映画で生まれて映画で育つ
池ノ辺 監督にとって映画ってなんですか。
古川 生きるための手段でしょうか。

池ノ辺 それは大好きだから?
古川 というか、社会生活をこれしか知らないので、これ以外やることがわからない、ということです。映画で生まれて映画で育っちゃったので。僕は、この業界の1本目の助監督作品が、『釣りバカ日誌』(1988〜) という、松竹の巨大な国民的映画でした。その後、三池崇史、滝田洋二郎、犬童一心といった人たちの下で、助監督として働いてきました。覚悟を決めて、脚本をずっと書き続けたのは、瀧本智行という人間に「脚本、書け書け」と毎日のように言われたからで、当の本人は書いた結果、とんでもない本数を撮る監督になっている。滝田洋二郎の生き様を見て、三池崇史の背中を見て、監督としての生き様を学んできたんです。犬童さん以外は全員 “助監督の星” なので、助監督から上がっていくということは脚本を書けないとダメなんだということもわかっている。
もちろん、いろんな映像媒体は全てやってみたいと思って、スタッフとしてCMにも帯同したし、ミュージックビデオ、テレビ連ドラも行きましたけれども、結果、映画で生まれて映画監督たちに育てられちゃったんですよ。そうやって今、ここに来て1本となった時に、2時間という枠組みの中でどれだけ濃いものを見せられるかというところに、ただただ注力したということだと思っています。そうしたいと望んでやったというよりは、それしか知らなかったということです。
池ノ辺 その生き様が今回のこの映画として、育って、形として出来上がったということですね。
インタビュー / 池ノ辺直子
文・構成 / 佐々木尚絵
撮影 / 岡本英理
監督
1976年生まれ、京都府出身。松竹シナリオ研究所卒業。2003年、名取裕子主演の「早乙女千春の添乗報告書 14奥飛騨・下呂湯けむりツアー殺人事件」に制作進行見習いとして参加。翌年、『釣りバカ日誌15 ハマちゃんに明日はない!?』(04)でフリー助監督に転身、『ゼブラーマン』シリーズ(03・10)、『おくりびと』(08) 、『東京リベンジャーズ』シリーズ(21・23)など数々の作品に帯同する。2010年、オムニバスショートフィルム『dance?』で監督デビュー。TVドラマやショートフィルム、SUPER BEAVERのMVなどの演出・脚本・監督を経て、本作が劇場用長編映画の監督第1作となる。
俳優・アーティスト
1983年生まれ、京都府出身。SUPER EIGHTのメンバー。2004年、シングル「浪花いろは節」でCDデビュー。歌手、ベーシスト、俳優として活躍。2011年、「ギルバート・グレイプ」で舞台初主演。同年、『ワイルド7』で映画初出演。2012年、「O-PARTS~オーパーツ~」でTVドラマ単独初主演。同年、「ボーイズ・オン・ザ・ラン」で連続ドラマ初主演。2017年、『泥棒役者』で映画単独初主演を果たす。主な出演作は、「フリーター、家を買う。」(10)、「ストロベリーナイト」(12)とその映画化(13)、『エイトレンジャー』シリーズ(12・14)、「泣くな、はらちゃん」(13)、「地獄先生ぬ~べ~」(14)、『円卓 こっこ、ひと夏のイマジン』(14)、「誘拐法廷~セブンデイズ~」(18)、「よつば銀行 原島浩美がモノ申す!~この女に賭けろ~」(19)、「大江戸グレートジャーニー ~ザ・お伊勢参り~」(20)、「着飾る恋には理由があって」(21)など。舞台では、ブロードウェイミュージカル「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」(22)、「浪人街」(25)などに出演。

刑務所や拘置所に収容された人への差入を代行する「差入屋」。 金子真司は一家で「差入店」を営んでいた。ある日、息子の幼馴染の女の子が殺害される凄惨な事件が発生。彼女の死にショックを受ける一家だったが、犯人の母親が差入をしたいと尋ねてくる。 差入屋として犯人と向き合いながらも、日に日に疑問と怒りが募る金子。そんな時、毎日のように拘置所を訪れる女子高生と出会う。 彼女はなぜか自分の母親を殺した男との面会を求めていた。2つの事件の謎と向き合ううちに、金子の過去が周囲に露となり、 家族の絆を揺るがしていく。
監督・脚本:古川豪
出演:丸山隆平、真木よう子、三浦綺羅、川口真奈、北村匠海、村川絵梨、甲本雅裕、根岸季衣、岸谷五朗、名取裕子、寺尾聰
配給:ショウゲート
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