Dec 27, 2024 interview

神山健治 監督が語る 手描きアニメだからこそ作品としてのすごさを表現できた『ロード・オブ・ザ・リング ローハンの戦い』

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ファンタジーのリアリティをアニメでどう表現するか

池ノ辺 『ロード・オブ・ザ・リング』は過去に実写版の映画があって、今回初めてのアニメーション映画となりますが、あえてアニメーションで作ったことの意味を、監督はどのように捉えていますか。

神山 アニメならではの良さというのは、どういうところにあるのかと考えた時に、実写ではできないようなキャラクターの動きとか、アニメならではの構図、見せ方、そういうものもあると思いますが、僕は、アニメの、特に手描きのアニメの映像そのものが持っている意味というか、力? 人が一枚一枚絵を描いて作る凄さが最終的には本作の強みになると考えていました。

池ノ辺 それはどういうことですか。

神山 手描きのアニメの凄いところは、人によって手で描かれた絵が動くことにあります。その上で、逆にどこまで描いてもリアルにはならないので、抽象性を持ち合わせながら生々しさを見る人に感じさせることができる表現手法だということです。そこがCGアニメと違うところだし、P.J. 監督が実写で成功させた、ファンタジー世界にリアリティーを持たせた“説得力”にあたる部分を見る人に感じさせられるかもしれないなと考えたわけです。そもそも、ファンタジー作品の実写化で難しいのは、架空の世界にリアリティーを持たせなければならないところです。それをP.J. 監督はニュージーランドを中つ国に見立てて撮影したり、架空のキャラクターを可能な限り役者を使って説得力ある映像に仕立て上げていました。アニメーションが元々は得意だった、抽象性を活かした表現を凌駕していた。そういった前例がある上で、あえて手描きアニメで映画を作るなら、手描きアニメのアナログな苦労が映像に出やすい方法が改めて生きてくるのではないか、絵にリアリティーを持たせるには、アナログな作業の果てに見えてくる生っぽさだろうということです。

池ノ辺 アニメだけど、アニメならではのリアリティが重要、ということですね。

神山 そうです。で、さらに2Dの絵にどうやってリアリティを持たせるために、アニメではあるが、リアルなカメラアングルとレンズの画角、それにライティングと露出、というところにCGを使って実写のような雰囲気を持たせてみようという試みも行っています。今回は、原画を描き出す前にCGでセットを組んで、そこにカメラを設置してCG空間で撮影を行っています。

池ノ辺 作り込み方がすごいですね。