台湾と日本の撮影事情、あれこれ
池ノ辺 グァンハンさん、日本の人たちとの撮影はいかがでしたか。
シュー 皆さん優しかったです。日本で初めて一人で映画撮影に挑むことになったので、正直なところどんな難問が待ち受けているのだろうという不安はあったんです。でも実際に撮影が始まってみると全く心配するようなことはなかった。ただ、日本語の練習は結構大変でした。特に促音(そくおん)、小さな「っ」の入った音の発音が難しくて‥‥。でも皆さんが一層懸命にケアしてくださって、それは本当にあたたかく感じました。
池ノ辺 映画の中の日本語、とてもお上手でしたよ。
シュー 現場に素晴らしい通訳さんたちがいらっしゃったので、クランクインの前に何週間かかけて日本語を習って、繰り返し練習をして、それで撮影に臨んだんです。それに撮影の後にアフレコもあって、監督からできるだけ日本人の発音に近づけるようにと言われて、何度も何度も繰り返し練習しました。それもよかったんだと思います。
池ノ辺 監督は厳しいですね (笑) 。
シュー でもそれは必要なことだったと思います。
池ノ辺 監督は、台湾での撮影はどうだったんですか。
藤井 すごく楽しかったです。僕個人としては楽しさプラス自分がやらなきゃいけないことがたくさんあって、大変なところももちろんあったんですが、日本から連れてきたスタッフたちは、「こんなご褒美ないぜ」と嬉しそうにしていたので、それは僕にとっても嬉しいことでした。日本と台湾のスタッフたちがよく一緒にご飯食べたり飲みに行ったりと楽しんでいましたけど、僕は仕事で行けなくて‥‥いいな〜とそれを眺めているだけだったんですけど。
池ノ辺 日本との違いは何かありましたか。
藤井 台湾のスタッフたちは、アメリカなどで勉強してから台湾に帰ってきたという人が多いんです。それもあってか、映画に関わる人に対しては芸術の表現者、従事者としてのリスペクトがきちんとあるんです。僕らに対してもそういうスタンスで接してくれる。それは嬉しかったですね。僕らは日本の中でずっと土着的に映画を作り続けていると、そういう芸術の表現者ということを忘れてしまいがちだと思うんです。そういう意味で日本に還元できるものはたくさんあったんじゃないかな。
池ノ辺 8種類もあったという素晴らしいロケ弁も芸術の表現者、従事者としてのリスペクトですね。
藤井 僕が日本に取り入れた時は4種類にしました。というのも、8種類もあると、なかなか正解に辿り着けないんですよ。毎日隣のスタッフのお弁当がおいしそうに見えて、ああ、今日も選択を間違ったかなと(笑)。
池ノ辺 グァンハンさん、日本のロケ弁はいかがでしたか。
藤井 日本のお弁当は肉も魚も硬くて、ご飯が冷めているんだよね。
シュー でもおいしかったですよ。日本のお弁当は確かに冷えているんですけど、ユニークで僕は好きでした。例えば駅の近くでの撮影の時など、 “駅弁” があって、すごく興味をそそられました。買ってみたいと。それからランチの時の幕の内弁当だと思いますが、細かく仕切られた中にそれぞれ異なるおかずが入っていて、それぞれ違う味付けで、あれも好きでした。