刑事として生涯を捧げてきた成瀬司(阿部寛)。しかし、一匹狼の荒ぶる捜査手法は時代に合わず、異動を命じられてしまう。成瀬が配属されたのは、警察音楽隊! 楽器経験がほとんどないにも関わらず、ドラムを担当することに。こんな部署に長居することはないと、練習にもやる気をみせなかった成瀬だが、私生活も上手くいかず、刑事に戻れる気配もなく、失意のどん底に。そんな彼に手を差し伸べてくれたのは、音楽隊の隊員たちだった。そこから成瀬は練習に励むが、音楽隊存亡の危機が‥‥。
シリアスなドラマからアクション、コメディと、今やあらゆるジャンルで幅広い活躍を見せる阿部寛が、初めてドラムに挑み、新たな一面を見せる。阿倍の周囲で共に楽器を奏でるのは、清野菜名、磯村勇斗、高杉真宙ら若手俳優たちが集結。さらに光石研、倍賞美津子らベテランが脇を固める。
予告編制作会社バカ・ザ・バッカ代表を務める池ノ辺直子が映画大好きな業界の人たちと語り合う『映画は愛よ!』。今回は、原案・脚本・監督をと務めた内田英治監督(『ミッドナイトスワン』)に、オリジナル企画となる本作をどう成立させたのか、撮影、そして内田監督と映画との関わりをうかがいました。
ドラマの匂いをかぎつけて映画化する
池ノ辺 オリジナルの企画を映画化するって、すごく大変だと思うんですが、どういう風に企画が生まれて、ギャガさんが配給するまでに至ったんですか?
内田 オリジナルは、インディーズ映画を作っていた頃からやっているので、‥‥もちろん、大変は大変なんですけど、その過程も楽しむつもりでやっています。
池ノ辺 やっぱり、面白い企画を考えて脚本にしてプレゼンしないと始まらないわけですよね?
内田 そうです。脚本を一生懸命面白く書く。それが自分の武器になるわけですから。その後は、とにかく人に見せまくる。それが、この15年くらいやってきた流れです。今回も全く一緒で、脚本自体は、5、6年ぐらい前に最初の稿があって、それをいろんな方に見せていく中で、ギャガさんがやってくれることになったんです。
池ノ辺 原作があるものの方が、映画会社は好むんでしょうね。
内田 映画制作はお金がかかるものなので、どうしても何万部売れた原作とか、保証があるほうが良いというのは当然わかります。でも、最近はオリジナルでやってみたいというプロデューサーの方も増えている気はしますね。
池ノ辺 あるプロデューサーにうかがうと、本当はオリジナルでやりたいんだけど、お金を集めるためにはやっぱり原作とか漫画がないとなかなか難しいんだよねって。先日お話を伺ったある監督さんは、脚本を書いたけれど何も反応がなかったので先に本にしたと言ってました(笑)。今回は、どうして音楽隊を題材にしようと思ったんですか?
内田 もともとビッグバンドの音楽が好きというのもあるんですけど、愛知県警の音楽隊の演奏の様子を偶然YouTubeで見たんです。それまでは警察音楽隊のことって詳しくなかったんですけど、その映像がすごくよくできていたんですよね。
池ノ辺 制服で演奏をする姿に心を打たれたわけですね。
内田 そうですね。制服って言っても正装じゃなくて、いわゆる通常勤務の青い制服を着ていて、普段の町を警らするような格好で演奏しているのにインパクトがあって、その裏にいろいろドラマがありそうだなって思ったんです。
池ノ辺 演奏する姿からドラマの匂いをかぎつけたわけですね。
内田 ドラマがありそうな所というのは、どうしても興味を持っちゃいますね。