Dec 16, 2023 interview

鈴木梨央が語る アマンダの考え方や話し方など、いろんな角度から考え色付けして役に寄り添って演じた『屋根裏のラジャー』

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彼の名はラジャー。世界の誰にも、その姿は見えない。なぜなら、ラジャーは愛をなくした少女の想像の友だち《イマジナリ》だから。そしてイマジナリには、人間に忘れられると消えていくという運命があった。失意のラジャーがたどり着いたのは、かつて人間に忘れさられた想像たちが身を寄せ合って暮らす《イマジナリの町》だった。しかし、「屋根裏の誓い」の真実が明らかになる時、ラジャーは、大切な人と家族の未来を懸けた最期の冒険へと旅立っていくーー。

長編第1作目の『メアリと魔女の花』が150の国と地域で公開され、世界で高い評価を獲得したスタジオポノックが贈る、長編アニメーション最新作『屋根裏のラジャー』。原作は、イギリスの詩人・作家のA.F.ハロルドによる『The Imaginary』(邦題『ぼくが消えないうちに』)。スタジオジブリ出身の百瀬義行監督のもとに日本が世界に誇るクリエイターたちが集結し、現実と想像が交錯する世界を描き切る。ラジャー役に寺田心、アマンダ役に鈴木梨央、さらに安藤サクラら実力派俳優陣が脇を固める。

予告編制作会社バカ・ザ・バッカ代表の池ノ辺直子が映画大好きな業界の人たちと語り合う『映画は愛よ!』、今回は、『屋根裏のラジャー』でアマンダの声を演じる鈴木梨央さんに、本作品の魅力、声優として俳優としての思いなどを伺いました。

魅力溢れるアマンダとその仲間たちの世界

池ノ辺 泣きましたよ〜!素晴らしい映画でした。梨央さんの感想はいかがでしたか?

鈴木 ありがとうございます !自分がアフレコをした時には、一人で行なっていたので、アマンダの場面しか観ることができなかったんです。今回、全てつながったものを観たときに、アマンダの生き生きしている様子とか、ラジャーとのつながりで広がっていくイマジナリの世界、ラジャーが出会う新しいイマジナリの友達などが、スケールの大きな映像や音とともに、ハーモニーみたいにキラキラと輝いて聴こえたり見えたりして、すごく心に響きました。大人になるにつれて、だんだん落ち着いてしまった小さい頃のピュアな気持ちとかちょっとしたことにもすごく喜ぶようなそんな気持ちを、この作品を観た後に思い出しました。

池ノ辺 アフレコの時にはまだ全編できていなかったんですか。

鈴木 そうですね、全て仕上がっているわけではなくて、絵になっているものもあれば、まだできていない場面もありました。

池ノ辺 その時は(寺田)心さんの声は入っていたんですか?

鈴木 はい。心くんは、先にアフレコしていて、私は心くんの声が入った状態で声入れができました。

池ノ辺 今回、アマンダ役の話を最初に聞いた時にはどう思いましたか。

鈴木 以前、『カニーニとカニーノ』(2018)という作品に出させていただいたときから、スタジオポノックさんが描く絵や世界観が大好きなので、約5年ぶりにスタジオポノックさんの作品に出させていただけるんだと、とても嬉しかったです。アマンダは、自分の年齢よりも幼い役でしたので、もちろん今の自分と重ね合わせるということもありましたが、自分の小さい時の記憶や話し方を思い出したり、自分が小さい時に出ていた作品を参考にしながらアマンダに近づけていきました。

池ノ辺 映画の中では、アマンダが、自分の想像から作り出したイマジナリであるラジャーと向き合っていく中でだんだん成長していく、そんな過程が見えてきますが、梨央さんはどういう気持ちで演じていったんですか。

鈴木 そうですね。最初の頃のアマンダは、感情の出し方が不器用というか、お母さんに甘えたくても甘えられない、素直になれない、そんな少女でした。でも、ラジャーの存在が信じる心を強くし、自分を取り戻していくことができたと思います。アマンダのキャラクターを演じる上で、私自身の想いと監督さんやプロデューサーさんたちのアマンダのイメージを相談しながら深めていきました。

池ノ辺 今回の作品は、心さんはもちろん、他にもたくさんの素晴らしい俳優さんたちが声優を務めていますよね。お母さんのリジー役の安藤サクラさんとか他の方たちにはお会いになりました? 

鈴木 試写会の時に初めてお会いしました。これまでお会いしたこともなくて、アフレコの時にも一緒ではありませんでしたが、作品を観た直後だったからか、すごく近くにいてくれる存在のように感じてご挨拶させていただいたんです。実際に一緒にアフレコをしていなくても映像で掛け合いをしたりぶつかり合ったり、そういうことができてすごく嬉しかったです。

池ノ辺 リジー自身も、物語が進むにつれてだんだん成長していく、強くなっていく、そんな感じがありました。一緒にブースに入っていたのかなというくらい私には自然に思えました。それと山田孝之さんが演じていた猫のジンザン、よかったです。最初は誰がやっているのか全然わからなかった(笑)。役にピッタリの声でしたね。

鈴木 そうなんです。アマンダ自身はジンザンと直接話をする場面がなくて、それはすごく心残りでした(笑)。すごく優しくてラジャーに寄り添って動いてくれる。でも自分の気持ちを出すのが不器用だったり。そんなところにすごく惹かれるというか寄り添いたくなるような素敵なキャラクターだと思いました。