May 11, 2024 interview

清原果耶 × 藤井道人 監督が語る アミもまた旅の途中『青春18×2 君へと続く道』

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「映画」という旅もまだまだこれから

池ノ辺 これは皆さんにお聞きしているんですが、監督にとって映画って何ですか。

藤井 自分が映画を作る時には映画は鏡だと思って作っていて、それは時代の鏡だったり、自分自身の鏡、そしてその反射で観客と対話するようなものだと。ただ、自分にとって映画というのは、今回のこの映画じゃないですけど旅のようなものかなと。出会って別れて、でも自分は、この映画という一本の人生に乗っかっていて、先のことはわからないですが、そこに身を任せるということを決めた。そんな自分の人生を誇りに思いたいと、最近ようやく思えるようになってきました。

池ノ辺 今まではそうではなかったと?

藤井 20代は、もう邪悪で、邪念がいっぱいでしたよ(笑)。売れたいし結果が欲しい。でもそう思っている時って一番うまくいかないですよね。目的が不純。しかも、今はこれが当たるとか、これがいい映画だとか定義すればするほどドツボにハマる。今は、「ダメだ」と言われても、「ごめん、でも一生懸命やったんだよ」と、返せるようになってきました。自分のために撮っているけれど、ちゃんと観客のことも思って映画が撮れている。そういうふうに思えるようになってから楽になりましたね。

池ノ辺 今までは突っ張って、突っ走ってきて、ガムシャラな感じだったんですか。

藤井 確かに、誰かに言われたら「うるせー」みたなところがあったと思うし、うまくいかない自分の現状を、他人とか時代のせいにしていた部分もあったと思います、でも今は、自分が求められていることに対してしっかり球を打ち返せるかと、考えられるようになったかな。そう思えるようになったのは最近のこと、もしかしたらこの映画を撮り終えてからかもしれないですね。

自分たちが何のために映画を作っていたのかわからなくなる時期ってあると思うんですけど、今回、海を越えた仲間たちと映画を撮った時に、モノづくりってこんなに楽しい、これで僕はお金をもらえているんだと、すごく恵まれていることを実感しました。それだけでも幸せなのに、これ以上何を欲張ってたんだと、この旅から帰ってきて思うようになったし、そこから肩の力が抜けたんじゃないかなと思っています。

池ノ辺 監督の人生の第2章が始まったと伺いました。楽しみじゃないですか。

藤井 どうなるんでしょうね。

清原 私も混ぜてください。

池ノ辺 私も行きますよ。

藤井 わかりました(笑)。

池ノ辺 では最後に、清原さんにとって、映画って何ですか。

清原 本当に出会いって奇跡だし、一期一会ってあるなと私は思うタイプなんです。その時々で作品や役に出会うわけですが、出会うこと、出会えることって恵まれていると思います。俳優という仕事をしている自分の人生において、映画というのは本当に大切な存在だし、そこで成長していけたらと思うし、この先も向き合っていきたい。そう思えるものが私にとっての映画ですね。抽象的になってしまいましたが。

池ノ辺 今のお話って、今回の映画の主人公の思いにシンクロしているように感じたんですが。

清原 そんなふうに混ざり合いながら役と向き合うのはすごく楽しいですね。そういう役に出会えるということも大事にしたいし、そう言っていただけるのは嬉しいです。

池ノ辺 ますます楽しみですね。これからも応援してます。

インタビュー / 池ノ辺直子
文・構成 / 佐々木尚絵
撮影 / 藤本礼奈

プロフィール
清原 果耶(きよはら かや)

俳優

2002年、大阪府生まれ。2015年、NHK連続テレビ小説「あさが来た」で女優デビュー。『護られなかった者たちへ』(21/瀬々敬久監督)で第45回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞。主な映画出演作に『3月のライオン 前編/後編』(17/大友啓史監督)、『ちはやふる -結び-』(18/小泉徳宏監督)、『まともじゃないのは君も一緒』(21/前田弘二監督)、『夏への扉-キミのいる未来へ-』(21/三木孝浩監督)、『線は、僕を描く』(22/小泉徳宏監督)、『1秒先の彼』(23/山下敦弘監督)など。2025年には『片思い世界』(土井裕泰監督)の公開が控える。テレビドラマでは、「透明なゆりかご」(18/NHK)、「おかえりモネ」(21/NHK連続テレビ小説)、「ファイトソング」(22/TBS)、「霊媒探偵・城塚翡翠」(22/NTV)などの主演作がある。藤井道人監督とは『デイアンドナイト』(19)、『宇宙でいちばんあかるい屋根』(20)に続き3回目のタッグとなる。

藤井 道人(ふじい みちひと)

監督

1986 年生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業。大学卒業後、2010年に映像集団「BABEL LABEL」を設立。2014年伊坂幸太郎原作『オー!ファーザー』で商業作品デビュー。第43回日本アカデミー賞にて映画『新聞記者』が最優秀作品賞含む6部門受賞、他にも多数映画賞を受賞する。『青の帰り道』(18)、『デイアンドナイト』(19)、『宇宙でいちばんあかるい屋根』(20)、 『ヤクザと家族 The Family』(21)、『余命10年』(22)など精力的に作品を発表しており、今年は『ヴィレッジ』、『最後まで行く』が続けて公開。今最も動向が注目されている映画監督の1人である。

作品情報
映画『青春18×2 君へと続く道』

高校生・ジミーのバイト先に現れた日本から来た4つ年上のバックパッカー・アミ。ひと夏を同じ店で働き過ごすことになった2人だったが、次第にジミーはアミに淡い恋心を抱いていく。夜道をバイクで2人乗りしたり、映画を観に行ったり、2人の距離は縮まっていったが、突然、アミが日本に帰ることに。気持ちの整理がつかないジミーに、アミは“ひとつの約束”を提案する。時が経ち、あるきっかけで久々に実家を訪れたジミーは、日本に戻ったアミから18年前に届いたハガキを見つける。初恋の記憶がよみがえったジミーは、過去と向き合い、今を見つめるため、初めての日本での一人旅へ。アミとの思い出の曲を聞きながら列車に乗り、ジミーが向かうのは彼女の故郷。ジミーはアミとの再会を果たせるのか。

監督・脚本:藤井道人

原作:「青春18×2 日本慢車流浪記」

出演:シュー・グァンハン、清原果耶、ジョセフ・チャン、道枝駿佑、黒木華、松重豊、黒木瞳

配給:ハピネットファントム・スタジオ

©2024「青春 18×2」Film Partners

公開中

公式サイト seishun18x2

池ノ辺直子

映像ディレクター。株式会社バカ・ザ・バッカ代表取締役社長
これまでに手がけた予告篇は、『ボディーガード』『フォレスト・ガンプ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー シリーズ』『マディソン郡の橋』『トップガン』『羊たちの沈黙』『博士と彼女のセオリー』『シェイプ・オブ・ウォーター』『ノマドランド』『ザ・メニュー』『哀れなるものたち』ほか1100本以上。
著書に「映画は予告篇が面白い」(光文社刊)がある。 WOWOWプラス審議委員、 予告編上映カフェ「 Café WASUGAZEN」も運営もしている。
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