あるビルの警備室で、パソコンの画面を覗き込む2人の男たち、桐山と鈴木。彼らはあるチャンネルの生配信を今か今かと待っていた。かつて一流商社の営業マンだった桐山は、ある事件で友人に裏切られ借金を抱え、以来、人と深い関わりを持たず、ビルの警備員として暮らしている。しかし、ある日桐山の人生は再び動き出す。それは、世間を騒がす暴露チャンネルで桐山自身の身に起きた事件の真相を語ることだった。バーチャル生配信暴露チャンネル【#真相をお話しします】。そこで明かされるのは、あらゆるゴシップの真相。有名人の裏の顔、世間を騒がせたあの事件の報道されていない真実‥‥。選ばれし者はとっておきの “真相” と引き換えに観衆からの投げ銭を獲得する、一世一代の大勝負が繰り広げられる今一番ホットな場所。驚愕の暴露の数々に沸く観衆と、飛び交う高額の投げ銭。チャンネルが史上最大の盛り上がりを見せるなか、ついに桐山が自身の「真相」を暴露し投げ銭で大儲け。しかし鈴木が突如ある「真相」を語り出して‥‥。
人気ロックバンド「Mrs. GREEN APPLE」の大森元貴とアイドルグループ「timelesz」の菊池風磨が、鈴木と桐山としてW主演を務め、結城真一郎の同名ミステリー小説を映画化。他に中条あやみ、岡山天音、伊藤英明らが共演し、テレビドラマ「妖怪シェアハウス」シリーズ (2020~)、映画『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』(2020) などを手掛けた豊島圭介がメガホンをとる。
予告編制作会社バカ・ザ・バッカ代表の池ノ辺直子が映画大好きな業界の人たちと語り合う『映画は愛よ!』、今回は、『#真相をお話しします』の豊島圭介監督に、本作品や映画への思いなどを伺いました。

待ち望んでいたエンタメ映画
池ノ辺 監督は、ドキュメンタリーやホラー映画のイメージがあったので、東宝の、いわゆるエンタメ映画をやると聞いて、ちょっと驚きました。
豊島 僕はもともと自主映画を撮っていて、ずっと映画が撮りたくてこの業界に入ったんです。何度か映画を作ることはできたんですが、一度外すとやっぱり5年くらいは映画が撮れなくて。その間にはテレビドラマの話をいただいて、監督として活躍の場を与えていただきました。テレビドラマも映画もそれぞれの魅力があるので、ドラマを撮りながらもいろんなことを学ばせてもらっていました。
池ノ辺 2020年に公開されたドキュメンタリー映画『三島由紀夫vs東大全共闘 ~50年目の真実~』は話題になりましたよね。

豊島 あれはもともとの討論会の素材そのものにすごい底力があって、それで随分多くの人に観てもらえました。それはそれで嬉しかったんですが、僕にとってはドキュメンタリーがイレギュラーで、フィクションを撮りたいという思いがずっとあったんです。ただ、いろんな作品に関わるなかで、情報をどういうふうに並べたらどう観客に伝わるのか、どういうふうに観客の気持ちを動かすのか、そのあたりはフィクションもドキュメンタリーも変わらないと思いました。そんな中、久しぶりにいただいたフィクションの映画の仕事が今回の『#真相をお話しします』なんです。ここにきて自分がやりたかったフィクションで、かつ公開規模の大きい映画の話をいただいたので、非常に嬉しかったですね。
池ノ辺 ずっとやりたかったことですからね。ミステリーというジャンルはいかがでしたか。
豊島 ジャンルとして苦手意識というのは特になかったです。これまではコメディーやホラーが多かったんですが、そこも含めてこれまでの自分の作品を振り返ってみると、情報をギュー詰めしてあるのが多いんです。つまり1時間分の分量を45分に縮めたみたいな詰まり具合ですね。そういう意味では、今回の作品は山のような情報がまずあって、それを整理して、パズルのように組み合わせて提示するというものだったので、これはもしかしたら自分に向いているかもしれないとは思いました。