自分の身近にいてくれる存在の大切さに気づいてほしい
池ノ辺 この映画を観て、私も子どもの頃、いろんなことを想像して空想の世界を作っていたなということを思い出しました。大人になると空想の世界というより、単なる妄想になったりするんですけどね(笑)。梨央さんは子どもの頃はどういう子だったんですか。
鈴木 小さい頃から、家族と一緒にドラマを見ることが多かったので、自然とドラマが好きな子になっていました。遊びもドラマのシーンを自分で演じるようなことが多かったです。お母さんに見てもらいたいと思って、セリフを紙に書いて覚えて、頑張って練習もしました。一人でやる時には、白い画用紙に相手役の似顔絵を描いて壁に貼って、その絵を相手に会話をする。そうした遊びを小さい頃本当によくしていたんです。今考えると、それこそが自分の想像力の源になっていたのかもしれません。
池ノ辺 その似顔絵がラジャーみたいな存在だったんですね(笑)。
鈴木 確かに、アマンダにとってのラジャーのような、自分にとってのイマジナリ、そういう存在だったのかなと思います。
池ノ辺 じゃあ、お仕事のための練習も、その子が相手になってくれたんですか。
鈴木 遊びの感覚でセリフの練習をするというのはよくありましたね。
池ノ辺 今の梨央さんにとってのイマジナリは?
鈴木 空想というわけではないんですが、友達からもらったストラップやキーホルダーなんかを宝物にして集めています。そしてその時の気分で持ち歩いて、たとえばオーディションに行く時などにカバンにつけたりして、そこから力をもらっています。それが今の自分にとってのイマジナリなのかなと思います。
池ノ辺 せっかくなので、梨央さんから、この映画を観る皆さんにメッセージをいただけますか。
鈴木 ラジャーとアマンダが冒険しているシーンの楽しさ、ラジャーの純粋な気持ち、そうしたものを感じ取ってくださると嬉しいです。そして何よりこの物語は、近くにいる存在、叱ったりほめたりしてくれる人、そういう身近にいる人たちの存在、そういう人がいてくれるということが決して当たり前ではないということにも気づかせてくれる作品だと思います。観てくださった後に、自分の周りにいる人たちの気持ちを想い合ったり、当たり前にみえることがすごく大切なんだということを少しでも考えていただけたらいいなと思います。
池ノ辺 梨央さんは、子どもの頃からずっと演じる仕事をされてきたわけですが、梨央さんにとってのドラマや映画は、どんな存在ですか。
鈴木 ドラマや映画は、本当に小さい頃から身近なものでした。私にとってドラマや映画とは、自分がそれまで思ってもみなかった気持ちに出会わせてくれたり、感情が込み上げてきたり、自分の考えが変わったり、新しいものがインプットされたり、そういった心が豊かになったり、世界を広げてくれるような存在だと思います。そしていつしか、それを観るだけでなく、自分が表現者として皆さんにそうしたものをプレゼントできるような存在になりたいと思うようになりました。
池ノ辺 すばらしい!今回の作品はまさにそんな存在だったと思います。私もアマンダから元気をもらいました。これからも応援しています。
鈴木 ありがとうございます。
インタビュー / 池ノ辺直子
文・構成 / 佐々木尚絵
撮影 / 岡本英理
女優
2005年2月10日生まれ。埼玉県出身。 2012年、ドラマ「カエルの王女さま」(12)でデビュー。 大河ドラマ「八重の桜」、ドラマ「Woman」(13)、連続テレビ小説「あさが来た」(15)などに出演。 その他、CM・舞台・声優でも活躍の幅を広げている。 主な出演作品に、『僕だけがいない街』(16)『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(17)、スタジオポノック短編劇場 『ちいさな英雄』(18)、『最高の人生の見つけ方』(19)、『映画おしりたんてい スフーレ島のひみつ』 (21)
彼の名はラジャー。世界の誰にも、その姿は見えない。なぜなら、ラジャーは愛をなくした少女の想像の友だち―イマジナリ-。しかし、イマジナリには運命があった。人間に忘れられると、消えていく。失意のラジャーがたどり着いたのは、かつて人間に忘れさられた想像たちが身を寄せ合って暮らす「イマジナリの町」だった‥‥。
監督:百瀬義行
原作:A.F.ハロルド 「The Imaginary」(「ぼくが消えないうちに」こだまともこ訳・ポプラ社刊)
声の出演:寺田心、鈴木梨央、安藤サクラ、仲里依紗、杉咲花、山田孝之、高畑淳子、寺尾聰、イッセー尾形
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