May 02, 2025 interview

樋口真嗣 監督 & 編集 / VFXスーパーバイザー 佐藤敦紀 が語る 素晴らしいスタッフたちと共に楽しくつくりあげた Netflix映画『新幹線大爆破』

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はやぶさ60号は、今日も新青森から東京へ向けて定刻どおり出発した。車掌の高市は、いつもと変わらぬ想いでお客さまを迎える。そんな中、1本の緊迫した電話が入る。それは、はやぶさ60号に、時速が100kmを下回れば即座に爆発する爆弾を仕掛けたというもの。さらに、爆弾解除料として、1,000億円を要求してきた。高市ら乗務員は、この極限の状況で、乗客を守り、爆破を回避すべく奔走する。だが、乗務員と乗客たちは、爆弾だけでなくさまざまな窮地と混乱に直面することになる。やがてこの事件は、鉄道人たち、政府と警察、さらに国民をも巻き込み、ギリギリの攻防戦が繰り広げられていく。はやぶさ60号は、そして日本は、この危機を乗り越えることができるのか⁉︎

今回Netflix映画として独占配信中の『新幹線大爆破』で監督を務めるのは、『シン・ゴジラ』(2016) など数々の大ヒット作を生み出してきた樋口真嗣。もともと原作となった『新幹線大爆破』(1975) のファンで、今作の企画も樋口の情熱によって走り出した。高市役を務めるのは、『日本沈没』(2006)でも監督とタッグを組んだ草彅剛。さらに細田佳央太、のん、斎藤工の他、実力派の俳優が集結する。

予告編制作会社バカ・ザ・バッカ代表の池ノ辺直子が映画大好きな業界の人たちと語り合う『映画は愛よ!』。今回は、Netflix映画『新幹線大爆破』の樋口真嗣監督と同作品の編集/VFXスーパーバイザーの佐藤敦紀氏に、本作品や映画への思いなどを伺いました。

事前準備は万全に、現場でストレスをかけない樋口組の熟練の技

池ノ辺 樋口監督と佐藤さんはずいぶん長いお付き合いなんですよね。

佐藤 私がIMAGICAにいた頃からです、もう40年近くになるかな。

池ノ辺 いつもお2人は仲良しで一緒にやってらっしゃるんですね。

樋口 仲良しといわれると馴れ合いみたいなイメージがあるから、それは良くないな (笑) 。

佐藤 「実は編集所ではつかみ合いのケンカしてます」とか言っとこうか(笑)?

樋口 口も利かないとかね。お笑いコンビが楽屋は別にしているみたいな、ちょっとクールなイメージ戦略でいきましょう (笑) 。

池ノ辺 それにしても、今回の撮影は大変だったんじゃないですか。

樋口 全然大変じゃなかったですよ。自分の仕事は、携わるスタッフやキャストに大変な思いをさせながら映画を作ることなので、自分はみんなに比べたらそんなに大変じゃない。むしろ楽しかった。自分は刹那的な快楽主義者なので、楽しい方しか選べないですからね。人間は人の苦労話が好きだし、自分で「すごく大変だった」とか言いたいけど、僕は大変じゃなくって、楽しかった。大変なのはみんななんです。

佐藤 今回は監督が大好きな新幹線がずっと出ている話だから楽しいよね(笑)。

樋口 他にも好きなものはたくさんでてきますからね。オジさんとか。

池ノ辺 今回の映画を撮ることになった経緯は、1975年公開の東映映画『新幹線大爆破』に遡るということなんですが、監督は最初にこの映画を観た時からずっとやりたいという思いがあったんですか。

樋口 ものすごく強烈な印象を受けたのは確かです。ただ、それがすぐに自分も作りたいというところに結びついたわけではないです。そもそもが怠け者なので。さっき、楽しかったとは言いましたけど、楽しいと思うまでに自分の中で気分を上げていくのにすごく時間がかかるんです。自分に自信があるわけでもないので、できればやりたくない。だから、朝起きたら自分じゃない別の誰かがやることになっていたりしないかなと、そんなことを考えたりしています。それでも、結局は自分でやるしかない!と。

池ノ辺 でも好きじゃないと出来ないですよね。

樋口 昔、『小さなスーパーマン ガンバロン』(1977) というTVドラマがありまして、その主題歌の歌い出しがかっこいいんです。「ボクがやらなきゃ だれがやる〜」から始まる。今もそれが自分の支えになっていて、その歌を頭の中で流しながら起きて仕事に行っています。

池ノ辺 でも仕事に行くと楽しいんですよね。

樋口 ええ、それは本当にそうです。優秀なスタッフが、自分がやりたいことを全部先に準備してくれているんです。だから自分は本当に楽、というか楽しいことばかりですね。それは素晴らしいスタッフたちのおかげだといつも思っています。

池ノ辺 佐藤さんは、一緒にやっていて、いかがですか。

佐藤 今回は『新幹線大爆破』だから特別な対応とか、力を入れてということではなくて、ある意味いつもの樋口組のやり方です。ただ、ビジュアルエフェクト(VFX) が多いからというのもあるんですけど、準備がすごく重要にはなります。ですから、スケジュールを整える助監督の方たちとか、どういう撮影の仕込みが必要かを考えて準備する撮影部や美術部の仕事が非常に大きいというのは、それは監督の言うとおりです。でもそこをうまく仕込んで、現場ではできるだけストレスがないように終わらせるというやり方は、長年そうやって鍛えられてきた樋口組ならではの手腕ですよね。

樋口 やっぱり今日は佐藤さんに横にいてもらって良かったよ。自分で今みたいな話をしたら、何様だという話になりますよ (笑) 。自分で自分を褒めるとか無理だから、今みたいに適度な距離感のところから伝えていただくのがいいですね。