素敵な人たちが集まってそのまま自然体で演じる
池ノ辺 キャスティングも本当に素晴らしかったです。黒木華さんはどうでしたか。
草野 黒木さんは、そもそも憧れの、超リスペクトしている俳優さんなんです。それで梓役を黒木さんにと僕が提案したんですが、いざ顔合わせ、衣装合わせになると、僕のほうがめちゃくちゃ緊張してきて、黒木さんとご一緒できる嬉しさと緊張感を噛み締めながらという状態でした(笑)。
池ノ辺 役を引き受けてくださってよかったですね。
草野 本当にそう思います。梓というのは何かすごく特徴のあるような人物でもなく、もちろん最初に「親友の死」というものがあるんですけど、物語としてもそこから何か大きな事件が起きるわけではない。それを大袈裟じゃなく日常の生活感の中でああした表現ができるというのは、やはり唯一無二の方だなと思います。
池ノ辺 今作では歌も歌われていますよね。それも監督がオファーしたんですか。
草野 「夜明けのマイウェイ」ですね。僕はこの曲のことを知らなくて、プロデューサーが佐々部監督とやっている時から、エンディングにはこの曲が合うんじゃないかと言っていたそうで、曲を聴いて僕もなるほどと思いました。それを黒木さんに歌ってもらうというのもプロデューサーのアイデアです。「無理じゃないですか」と僕は言っていたんですけど、思いがけず引き受けて歌ってくださいました。レコーディングにも立ち会わせてもらって、とっても素敵でした。
池ノ辺 それだけ黒木さんもこの作品に入れ込んでいたんでしょうね。歌も作品にさらに奥行きが出るような、いい形にしてくれる一つになっていました。それにしても、黒木さんだけでなく、この作品でキャスティングされている俳優さんは皆さんいい人のオーラを纏われている方たちばかりですよね。
草野 先ほど黒木さんにお会いした時にもそんな話をしました。澄人役の中村蒼さんにも久しぶりにお会いしたんですけど、澄人と中村さんの人格の境界線が、僕にはあんまりわからないんですよ(笑) 。現場でも、“パチンとスイッチが入って” という感じではなく、あの澄人の雰囲気で来られて、そのまま演じて、その澄人の雰囲気で帰っていかれる。今日もやっぱり澄人の雰囲気だという話を黒木さんにしたら、「今回は皆さんそうだったかもしれないですね」とおっしゃって、確かにそうだなと思ったんです。すっと自然体で現場に来てその雰囲気でカメラの前で演じる、そういう方々が集まった気がします。
池ノ辺 あえて自分とかけ離れた人物を演じるのではなく‥‥。
草野 そのまま自然体で、自然体が素敵な方々が演じてくださった。自分としては、本当に今まで観客として好きだった人を集めたみたいなキャスティングだったので、そういう人がそもそも好みだったんだと、今日皆さんに久しぶりにお会いしてわかりました(笑)。
池ノ辺 久しぶりに皆さんにお会いしてどうでした?
草野 実は僕は現場では気恥ずかしさもあって、ご本人のお名前では呼びかけられないんです。梓とか澄人と言えば話せるんだけど、黒木さんとか中村さんと言うと、急に何を喋ったらいいかわからなくなる(笑)。でも撮影も終わってこういう完成披露のような機会なら、いろいろ話せるかなと。それもあって今日は楽しそうに見えたのかもしれません。
池ノ辺 監督の楽しいという気持ちが伝わってきて、こちらも嬉しくなりました(笑)。