死ぬ前に見返したい自分の作品に
池ノ辺 ゆりやんさん、今回演じてみて、演じるとはどういうことだと思いましたか。
ゆりやん 今までコントとかで、誰々さんぽいことをする、みたいなことはやってきて、それが演じることだと思っていたんですけど、今回この「極悪女王」に出させていただいて、そうじゃないんだというのがわかりました。演じるというのは、誰かみたいなことをするのでもない、例えば台本で「怒る」と書いてあったとして、それは怒る顔をすることでも怒った声を出すことでもない。それまでの自分では想像もできないような感情や表現が引き出される。自分の中にあっても今まで割れてこなかった殻が割れて、思いもかけない、自分ではあるんだけれど自分じゃないようなそんな何かが引き出される。言葉にすると難しいんですけど、今の自分はそんなふうに感じています。本当にすごい体験をさせていただいたと思います。
池ノ辺 これから役者として十分やっていけますね。あ、そういえば今度は監督をなさるんですよね。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985)を観て監督になりたいと思ったと聞いたんですが。
ゆりやん あ、いえ白石和彌監督をみてですね。
池ノ辺 ごめんなさい、そうですね(笑)。白石監督は、これまでたくさんの作品を撮ってこられてますが、今回自分が好きなことを作品にされました。ドラマや映画とは白石監督にとって何でしょうか。
白石 今回はNetflix配信の連続ドラマということで、映画に比べて尺が長く使えるので、いろんなキャラクターを掘り下げてより濃密に世界観を描くことができるという点では、映画とはまた違った楽しみがありました。しかもそれは、80年代の全女を描くという熱量に、すごくマッチしていたのかなと思います。ただ、プロレスのシーンは本当に僕らは何もできなくて、俳優たちと長与さんはじめMarvelousのプロレスラーの皆さんたちが作ってくれたものを、僕らが使わせていただいて撮影していたという感覚があります。それには本当に感謝です。いま見直しても、「これほんとにどうやって撮ったんだろう」と自分でも思うようなシーンがいっぱい映像に残っています。もうすぐ配信がスタートしてたくさんの人たちに観てもらえると思うんですが、自分が死ぬ前に見るとしたら、この作品かなと。一番楽しく見られるんじゃないかと思います。
池ノ辺 監督として新たな境地に行った感じですかね。
白石 そう言っていただけるのはうれしいですね。でも今回は、本当に、女子プロレスラー役をやってくれたみんながMVPです。
インタビュー / 池ノ辺直子
文・構成 / 佐々木尚絵
撮影 / 岡本英理
俳優・お笑いタレント
1990年生まれ、奈良県出身。関西大学4年生のときに、NSC(吉本総合芸能学院)大阪校の35期生として入学。「NSC大ライブ2013 ~史上最多1000人の芸人が本日誕生!?」の大阪校で優勝し、NSCを首席で卒業。17年の在阪賞レース「第47回NHK上方漫才コンテスト」で、女性ピン芸人初の優勝をはたす。同年、第1回「女芸人No.1決定戦 THE W」でも優勝。19年にはアメリカのオーディション番組『アメリカズ・ゴット・タレント』に出場し、米国旗柄の水着を着て手首を回すダンスで、世界から注目される。「R-1グランプリ2021」では、悲願の初優勝。昨年はお笑いタレントに加え、ラッパーとしてもデビュー。アイドル、俳優、声優ほか、マルチな才能で活躍中。
監督
74年生まれ、北海道出身。道内の映像技術系専門学校を卒業後の95年に上京し、中村幻児監督主催の映画塾に参加。講師の一人だった若松孝二に師事し、映画『17歳の風景 少年は何を見たのか』(05)ほかの助監督を務め、行定勲、犬童一心の作品に参加。10年に『ロストパラダイス・イン・トーキョー』で長編監督デビューし(共同脚本も兼務)、第2作『凶悪』(13)で新藤兼人賞金賞など多数受賞。『日本で一番悪い奴ら』(16)で綾野剛、『彼女がその名を知らない鳥たち』(17年)で蒼井優、『孤狼の血』(18年)で役所広司と松坂桃李に日本アカデミー賞をもたらせ、自身も多数の監督賞を受賞。『止められるか、俺たちを』(18)と『サニー/32』(同年)でも監督賞を受賞。群像の中の人間ドラマを得意とし、11月1日には名脚本家・笠松和夫の遺稿をもとにした『十一人の賊軍』が公開される。
良家の子女が通う超エリート女子高校に入学した有沢唯千花。唯千花が高校2年に進級したときに、男子校と合併して明日蘭学院として共学化。色めき立つ生徒たちだったが、新たに「男女交際禁止」の校則が制定される。しかも違反し性交渉をした生徒は退学処分という厳しい内容だった。早速、生徒会がラブホテル周辺などでパトロールを行う通称 “ウサギ狩り”が始まると、退学者が続出。唯千花の親友も退学へと追い込まれる。
総監督:白石和彌 ( 監督:白石和彌 / 1〜3 話 、茂木克仁 / 4〜5 話 )
企画・プロデュース・脚本:鈴木おさむ
プロレススーパーバイザー:長与千種
出演:ゆりやんレトリィバァ、唐田えりか、剛力彩芽、えびちゃん(マリーマリー) 、隅田杏花、音尾琢真、黒田大輔、斎藤工、村上 淳
Netflix にて独占配信中
Netflix作品ページ netflix.com/極悪女王