Sep 12, 2024 interview

太田良 監督 × 安川有果 監督が語る 実話を基に、今までにない学園ドラマとして作られたオリジナルストーリー「恋愛バトルロワイヤル」 

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良家の子女が通う超エリート女子高校に入学した有沢唯千花。娘の将来を考えた母は無理をして学費を工面するが、ふたりの生活は楽ではない。唯千花が高校2年の時、男子校と合併して共学化。色めき立つ生徒たちだったが、新たに「男女交際禁止」の校則が制定される。しかも違反し性交渉をした生徒は退学処分という厳しい内容だった。早速、生徒会によるパトロール、通称 “ウサギ狩り”が始まると退学者が続出。唯千花の親友も退学へと追い込まれる。そんな中、多額の借金を背負わされた母を救うため、唯千花は違反者からお金を受け取って証拠写真を揉み消す活動を始める。恋愛には興味がなかった唯千花だったが、生徒たちの真っすぐに恋をする気持ちにふれ、自身の心境も変化する。そしてある事件をきっかけに、恋愛禁止の撤廃を要求するため学校を訴え裁判を起こすことを決意するー。

男女交際禁止の校則を破り、退学を余儀なくされた女子生徒が学校法人を訴えたという実話を基にしたオリジナルストーリーである本作はNetflixの日本製作としては初のオリジナル学園ドラマとなる。エグゼクティブ・プロデューサーの岡野真紀子のもと、脚本を手がけたのは、メッセージ性の強い社会派作品や人間ドラマを多く手がけた篠﨑絵理子と、監督としても活躍している首藤凜。監督陣には松本壮史をはじめ、太田良、安川有果らフレッシュなクリエイター陣が名を連ねている。

予告編制作会社バカ・ザ・バッカ代表の池ノ辺直子が映画大好きな業界の人たちと語り合う『映画は愛よ!』、今回は、「恋愛バトルロワイヤル」の太田良監督と安川有果監督に、本作品への想いなどを伺いました。

3人の監督

池ノ辺 今回の、Netflixシリーズ「恋愛バトルロワイヤル」(全8話)ですが、3人の監督が担当されたんですね。それぞれどういう形で参加されたのか伺いたいのですが。

太田 企画のはじまりはプロデューサーの岡野(真紀子)さんと脚本家の篠﨑(絵理子)さん、首藤(凜)さんがきっかけになって動き出したと聞いています。岡野さんの「今までにない学園ドラマを作りたい」という思いがまずあって、そこから3人で企画、世界観を構築し、ストーリーとして生まれていきました。そのタイミングでまず松本壮史監督に声がかかって、その後で僕や安川(有果)さんに声をかけていただきました。もともと複数人数でディレクションしていくというのが前提にあったようです。

池ノ辺 声がかかった時はどう思われましたか。

太田 僕は広告を演出することが多くて、Netflixとも制作会社のロボットさんとも仕事をしたことがなかったので、最初はなぜ僕のところに話が来たんだろうと思いました。ただ、松本さんと直接会ったことはなかったんですが同い年で、お互いの作品も知っていて、松本さんと一緒にできるなら面白くなりそうだと思って参加しました。

池ノ辺 安川監督はいかがでしたか。

安川 前段に関しては太田監督がおっしゃっていた通りです。チームに入る前に岡野プロデューサーとお話しする機会があったんです。その時に、「テーマ性とエンタメ性の両方が入っている作品を作りたい」ということを言われました。私自身にもその思いはあって、目指すところは同じだと思ってチャレンジしてみようと思いました。松本監督の作品も好きでしたし、脚本の首藤さんとは以前オムニバス映画でご一緒したことがあって、そういう人たちがメンバーにいるのなら面白い作品が出来上がるんじゃないかと感じたので参加を決めました。

池ノ辺 3人がどの話を担当するのかは、最初から決まっていたんですか。

太田 僕が参加した時点では、まだ、1話と2話をじっくり練っている段階で、そこではまだパート分けは決まっていませんでした。そこからさらに脚本を作っていって、この先はそれぞれの演出の視点を入れていかないと撮影に向かえない、そのタイミングくらいでパート分けを話し合ったんです。

池ノ辺  Netflixでのお仕事はどうでした? 

太田 まず、撮影前の作業であるプリプロの時間が結構長めにありました。それはロケハンなども含めてですね。超エリート高校というスケール感のある舞台設定だったので、関わる人数も多く、特にロケハンのチームや演出部などは早めに動き出していました。まだ脚本を作っている段階でしたが、カメラのトーンなどのルック(映像の調子、雰囲気)に関して岡野さんたちを交えてスタッフチームと打ち合わせる機会があって、具体的にパートは決まっていないけれど、おおよそこういう方針で映像を落とし込んでいこうということなど、共通の視点の意識は共有できていたと思います。

池ノ辺 安川監督はその辺りいかがですか。

安川 そうですね、おっしゃる通り、目指すトーンなどは全体として皆で共有しつつ、どの話を担当するかを決めてからはそれぞれに判断していくという感じだったように思います。松本監督が目指す全体の方向としてはポップに行きましょうということだったんですが、私自身はポップなトーンというのは撮ったことがなくて、正直ピンと来ていなかったんです。ただ私も監督としてできることを増やしたい思いがあって参加したので、松本監督が撮っている現場を見て勉強させてもらいました。

松本監督からは、メンバーに加わる時に、私が自分とタイプの違う監督で、「そういう人が1人はいてほしかったので声をかけました」と言われたんです。過去作の「よだかの片想い」を見てくださっていたみたいで。ですから、全体の方針は方針としておきつつ、自分は、自分がいいと思うものを撮る。そのバランスを探っていきながらの撮影でした。

池ノ辺 意見が合わなくて喧嘩するなんてことはなかったんですか(笑)。

太田 喧嘩はなかったですね。まあ、喧嘩してたらこんなに長い間一緒に居られないですから(笑)。もちろん、お互いのパートに意見を出し合うことはありました。松本さんのアイデアを僕の撮影プランに反映したりもしました。その上で、お互いのやりたいことに対してはリスペクトがあったと思います。

池ノ辺 その相乗効果でより良いものを作っていくというような、きっとその辺りに、3人で監督をした意味があるんでしょうね。