映画コメンテーターでおなじみの伊藤さとりさん。舞台挨拶、会見の司会をはじめ、テレビや雑誌でも邦画・洋画を問わず、映画の魅力を伝え続けて25年。心理分析を通じて映画を語るなど新たな分野にも挑む伊藤さんが、忘れられない出来事と語る東日本大震災と舞台挨拶をめぐるエピソード、そして人生を変えた1本の映画を、映画業界の人たちと映画人生を語りあう 「映画は愛よ!」の池ノ辺直子がうかがいました。
心理分析で人と映画をつなげる
――最初に、前回の最後で予想してもらったアカデミー賞の話からしましょうね。伊藤さんの予想が大当たり!『パラサイト 半地下の家族』がアカデミー作品賞を見事、受賞しました!
皆に、今までのアカデミー賞の流れでは”受賞は難しい”と言われていましたが、作品のクオリティを考えたら『パラサイト』しかないと思っていたんです。もう、アメリカファーストの時代という考えから、社会的な意味も込め、世界のお手本になるアカデミー賞になることにしたんですよね。歴史的瞬間でした。映画が社会を変えるという証になりました。『パラサイト』受賞は心から嬉しいです!
――よかった!よかった!アジアの時代だよ。それでは、前回に引き続き話を聞かせてください。 伊藤さんは今、舞台挨拶の司会だけじゃなくて、映画について書いたり、しゃべったりされていますが、心理分析もされていますよね? これはどうして始めたんですか?
小学生の頃から、いじめられてしまう友人がいたり、心の相談をされることが多かったのも大きな要因です。そしてもちろん、『羊たちの沈黙』みたいなサイコホラーを好きだったこともあります。そのせいで、高校生の頃からずっと犯罪心理学に興味があったんです。でも、どうやったら勉強できるんだろう? と思ってたの。心理学を勉強すれば、映画をもっと深く観る勉強にもなるしね。というわけで、仕事の合間に心理カウンセリングの学校に通うようになったんです。
―― 卒業すると、資格をもらえるんですか?
お免状をもらえるんですよ。精神科医の先生にはなれないけど、カウンセラーにはなれるんです。
―― カウンセラーになって開業しようとは思わなかった?
卒業するときに「カウンセラーは人の話を聞くのが大事だから、あなたはそれはすごく長けているんだけど、あなた自身はポジティブ・オーラが全開だから、心が傷ついてる人はあなたと話すと辛くなる」って言われたんです(笑)。
―― でも、人の話を聞くことには長けてるって言われたわけね。
だから、コーチングとかをやりなさいって言われて。それから片手間にやる仕事ではないと。それで私は映画を通して人の心が柔らかくなったりするような、心理カウンセリングのライトな部分をもっと身近にやれたらいいなと思うようになって、心理テストを作ったりしています。
―― そこから興味を持って、映画を観てもらうのはいいことですものね。
そうなんですよ。アート系の映画は色彩心理とかも使っているから、そういう見方もできるようになって面白いですよ。
―― やっぱり、人とお話するのが好きなんですね。
私は話を聞き出すのが好きですね。でも、それは人と話すのが好きじゃないと出来ないから、きっとそうなんでしょうね。