Jun 01, 2024 interview

今泉力哉 監督が語る 今まで手がけてきた作品と共通する部分があるから面白いものができると思って参加した『からかい上手の高木さん』

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とある島の中学校。隣の席になった女の子・高木さんに何かとからかわれる男の子・西片。どうにかしてからかい返そうと策を練るも、いつも見透かされてしまい失敗。そんなかけがえのない毎日を過ごしていたふたりだったが、ある日、離れ離れになってしまう‥‥。それから10年、高木さんが島に帰ってきた。母校で体育教師として奮闘する西片の前に、教育実習生として突然現れたのだ。10年ぶりに再会したふたりの止まっていた時間と止まっていた「からかい」の日々が再び動き出す。

大人気コミックス「からかい上手の高木さん」(山本崇一朗 / 小学館)を原作に、10年後のふたりの姿を映画化。高木さんを永野芽郁、西片を髙橋文哉、そして一足先に放送された中学時代を描いたドラマと同じく今泉力哉が監督を務める。

予告編制作会社バカ・ザ・バッカ代表の池ノ辺直子が映画大好きな業界の人たちと語り合う『映画は愛よ!』、今回は、『からかい上手の高木さん』の今泉力哉監督に、本作品や映画への思いなどを伺いました。

不器用な人間の繊細さが光る

池ノ辺 映画、拝見しました。泣きました。すごくよかったです。

今泉 ありがとうございます。

池ノ辺 今回は、コミックの原作があって、その実写版としてドラマと映画の展開ということですが、そもそも、なぜ今泉監督がこの作品を手がけることになったんですか。原作を読んだ時に、「え? 今泉監督がやるの?」という感じも正直ちょっとあったんですけど。

今泉 原作を読んだ時に、もちろん他の監督がポップに作るよさもあるかなと考えたんですが、主人公たちのやりとりが、言葉一つ違ったら空気が変わってしまうような、すごい繊細さがあって、それは言葉だけじゃなくてふたりの交わす眼差しとか行動とか。それで、これは自分がやる意味があるな、今まで自分が手がけてきたものと共通する部分もあるんじゃないかと思ったんです。

池ノ辺 それはどういうところですか。

今泉 自分が今まで描いてきたのは、不倫とか浮気とかちょっとドロドロしたものが多いのですが、逆にいえば嘘をつくのが下手だったり自分をうまく表現できなかったり、そういう人間です。一方で、この映画に関していえば、好きという気持ちに気づかなかったり、その思いを伝えてしまったら関係性が壊れてしまうんじゃないかと恐れて伝えられなかったり、うまく言葉が出てこなかったり、そういう不器用な人たちです。もちろん純粋さという点では今回はすごく強いですけど、そういう共通する部分がある。それで、面白くできそうだなと思い、引き受けました。

池ノ辺 確かにそういう視点でみると、監督のこれまでのカラーも出ていますね。本作では演出上で特に何か工夫したことはあるんですか。

今泉 さっき話した繊細なやりとりについては、かなり気を遣っています。それと、原作のマンガはもちろん大人気で、アニメもかなりヒットしている作品です。特にアニメのテンションに引っ張られないようにとは思いました。そこを真似してしまうと、実写だとちょっとオーバーになり過ぎてしまうので、その辺の温度感は気を遣って俳優さんたちと作り上げていきました。

池ノ辺 監督は、もともとこういう純粋な空気感のものをやりたかったんですか ?

今泉 どうでしょう(笑)。やりたかったのかはわからないですけど、ちょうどタイミングとして、自分にも小学生と中学生の子供がいて、ということはあったかもしれません。お話をいただいて、引き受けようかどうしようかという時に、原作の漫画を家に置いていたらそれを子供たちが楽しく読んで、アニメやアニメ版の映画を観に行ったりしていたようで、身近にそういう子供たちの姿があったというのは、引き受けるきっかけにはなった気がします。