Jul 16, 2021 interview

細田守監督 最新作 映画『竜とそばかすの姫』プロデューサー 齋藤優一郎が語る制作・宣伝・クリエイティブのこと

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美しい自然につつまれた日本の田園風景と、仮想現実。2つの世界をかける少女の美しい歌声。『竜とそばかすの姫』は、『時をかける少女』『サマーウォーズ』『未来のミライ』など、1作ずつ多彩な世界を描いてきた細田守監督の最新作。これまでの集大成を思わせる世界観のなかで、現代のインターネット社会をアニメーションならではの表現で再構築した細田監督は、未来と、まだ何者でもない若者たちへの力強い肯定をにじませ、生き生きとしたキャラクターたちが躍動する新たな傑作を生み出した。

映画大好きな業界の人たちと語り合う『映画は愛よ!』の池ノ辺直子が、細田監督と共に”スタジオ地図”を設立した齋藤優一郎プロデューサーに、映画作りから宣伝、予告に至るまでのコンセプトをうかがいました。『竜とそばかすの姫』の特報・予告、そして映画本編のタイトルは、池ノ辺が代表を務める予告編制作会社バカ・ザ・バッカが制作。担当したディレクターからの証言をもとに予告にもこだわる細田監督の演出術も明らかに!? 集大成には、新たなチャレンジも必須と語る齋藤プロデューサーが本作で試みたものとは?

映画作りは奇跡の連続

池ノ辺 こんにちは。今日はよろしくおねがいします。『竜とそばかすの姫』、素晴らしかったです! 見終わってまず思ったのは、「次はIMAXで観たい !! 」です。

齋藤 本当ですか。この映画は天地のないインターネットの世界が舞台になるので、映像に浮遊感が感じられると思いますから、IMAXも含めて劇場向きだと思います。それから音楽もの、歌ものということもあって、音も7.1chで作っていますから、まさに映画館へチューニングして作ったんです。

池ノ辺 お〜!IMAXの一番前で見て、インターネットの中の世界観を体感してきます。今回この映画の予告編などの宣伝映像を、バカ・ザ・バッカのディレクターが担当させていただきました。完成報告会見のスペシャル映像の仕上がりを見た時に、感動してドキドキしました。勇気も湧いた。だからこそ、今『竜とそばかすの姫』を細田監督は作りたかったんだと感じました。それで、この作品の制作のお話を聞きたい!と思ったんです。 まず、細田守監督と齋藤さんが2人で立ち上げた「スタジオ地図」について教えていただきたいのですが。

齋藤 スタジオ地図は設立して今年でちょうど10年なんですね。監督と僕のつきあいは18年になりますが、映画を一緒に作るようになってから『竜とそばかすの姫』で6本目になります。3年に1本新作をスタジオ地図で作り、しかも3年毎の夏に映画を公開するということを、ずっと繰り返してきました。

池ノ辺 映画だけを作ってきたんですか。

齋藤 基本は映画しかやらないんですよ。そこは社是じゃないですけどそう決めていて、映画って1回失敗したら次はないという世界じゃないですか。だから映画を作ることって、奇跡の連続だと思っているんですよ。監督は、30代前半のときに、『ハウルの動く城』という作品をスタジオジブリで撮ろうとしていたんです。だけど出来なかった。

それまで監督は、東映アニメーション座付きの演出家だったのでプロジェクトが始まれば映画って出来るものだと思っていたらしいんだけど、映画が出来ないこともあることを実感したんです。 映画が作れることも、作らせてもらえることも、映画を完成させることも奇跡だし、ましてや今のコロナの状況からすれば、公開できないことだってあるわけじゃないですか。そういう中で映画が公開できて、たくさんの人たちに見ていただけるということは奇跡ですよね。だから僕は、映画は奇跡の連続だと思っているんです。

池ノ辺 スタジオ地図は、10年にわたって奇跡を連続させてきたんですね。

齋藤 奇跡の連続をどう紡いでいけるか・・・。そのためにはやっぱり一番良い形で映画を作って、一番良い形で日本以外の国も含めて送り出して、可能であれば内容的な評価と経済的評価を、きちんと作った人や、絵を描いた人たちに戻して、また新しい映画につなげていくというサイクルを作るのがプロデュースであり、スタジオ地図の役割だと思っているんです。