Jul 27, 2024 interview

武内英樹 監督が語る  オールスターキャストが演じる個性的な偉人たちと国民の対話の物語『もしも徳川家康が総理大臣になったら』 

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映画業界の働き方改革で得られたもの

池ノ辺 現場はどうでしたか。

武内 その時、『翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~』と『はたらく細胞』と3本立て続けに撮影していまして‥‥。

池ノ辺 3本立て続けに!それは大変だったんじゃないですか。

武内 確かに楽ではないですけどその3本の中では現場も役者の皆さんも、比較的安定していました。この作品は、日本映画制作適正化機構、いわゆる「映適」による新たな認定制度が始まって初めての作品だったんです。ですから、長時間にわたる撮影をしないように労働時間に配慮するとか、休みをしっかり取るとか、そういう基準を守って作りました。そうすると寝不足で撮影してミスが続くとか、現場がギスギスするとか、そういうことがなくなりました。もちろんその分、制作期間が延びたりしてお金はかかるんだけれど、そのほうがスムーズに回っていく感じで、精神的には楽でしたね。

ただ、僕の作品はエキストラがめちゃくちゃ多いんです。どの作品でも毎回500人、600人くらいいるんです。それだけの人数を朝から集めて、メイクや服装を準備するというのは、それだけで相当時間がかかりますからね。

池ノ辺 CGじゃないんですね。

武内 もちろん一部には使っていますけど、この映画のテーマは偉人たちと国民の対話の物語ですから、大勢の国民たちに相対したときに偉人たちがどう出るのか、そして国民がそこにどう呼応するのか、そういう表現をしようと思うとそれだけの人数は必要だと思ったんです。CGだと思うと感情移入できないでしょうから、お金がかかっても頑張りました。

池ノ辺 撮影中のエピソードで他に心に残っていることはありますか。

武内 最後の演説のシーンは、静岡で4日間くらいかけて撮ったんです。ある程度の時間になるとそこで撮影を切るので、夜は時間があるんです。それで偉人を演じる役者たちと飲みに行って親睦も深まったし結束力も高まりました。すごくいいチームワークでできたと思います。ただ、とにかく皆さん濃いキャラで個性的で、自分は動物園に放り込まれた調教師というか、オリンピックの選手村に迷い込んだ一般人みたいなそんな感じでしたよ(笑)。でもそれがすごく楽しくて幸せでした。