Aug 27, 2022 interview

長澤雅彦監督が語る 「夏休み」のもつ特別感を味わいながら観てほしい『凪の島』

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どう演じるかよりも、シーンの意味をつかむ

池ノ辺 『凪の島』は、風景ももちろん素晴らしかったんですが、役者さんたち、特に子供たちが良かったですね。主人公の女の子、凪役の新津ちせちゃんは、どうやって決まったんですか?

長澤 オーディションです。そこでものすごくたくさんの子と会ってその中で決めました。ちせちゃんは、僕の最初のビジュアルイメージの凪ちゃんとはちょっと違っていたんです。僕としては、ショートカットの似合う、同級生の男の子たちよりもちょっと背が高い、ボーイッシュな感じの女の子をイメージしていて、そういう子を探していたんです。けど、ちせちゃんに会って演技してもらったり話したりしていたら、独特なすごい魅力が彼女自身にあって、僕が思っていた凪のイメージではないけれど、この子が凪ちゃんというのもありだと思わされたんです。

俳優として表に出てくる力のある人というのは、どういう役を演じたとかそういうことじゃなくて、「私を使いなさい」というような強さがある。それは今までに出会った、例えば多部(未華子)さんなどもそうでしたけど、そういう力をちせちゃんに感じたんでしょうね。

池ノ辺 まだ小さいのに(笑)。

長澤 そのエネルギーはすごいんですよ。それはもう撮影中もずっとそうでした。例えば、これから海に飛び込む、というようなちょっとリスクのあるシーンの撮影が控えていると、僕らも気を遣います。そうすると、そういうのを察して、いつも以上に大きな声で元気よく「おはようございまーす」と現場に入ってきてね。

もうこれはわざとやってるなとわかるんだけど、僕らから「大丈夫かな?」と言わせたり思わせたりしないようにしてくれているというのがすごく感じられて、ああ、気を遣ってくれているんだなと、なんだか愛しくなりましたね。

池ノ辺 本当に「上手」という言葉では表せないぐらい、すごく良い演技でした。

長澤 結局のところ、俳優がどう演じるかというのは大した問題じゃなくて、それは俳優が好きなようにやればいいと思うんですよ。大事なのは、このシーンはシナリオ全体の中でどういう意味を持つのか、というようなことを、お互いに共有できているかどうかなんです。

それは撮影前の本読みなどで理解してもらえるように話しています。そこさえ共有できていれば、あとは大人でも子供でも、プロの俳優として、自分たちの表現領域で演じてくれればいいと思っています。

池ノ辺 ちせちゃんの周りの男の子たちも生き生きとしてました。

長澤 そうですね。3人とも仲良しで、いい感じに刺激し合っているようでした。

池ノ辺 祖母役の木野花さんもすごく良かった。

長澤 素敵でしたね。前から1度一緒にお仕事をしたいなと思っていた方なので嬉しかったです。