自分を映画監督だとは思っていない
池ノ辺 監督が映画監督になろうと思ったきっかけって何ですか?
ラーマン 私は自分を映画監督だとは思っていないのです。例えば、私はたくさん音楽も作ってきましたが、自分をオペラ監督や舞台監督と思ったこともありません。私の妻(本作を含むラーマン監督の作品で美術監督を務めるキャサリン・マーティン氏)は衣装デザイナーですが、彼女の衣装作りを手伝ったり、ヴォーグ誌の編集なども手掛けたりもしましたが、自分自身を衣装デザイナーや雑誌編集者であるとも考えていません。
では何者かといえば、自分自身は“アイデアとストーリーをトレードするだけの人間”だと思っているのです。
池ノ辺 それは、すてきな表現ですね。ところで、今回のインタビューは「映画は愛よ」というコーナーでご紹介させてもらうのですが。
ラーマン “映画は愛よ”ですか。いいタイトルですね。“愛”にはたくさんの種類があると思うのです。“ロミオとジュリエット”のような愛、若い恋人たちの愛、親子の愛、友人同士の愛、そうした多くの種類の愛がある中で、“愛”の深さというのはやはり信頼の深さだと思うのです。
だから、“愛”とは信頼だと思っていて、本当に心から愛していれば、その人のありのままを受け入れることができるわけですから、本当に心から信頼しているということでもあると思うのです。
池ノ辺 では、 “映画”とはどういうものだと思われますか?
ラーマン “映画”というのは、言葉や映像、演技、パフォーマンスなど様々なクリエイティブが関係してくるものです。だから、あらゆるクリエイターたちが惹きつけられるのです。それはサーカスのようでもあり軍隊のようでもあるのですが、そのクリエイターたちが同じ方向に向かって一本の道筋を描いていく、それが“映画”というものだと私は思っています。
インタビュー / 池ノ辺直子
文・構成 / 佐々木尚絵
写真 / 岡本英理
脚本 / 監督 / 製作
ポップカルチャーのパイオニアとして、映画/オペラ/舞台/イベント/音楽の全分野にわたって活躍する、米アカデミー賞ノミネート経験をもつ監督であり、脚本家であり、プロデューサー。
観客と業界の両方にラーマンの熱狂的ファン層を生み出した『ダンシング・ヒーロー』(92)、『ロミオ+ジュリエット』(96)、米アカデミー賞受賞作『ムーラン・ルージュ』(01)の3作品は、“レッド・カーテン・トリロジー”と呼ばれている。『華麗なるギャツビー』(13)は、米アカデミー賞2部門に輝き、ラーマン監督作品の中で最高収益をあげた映画となった。Netflix作品「ゲットダウン」パート1(16)とパート2(17)も大成功を収めている。監督を務める待機作には、自身の監督作『オーストラリア』(08)を再解釈した6部構成のHuluシリーズ「Faraway Downs」などがある。
ビートルズやクイーンなど多くのアーティストたちに多大な影響を与えた「世界で最も売れたソロアーティスト(ギネス認定)」エルヴィス・プレスリー。だが、彼が頂点に立つまでには、知られざる険しい道のりがあった。腰を小刻みに揺らし、つま先立ちする独特でセクシーすぎるダンスと、真新しい音楽“ロック”を熱唱するエルヴィスに、若者達は大興奮。小さなライブハウスから始まったその熱狂は瞬く間に全米に広がり、エルヴィスはスターダムを一気に駆け上っていった。しかし一方で、ブラックカルチャーをいち早く取り入れたパフォーマンスは世間の反発を呼び、エルヴィスは世間の非難を一身に浴びてしまう。42歳という若さで死んだスーパースターエルヴィスの波乱万丈な生き様を、数々の名曲で彩られた圧倒的なライブパフォーマンスで描く。
監督:バズ・ラーマン
出演:オースティン・バトラー、トム・ハンクス、オリヴィア・デヨング、コディ・スミット=マクフィー
配給:ワーナー・ブラザース映画
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公式サイト elvis-movie.jp