合いました。アニメーターたち、つまり現場で実際に手を動かしている人たちの意見も聞きますし、監督と助監督の間でもよく話をしてコミュニケーションをとって、とにかく共同作業で創り上げていくのが私たちのやり方です。
池ノ辺 実際に2Dの映像はどのように作っていったんでしょうか。
ローダン 私たちはアニメーションの作成にMoho(モーホー)というソフトを使っています。これはテレビシリーズからで、スタジオの他の長編アニメでも使っています。非常に複雑なキャラクターのビジョン、イメージなどをどううまく動かすか、その解決策を求めていたときに、ジェレミーから、このMohoというソフトはどうだろうかと提案されたんです。

池ノ辺 このソフトは何が良かったんですか。
パーセル このソフトでは、一人ひとりのキャラクターについて、リグを持ったモデル (パペットのようなもの)を作ります。その基本形をグラフィックとして設定しておくと、アングル全部を個々に描かなくても、このアングルだったらこうなると、ソフトがやってくれるんです。たとえば3Dだと360度、全部ですが、2Dも設定してできるということです。
ローダン 折り紙のように見えるというのも、そのせいかもしれないですね。
