Mar 25, 2022 interview

深川栄洋監督が語る 伴走者のような気持ちで恋愛映画に向き合った『桜のような僕の恋人』

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中島健人(Sexy Zone)主演のNetflix映画『桜のような僕の恋人』は、宇山佳佑による発行部数70万部超の恋愛小説『桜のような僕の恋人』(集英社文庫)待望の映像化。中島演じる晴人は、美容師の美咲(松本穂香)に恋する。つきあううちに、将来に向けて頑張り続ける彼女に刺激され、晴人も諦めかけていたカメラマンへの夢に再び向かう。ところが美咲は「人の何十倍も早く老いていく」難病を発症する‥‥。

監督は、『白夜行』『神様のカルテ』『ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-』など、生命、死をドラマの中に巧みに組み込み、人間の根源へ向き合ってきた深川栄洋。本作でも、恋愛映画の中で描かれる難病、死という要素を重みのある視点と共に描いている。共演に永山絢斗、桜井ユキ、及川光博ほか。予告編制作会社バカ・ザ・バッカ代表の池ノ辺直子が映画大好きな業界の人たちと語り合う『映画は愛よ!』では、深川栄洋監督に中島健人さんと松本穂香さんの新たな代表作とも言える本作で、どのような演出を行ったかをうかがいました。

若い2人の伴走者のような気持ちで恋愛映画を撮る

池ノ辺 『桜のような僕の恋人』は宇山佳佑さんの素晴らしい原作がありますが、監督を引き受けようと思ったのは、原作を読まれてからですか? それとも企画を聞いた段階ですか?

深川 「やります」と言ったのは原作を読んでからなんですが、春名(慶)さんというプロデューサーから声をかけてもらったときに、「これは恋愛映画と純愛映画だ」と。春名さんのフィールドで1本やってみないかというお話だったので、読む前からやってみようと思っていました。

池ノ辺 確かに春名プロデューサーといえば、『世界の中心で、愛をさけぶ』『ストロボ・エッジ』『アオハライド』『世界から猫が消えたなら』とか、恋愛映画の大ヒット作を手がけていますからね。深川監督はこれまで恋愛映画というと?

深川 僕は『半分の月がのぼる空』っていう映画以来、恋愛映画はやっていないので、10年以上やっていないことになります。だから、果たして僕で良いのかなとは思いましたけど、もう1回恋愛映画というものと時間をかけて向き合ってみたいなと思っていました。

池ノ辺 久々に恋愛ものを撮ってみてどうでしたか?

深川 10年前とはちょっと違う感覚で取り組めたような気がします。

池ノ辺 それは10年間の映画監督としての経験が反映されたということですか?

深川 たぶん、そうだと思います。ちょっと恥ずかしいんですが、『半分の月がのぼる空』を作っていたときに、主人公の男の子のような気持になって映画を作っていたんですけど、今回はもうおじさんになったのか、そういう気持ちではなく、若い2人の伴走者になろうという感覚でした。

池ノ辺 自分を投影するんじゃなくて、若者を見守るような気持ち。

深川 ええ。当事者のような気持ちになって作っていた時よりも、ちょっと離れた方が、すごく2人の姿が見えたような気がしました。変な意味の嫉妬――ヒロインに対して主役の男の子よりも自分の気持ちが入っちゃうこともなく、ちゃんと2人の一挙手一投足を傍観者、観察者として見ることが出来たという感覚がありました。たぶん、これが正しい監督の姿なんだろうなと感じました。

池ノ辺 主役の中島健人さんも松本穂香さんも素晴らしかったんですが、私は周囲の永山絢斗さんや桜井ユキさん、及川光博さんたちが2人を支えていこうという気持が伝わってくるようですごく良かったです。それは監督の感覚が投影されていたんですね。

深川 輪の中心にいる2人よりも、一歩離れたところに家族の視点があったりする方が僕にはすっと入れるんでしょうね。そこは、映画を観るお客さんの目線が入る場所でもあると思うので大事にしていきたいなと思っています。