Aug 02, 2024 interview

佐藤信介 監督が語る  爽快感と寂しさを感じた、長い旅の終わり『キングダム 大将軍の帰還』 

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秦と趙の全てを懸けた〈馬陽の戦い〉で、敵将を討った信と仲間たちの前に突如として現れた趙国の総大将・龐煖。その圧倒的な力の前に次々と命を落としていく飛信隊の仲間たち。致命傷を負った信を背負って、飛信隊は決死の脱出劇を試みる。一方で戦局を見守っていた王騎は、劣勢を覆すべく最強の大将軍として再び戦地に舞い戻った。王騎と龐煖の過去、その因縁が絡み合う馬陽の地で、いま、忘れられない戦いが始まる――。

本作『キングダム 大将軍の帰還』では、前作『運命の炎』で信と王騎が隣国・趙との総力戦を繰り広げた〈馬陽の戦い〉の続きが描かれる。前作に引き続き、佐藤信介が監督を務め、天下の大将軍を目指す主人公・信に山﨑賢人、中華統一に挑む若き秦国王・嬴政に吉沢亮、天下の大将軍・王騎に大沢たかおなど、「キングダムシリーズに欠かせない豪華キャスト陣が続投。一方敵陣にも、龐煖役の吉川晃司をはじめ超豪華キャストが参戦する。数多くの熱狂的ファンを生み出した、映画キングダムの集大成にしてシリーズ史上最高傑作となる『キングダム 大将軍の帰還』が今年の夏を忘れられないものにする。

予告編制作会社バカ・ザ・バッカ代表の池ノ辺直子が映画大好きな業界の人たちと語り合う『映画は愛よ!』、今回は、『キングダム 大将軍の帰還』の佐藤信介監督に、本作品の見どころ、撮影時のエピソード、映画への思いなどを伺いました。

全てのカットに究極にこだわり抜いた映像

池ノ辺 『キングダム 大将軍の帰還』拝見しました。ドキドキワクワクが満載の素晴らしい作品でした。

佐藤 ありがとうございます。完成してからそんなに時間が経っていなくて、今、ようやく試写などでマスコミの方とかに観ていただいている段階です(注:インタビュー当時)。つまりこの先は、皆さんに届けるという全く違うフェーズに入るわけですけど、ちょっとまだ自分がそこに辿り着けていない感じなんですよ。もちろん自分なりには、力を出し切ったという思いはありますし、満足しているし手応えも感じているんですが、ちょっとまだ、実感がない。でもそういう中で感想を聞けるのは、やはり嬉しいですね。

池ノ辺 じゃあ、私が拝見したのは完成したばかりのものだったんですね。

佐藤 実際、制作のほとんどの期間は、未完成のものを観ることのほうが多くて、僕自身、完成品はまだ何回かしか観れていないんです。不思議なものですが、何度も何度も、特に編集段階で死ぬほど観ている割には、完成品ではなく未完成品を観ることのほうが圧倒的に多い。撮影が終わってとにかくすぐに編集します。なぜかというと編集の後にポスプロ作業があって、そこでどこを使って、どういうタイミングでカットするのか、そういうところを決めて指示をしなければならないんです。だから最初の編集作業は意外と早い段階で終わる。そこから何度もフィードバックしながら仕上げていくわけです。

今回、その編集作業のプロセス、まだ編集途中の段階で観た時に、「もう、これでいいんじゃない?」と思ったんですよね。もちろんよくないんですよ、電柱とかまだ映っているような段階ですから(笑)。でもそういうのが全然気にならないくらい役者の方たちの気迫が伝わって、彼らの想像力、イマジネーションの力によって、そこに古代中国の世界が繰り広げられていたんです。それを感じた時はちょっと感動しました。

池ノ辺 監督は、非常に厳密に編集しているから、ちょっとでも変なコマが入っているとすぐにわかる、それくらいこだわっているとお聞きしました。

佐藤 確かに、割とすぐに違和感として気づきますね。というのも、「ここはこうじゃなきゃいけない」という理由が、全てのカットにあるんです。音楽にしても映像にしても、「なぜ、そうじゃなければいけないのか」ということを、腑に落ちるまで編集者も僕も、突き詰めているんです。ですから何かの拍子に違っている部分があると、それは1フレームでも気づくことがあります。すごく複雑な作業をしていますから、そういうことは起こり得るんですけどね。映画って観ると約2時間くらいで終わってしまうんですが、それぞれのカットにバックストーリーがあって、1フレ1フレが究極のこだわりでカットされているわけです。それは、時間をかけて作っている映像のおもしろさだと思います。

池ノ辺 これはもう当たり前と言えばそうなんですが、作品に携わる全ての人のプロ意識がとても高い。それがスクリーンの中から「これでどうだ!」と訴えかけてくるんですよね(笑)。撮影中に勉強会もされていたとか。

佐藤 みんなそれぞれの課題がありますから、反省会みたいな形でやっていました。反省する部分もいっぱいあって、そういう時に、他の作品を観て、「これはなんでこうなんだろう」とか「ここがいいよね」とか色々話し合ったりもしました。音に関しては、技術のスタッフに分析してもらったりということもありました。「次はこうしてみよう」とかね。課題はとにかくたくさんありますから、そういうことを通していろいろ情報交換していました。