伝えたいことを、「映画」という形で世界に残したい
池ノ辺 「キングダム」は原作が69巻まで出ています。映画はどこまでやりますか。
松橋 やれるところまでやりたいですね。
池ノ辺 このシリーズは、ハラハラドキドキしながら、最後にわーっと盛り上がって、でもそこで終わらなくて、えーっ!? ってまたドキドキして続く。もう、まさにイベント型というか映画の一つの醍醐味を存分に味わわせてくれます。
松橋さんが選ぶ作品は、漫画や小説からの大ヒットというイメージがありますが、そのセンサーはどこから来るんですか。
松橋 もちろん、「面白い、当たる」という感性は作品ごとにあるんですが、その原作が持っているメッセージを自分が世の中に伝えたいと思えるかどうかということがあります。せっかく映画という形で作品を世に出すなら、少しでも良いメッセージ、良い物語を発信していきたい。
そういう伝えたい事というのは自分の中にもあるんです。自分の中と作品のそれがシンクロしたときに、映画にしたいと心から思います。そして作品の主人公の気持ち、言葉、メッセージが世の中に広まって、長くその物語が大切にされてほしい。そういうものを作っているつもりです。
池ノ辺 素晴らしい。本当にそうですね。作品の中に、大事にしたい、心に残る言葉がいっぱいあります。そういうものを特に若い人たちが観て、人生の糧にしてくれたら嬉しいですよね。
さて、これはみなさんにお聞きしているのですが、松橋さんにとって映画とはなんですか。
松橋 今言うなら、人生そのものです。先ほど申し上げたように、私が生きた証として世の中に伝えておきたいメッセージを、せんぶ映画の中に込めていますので。
池ノ辺 そうすると、これからもまだまだたくさん作れそうですね。
松橋 そうですね。伝えたいことはまだ沢山ありますから。
インタビュー / 池ノ辺直子
文・構成 / 佐々木尚絵
映画プロデューサー / クレデウス 代表取締役
1969年生まれ。2000年『バトル・ロワイアル』より映画プロデューサーとして活動。代表作は、『キングダム』シリーズ(2019、2022、2023)、『銀魂』シリーズ(2018、2017)、『新解釈・三國志』(2020)など。『キングダム』と『銀魂』では、それぞれ優れたプロデューサーに贈られる藤本賞・特別賞を受賞している(2019、2017)。2023年秋には『沈黙の艦隊』が公開予定。