Apr 05, 2025 interview

土井裕泰 監督が語る 誰かが誰かを思う気持ちの純粋さが描かれる『片思い世界』

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3人だからこそ生まれたあたたかな一つの光

池ノ辺 主役の3人は最初から決まっていたということですが、映画を拝見すると、すごく3人が生き生きとして可愛くて、それは楽しかったのですが、映画が進むにつれて、次はどうなるんだろうと思ったり切なくなってしまったり、ああ、だからこのタイトルなのねと納得するものもあって‥‥。

土井 今回坂元さんは、大きな「物語」をどう提示するかということをテーマにしているんだなと感じていました。実は脚本になる前のプロットの段階で坂元さんから『片思い世界』というタイトルの提案があったんです。その時に、腑に落ちたというか向かう方向がちゃんと見えた気がしました。先ほど言った寓話性とリアリティの匙加減、その落としどころが、このタイトルの中にちゃんとあると思いました。坂元さんならではの言葉の生み出し方、センスですよね。すごいなと思いました。

池ノ辺 主役級の3人が主演として揃っていますが、いかがでしたか。

土井 彼女たちはそれぞれ1人ずつでもポテンシャルが高いし集中力も瞬発力もある人たちだというのはわかっていたので、そういう意味での心配はまったくなかったです。実際に撮影中、この3人が一つの画面に写っている時の強さというか幸福感は、モニターを見ながら常に感じていました。ただ、それぞれがすごく力があって輝いているんだけれど、それは輝きをぶつけ合うようなものでは一切なかったんです。

池ノ辺 そこはちょっと心配していました。どうなるんだろうって。

土井 確かに「3人主役だと大変じゃない?」と言われることもありましたけど、そういう意味で大変だと思ったことはなかったですね。

池ノ辺 撮影中はどんな感じだったんですか。

土井 気がつくと3人はいつも一緒でしたね。スタジオの片隅でもロケ現場の道端でも、椅子を並べて常に3人で寄り添っておしゃべりしている、そんな感じでした。今回は個々の輝きをぶつけ合ってハレーションを起こすのではなく、3人で何か一つのものを生み出していく、3人が集まったことでしか生まれない特別な光がそこに生まれる、そういうことを目指しているんじゃないかと思いました。

池ノ辺 確かに個性が強くてそれぞれ主役を張るような人たちが一緒に集まって、何か別の光やあたたかさが出ていて、それが逆にちょっと悲しい、切ないと思ったりしました。

土井 この作品にとって、実は一番大事なのは描かれていない12年間のことなんです。ここで描かれている彼女たちの姿は、その前の12年間をどう生きてきたかということの結果なんです。3人がとにかくずっと付かず離れず一緒にいたというのは、その時間を少しでも自分たちの中で埋めていくことが、この映画にとってものすごく重要なことだと認識していたからだろうと思います。