Mar 14, 2024 interview

ユーロスペース代表堀越謙三が語る 映画人生と"新潟国際アニメーション映画祭"

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新潟国際アニメーション映画祭の未来

池ノ辺 今後の映画祭の行方も楽しみになってきました。今後について何か考えていることはありますか。

堀越 アイデアはあります。それをどう実現するかを考えているところです。いい映画祭というのはたくさんあるけれど、その中で特徴があるものをどうやって創り上げていくかですね。

アイデアの一つは、アンチを取り込むことです。例えば、思想的に相反する人が近くにいると、自分の考えもはっきりしてくるということがあると思います。異分子を内包するというのは、まさに映画祭の歴史を自分たちで創るということなんです。

過去の映画祭でいえば、例えばカンヌ国際映画祭の「監督週間」。これはトリュフォーやゴダールらが商業主義の映画祭に異を唱えて中止に追い込んだことが発端になっています。その勢力がそのままカンヌ映画祭の中に残って監督週間になったんです。だから今でもカタログは別。さっき言った北野武の映画をどこに持っていこうかといった時に、コンペではなく監督週間にしました。そうすることで一層作家性が際立つわけです。

池ノ辺 そういうことだったんですね。

堀越 ベルリン国際映画祭にもヤングフォーラムというのがあります。若い才能の発掘を目的に設立されたものです。これもドイツの若者の社会主義的な運動に端を発し、商業主義的なものに反対して別部門をつくるところからできたものです。今も一緒にやってはいるけれど、パンフレットやチケットの販売は別になっています。僕の会社はお金がなかったので、有名な監督の作品を持ってくることはできなかった。ですからヤングフォーラムの作品が多かったんです。カウリスマキもジム・ジャームッシュも、ラース・フォン・トリアーも侯孝賢も。最初に観たのはそこでした。

池ノ辺 じゃあ、新潟でもそういうことをやりたい?

堀越 オーソドックスなコンペだけではなくて、何か新しい、何か違った才能を拾い上げるような部門を作りたいという思いはあります。ただ、今のこのテクノロジーの時代ですから、ただ新しいというだけじゃなくて例えばゲームとアニメの境界を超えちゃったというようなぐちゃぐちゃしたもの、よくわからない若者がたむろするような、そんなものができたらおもしろいですね。

池ノ辺 それは楽しそうです。

堀越 今はそのためのスポンサーを集めるにあたって、参加者は何をモチベーションにしたら集まってくるだろうとか、いろいろ考えているところです。一般の映画祭と違って、おそらく出展者も観客もほとんどが作り手になると思うので、じゃああのシーンはどうやって作ったのかとか、そういったことが披露されるような上映会もいいですね。できれば期間限定でも汚い小屋を作って、違う賑わいができたらいいなと。

池ノ辺 新潟は、東京からは意外とすぐ行けるし食べ物もお酒も美味しいです。海外のプレスも含めてプレスの申し込みも結構きているとか。反響が楽しみですね。

インタビュー / 池ノ辺直子
文・構成 / 佐々木尚絵
撮影 / 岡本英理

プロフィール
堀越 謙三(ほりこし けんぞう)

ユーロスペース代表取締役新潟国際アニメーション映画祭実行委員会委員長

1977年にヴィム・ヴェンダース、R.W.ファスビンダーらニュー・ジャーマン・シネマを紹介するドイツ新作映画祭を開催。自主上映活動を開始。1982年、東京・渋谷にミニシアター「ユーロスペース」を開館。以来独自の買い付けによる興行、配給を行い、クローネンバーグ、カラックス、アルモドヴァル、トリアー、蔡明亮、カウリスマキ、キアロスタミ、オゾンら作家映画を系統的に配給し、ミニシアターブームを牽引。1991年からは日本映画の製作や海外との共同製作を手がける。1997年に財団法人アテネ・フランセと共同で特定非営利活動法人「映画美学校」を設立。1999年金沢にミニシアター「シネモンド」開館。その後東京藝術大学からの依頼により大学院映像研究科の立ち上げを藤幡正樹氏らと主導。2005~2013年の定年までの8年間、同大学院教授(現名誉教授)を務める。退職後は早稲田大学理工学術院客員教授、日本大学映画学部非常勤講師を歴任。ユーロスペース代表取締役の傍ら、2014年に立ち上げたライブホール「ユーロライブ」で「渋谷らくご」などの定例自主公演を行う多目的ホールの席亭も勤める。2021年4月より、学部新設に協力した新潟市所在の、開志専門職大学アニメ・マンガ学部長補佐として再び教授職に就く。

イベント情報
「第2回新潟国際アニメーション映画祭」

「第2回新潟国際アニメーション映画祭」

アニメーションやマンガ関連に従事する人々を約3,000名以上排出している、日本有数のアニメ都市、新潟。世界に向けてアニメーションやマンガという日本特有の文化を発信していく拠点となる新潟が、世界のアニメーション作品が交差する文化と産業のハブとして発展していくことを目指す、アジア最大規模のアニメーション映画祭。

主催:新潟国際アニメーション映画祭実行委員会

企画制作:ユーロスペース+ジェンコ 

会期:2024年3月15日(金)~20日(水)

料金:上映のみ / 大人1400円(税込)
   上映+舞台挨拶・トークショー / 大人1900円(税込)
   ※回数券(5回、10回、15回分)もあり
     
公式サイト niaff 

書籍情報
インディペンデントの栄光 ユーロスペースから世界へ

人呼んで「日本インディペンデント映画界のゴッドファーザー」。カラックス、キアロスタミ、カウリスマキらの映画製作、配給など、国内外で活躍する堀越謙三がその戦略や後進育成など、インディーズと歩んだすべてを語る。

著者:堀越謙三 / 構成:高崎俊夫

出版:筑摩書房

書籍サイト:chikumashobo

池ノ辺直子

映像ディレクター。株式会社バカ・ザ・バッカ代表取締役社長
これまでに手がけた予告篇は、『ボディーガード』『フォレスト・ガンプ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー シリーズ』『マディソン郡の橋』『トップガン』『羊たちの沈黙』『博士と彼女のセオリー』『シェイプ・オブ・ウォーター』『ノマドランド』『ザ・メニュー』『哀れなるものたち』ほか1100本以上。
著書に「映画は予告篇が面白い」(光文社刊)がある。 WOWOWプラス審議委員、 予告編上映カフェ「 Café WASUGAZEN」も運営もしている。
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