Apr 29, 2022 interview

世界に誇る豪華クリエイターが集結した前代未聞の超絶アクション恋愛映画 荒木哲郎監督が『バブル』で開けた新しい引き出し

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自分だからこそできた恋愛映画

池ノ辺 監督は、もともとアニメの監督を目指していたのですか。

荒木 学生時代には色々試してみたんです。自分にできることは何だろうかと思って。演劇もやったし漫画も描いてみました。その中で映像が自分に一番向いていると思ったのは、実際にやってみたときに、周りの人が一番喜んでくれたからです。皆そうだと思うんですが、やってみて周りの反応が良かったものを、これは自分に向いているのかなと思って、じゃあもうちょっとやってみようかとなる。そうやって辿り着いたのが自分ではアニメの演出だったんです。

結果的にそうなったとは言え、考えてみると自分は、例えば『機動戦士ガンダム』シリーズの富野由悠季さんや『エヴァンゲリオン』の庵野秀明さんらに強烈に憧れて、よく知ろうと研究したりしていたんです。ですから、やはりそっちへ行きたい思いはもともとあったのだろうと思います。

池ノ辺 この映画を拝見して、監督は本当はずっとラブストーリーを作りたかったんじゃないかって思ったんですけど、いかがですか?

荒木 そうかもしれません。ですが、5〜6年前まで、新しい仕事の相談をされるときに、いつも“デス”とか“ブラッド”とか、死を連想するような言葉がついているタイトルの仕事ばっかりだったんですよ。ただ、自分の中にはもっと別の引き出しが存在することを知っていて、他にもいろいろできるのになぁと思っていました。でも、自分にラブストーリーを依頼してくる人なんていないからと諦めていたんです。

ところが川村さんは、「『進撃の巨人』のイメージとは、まったく違うことをやってほしい」と言ってくれたんです。むしろ、虚淵さんや荒木から出そうにない企画である、ということが川村さんにとっては大事だったようです。そこから、ラブストーリーをお願いしますと言われて、今まで見せたことのない引き出しをようやく開けられる、と思って嬉しかったのです。

世界に誇る豪華クリエイターが集結した前代未聞の超絶アクション恋愛映画 荒木哲郎監督が『バブル』で開けた新しい引き出し

池ノ辺 やっと死のイメージから脱却できたわけですね。

荒木 違う引き出しとはいっても、いままでWIT STUDIOと培ってきたものは、さっき言った3Dと2Dのハイブリッドの技法のような、要するにアクションエンターテインメント向きな技術なんです。この、自分たちが今できる技術、自分たちのストロングポイントをラブストーリーで活かすには、やはりアクションシーンが必要でした。

そこで、本来ラブストーリーに必要ないはずのパルクールを組み込んだのです。その結果、この作品ではラブの場面で、超絶アクションが炸裂している。地面が割れてビルが倒れる中でのラブシーン。ユニークなバランスの、他にない恋愛映画が生まれて、自分でも驚きました。そういう化学反応を、川村さんは求めていたんじゃないかと思います。

池ノ辺 それは、狙っていたかもしれませんね。

荒木 バスがビルの屋上に乗っている浮島という場所で、主人公であるウタとヒビキ2人の心が通じ合って踊りだすんです。パルクールの延長のようなダンスです。その場面を描いたとき、自分の中で何かが開いたような感覚があったんです。アクションの技術を使って、ラブシーンをつくるなんて、自分も見たことがなかった。でもそれは、アクションスキルのある自分だからこそできたラブシーンでした。それが自分の手から生まれた瞬間に、この作品で自分がやるべきことはこれだったんだ、今回の仕事はこのためにあったんだと実感したんです。

世界に誇る豪華クリエイターが集結した前代未聞の超絶アクション恋愛映画 荒木哲郎監督が『バブル』で開けた新しい引き出し

池ノ辺 まさに監督の持っている引き出しのひとつが開かれて、バーンと弾けたわけですね。

荒木 その場面の絵コンテを描いたとき、あまりに大きな手応えがあったので、映画はまだ半分以上あるけれど、この後、これ以上の場面を描くなんて不可能じゃなかろうかと自分で思ったぐらいだったんです。でも実際は、それを超える場面をもっと描けたんですけど(笑)。

池ノ辺 素晴らしい制作になりましたね。これからさらに監督の引き出しが開いていきますね。

荒木 そうなるといいなと思います。

池ノ辺 楽しみにしています。

インタビュー / 池ノ辺直子
文 / 小倉靖史
構成 / 佐々木尚絵
写真 / 江藤海彦

プロフィール
荒木 哲郎(あらき てつろう)

アニメーション監督 / 演出家

1976年生まれ。埼玉県出身。大学卒業後、マッドハウスに入社。TVアニメ『ギャラクシーエンジェル』(第4期・/04)の演出で注目を集め、『DEATH NOTE』(06〜07)でシリーズ監督デビュー。主な監督作品に『ギルティクラウン』(11)、『進撃の巨人』(13)、『甲鉄城のカバネリ』(16)など。

作品情報
世界に誇る豪華クリエイターが集結した前代未聞の超絶アクション恋愛映画 荒木哲郎監督が『バブル』で開けた新しい引き出し
映画『バブル』

舞台は世界に降り注いだ泡〈バブル〉で、重力が壊れた東京。ライフラインが閉ざされた東京は家族を失った一部の若者たちの遊び場となり、ビルからビルに駆け回るパルクールのチームバトルの戦場となっていた。ある日、危険なプレイスタイルで注目を集めていたエースのヒビキは無軌道なプレイで重力が歪む海へ落下してしまった。そこに突如現れた、不思議な力を持つ少女ウタがヒビキの命を救った。そして、2人にだけ特別な音が聞こえた‥‥。なぜ、ウタはヒビキの前に現れたのか。二人の出会いは、世界を変える真実へとつながる。

監督:荒木哲郎

脚本:虚淵玄[ニトロプラス]
キャラクターデザイン原案:小畑健
音楽:澤野弘之
制作スタジオ:WIT STUDIO

声優:志尊淳、りりあ。、宮野真守、梶裕貴、畠中祐

配給:ワーナー・ブラザース映画

©2022「バブル」製作委員会

NETFLIX版:全世界配信中
劇場版:2022年5月13日(金) 全国公開

公式サイト bubble-movie.jp

池ノ辺直子

映像ディレクター。株式会社バカ・ザ・バッカ代表取締役社長
これまでに手がけた予告篇は、「ボディーガード」「フォレスト・ガンプ」「バック・トゥ・ザ・フューチャー シリーズ」「マディソン郡の橋」「トップガン」「羊たちの沈黙」「博士と彼女のセオリー」「シェイプ・オブ・ウォーター」「ノマドランド」ほか1100本以上。
著書に「映画は予告篇が面白い」(光文社刊)がある。 WOWOWプラス審議委員、 予告編上映カフェ「 Café WASUGAZEN」も運営もしている。
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