互いの敬意の上に成り立ったJR東日本の特別協力
池ノ辺 今回の撮影では、新幹線を7往復(上野・新青森間)させて、しかも動いている中で撮影されているんですよね。
樋口 たしかに大変でしたけど、これまた楽しかったです。
佐藤 普通はありえないですよね。これだけ過密ダイヤで新幹線が運行している中、特別ダイヤで専用の貸切臨時列車を7日間も走らせるって、本当にどうかしてると思いますよ(笑)。実際、細かな素材撮りは別にして、メインの撮影だけでもざっくり4カ月というのも、最近の普通の日本映画ではまずないですね。


池ノ辺 そうですよね。それだけでもすごいことだと思います。
樋口 今回の撮影で、何よりも大切だったのは、我々スタッフ全員が、撮影にあたっていつものロケ現場よりいろいろな場面で厳格にしなきゃいけないということでした。
池ノ辺 それはどういうことですか。
樋口 今回、JR東日本さんの特別協力があって、新幹線と駅での撮影の許可をいただいたわけですが、その際に、我々はお客さんではなく、むしろJR東日本という組織の側の人間として振る舞わなければならなかったということです。例えば、駅構内を通る、荷物を車両に搬入する、そういう場合でも、あくまで一般のお客様を常に優先するということを、スタッフ一人一人が徹底的に頭に叩き込んで撮影に臨む必要がありました。なんせ、通常の営業時間にも撮影していましたから。これは頭ではそうしなければいけない、当たり前だとわかっていても、その意識は、我々には全く染み付いていなかったんです。そこは徹底的に叩き込まれました。
JR東日本の皆さんも、最初は我々に対して懐疑的だったと思います。本当にできるんだろうか、できないだろうけど、そこはお願いだからちゃんとやってくださいねと、そんなふうに思われていたと思います。けれど、初日から我々全スタッフがきちんとできていたところを見て、見る目を変えてくださいました。むしろ我々スタッフに対してすごく敬意を払っていただけるようになって、そこから信頼関係ができ、結果的にこれほどまでに素晴らしい協力をいただいたということです。



池ノ辺 JR東日本さんの特別協力があったと聞いていたので、この作品を観終わって思ったのは、 JR東日本の皆さんだけじゃない、地下鉄の駅員さん、会社のビルの掃除をしてくれる清掃員の方々、そういう人たちに本当に「ありがとうございます」という気持ちになりました。
樋口 普段から、日々の感謝というのは常に持っているつもりだったけれど、まだまだ足りないなと。今回JR東日本さんと一緒に仕事をするにあたって、改めてそう思いましたね。
