Oct 28, 2023 interview

石井裕也監督が語る  今やらなきゃダメだ、『愛にイナズマ』は必然的に作り上げることができた映画

A A
SHARE

必然の流れで集まった錚々たる俳優たちのパワーの結集

池ノ辺 登場する役者さんたちも豪華でしたね。

石井 主人公の松岡茉優さんと窪田正孝さんは、以前から素晴らしい俳優だなと思っていていつかご一緒したいとは思っていたんです。でもこのタイミングで叶うとは思いませんでした。実は窪田さんは家がご近所で、お話したことはないんですが、こういうご縁があるんだから何となく「出てくれるはず」という根拠のない自信はありましたけど(笑)。

池ノ辺 あの家族の皆さんのキャスティングが絶妙でした。

石井 池松(壮亮)くんは友人でもあるので、時間がなくてピンチなんだと伝えたら「いつでも行きますよ」と言ってくれました。若葉竜也くんも早い段階で受けてくれたのはありがたかったです。

池ノ辺 何と言ってもお父さん役の佐藤浩市さんが素晴らしかった。

石井 浩市さんは、これ以前にも2度ほどご一緒してます。今回、脚本を送って出演をお願いしたらすぐにご快諾いただきました。映画ができた後、浩市さんに「脚本を読まずに出演決めたんですか?」と聞いたら、「それはそうでしょ」と笑ってました(笑)。そういう人です。

池ノ辺 演技があまりにも自然でこなれたセリフだったので、脚本を担当された監督には失礼ながら「これは全部アドリブなのかな」と一瞬思ったくらいです(笑)。

石井 とにかく浩市さんの存在に引きずられるように、周りの力もどんどん引っ張り出され、引き上げられていったということはあります。

池ノ辺 家族役以外でも、錚々たるメンバーが揃っていて、いろんな形で登場されてますね。

石井 家族のキャスティングが先に決まったのも大きかったと思います。その熱量や意気込みが周りにも伝わったんじゃないでしょうか。ありがたいことに皆さんご快諾してくださいました。映画というのは、こうした出演する、しないも含め、いろんなことがタイミングでできたりできなかったりします。そうした偶然は、それはそれでおもしろいんですが、時に必然的に映画ができるということもあります。これは浩市さんが言われたんですが、「そういう必然性を帯びる時に傑作が生まれる」と。すごく説得力のある言葉でした。